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アタタカイヤミ 23

 4章 夏休み。




 夏休みが来た。ついに来た。

 夏休みの初日、ぼくは心の中で独りごちをした。それほど、この日を待っていた。

 もう、あんないじめを目撃しなくてもよい。期間限定だけど。

 居間に寝そべりながらこんな事を考えた。もうあんな日は終わったのだ。もう解放された。確かに期間限定だけど、今はこの休息のときを楽しもう。

 そう、思いごろごろしていたが、やらなければならない宿題を思い出した。結局休めないな。

 そう思い、勉強に取りかかろうとしたが、そのとき携帯電話が鳴った。見ると寺島さんからだった。

 ぼくはこの気持ちをなんと言ったらいいのだろう。寺島さんからの電話はうれしいけど、居間は心理的にたくさんの陰鬱(いんうつ)な気持ちが重なって、居間、あまり寺島さんの元気100%な人にあまり会いたくないけど、やっぱり寺島さんには会いたい気がする。もう少し日をおいてから電話をして欲しかった。

 そうは思っていてもやっぱりぼくは寺島さんの電話を取った。

「はい、もしもし」

『ああ、笹原君、元気だった?』

 寺島さんは今日はおとなしめな声で言ってくる。何だろ、4人だと元気になるけど、二人っきりだなんだかおとなしめだ。まだ、自分を友だちと認めていないのだろうか?

「ああ、はい。元気です。寺島さんも調子はどうですか?」

『ううん、大丈夫、私は元気だよ』

 僕たちは簡単な社交辞令をしてから、本題に移った。

「それで用件は何ですか、寺島さん」

『ああ、うん。あのね、これから私たち3人で勉強会をすることになったんだけど、よければ笹原君もどうかな、と思って。あ、無理にって訳じゃないのよ来たくなければこなくていいのよ。どう?笹原君』

 そうか、勉強会ね。考えたことなかった。自分に勉強会の申し出がくるなんて………。

「わかったよ。ぼくも参加します。それで、どこに集まればいい?」

『ああ、参加してくれる?よかった〜。やっぱりさ、笹原君もいないとなんか、ダメなのよね〜。私は参加してくれてうれしいよ。あ、そうだ、場所ね。場所は光の家だよ。でも、笹原君にはわからないね。ふじうらのところで待ち合わせたらいいかしら?』

「ええ、いいですよ」

『わかった、それじゃあ、私が迎えに行くから待っていてね』

 それで電話が切れた。ぼくはリュックサックに筆箱と教科書と問題集とノートを入れて出かけることにした。

「あら、一樹君。でかけるの?」

 洗濯物を干していた。康子さんが聞いてくる。

「あ、はい。友だちと一緒に勉強会をしようかと思って」

 そう言うと康子さんは目を細めていった。

「そう、それじゃあ、車に気をつけてね」

「あ、はい」

 それで出かけようとすると、また電話がかかってきた。何だろ?

「はい、何ですか、寺島さん?」

『あ、これ忘れてたんだけど、何か、お菓子を持ってくること!これ、絶対必要だからね!』

「ああ、はい、わかりました。寺島さんて案外(あんがい)食いしん坊なんですね」

 そう言うと寺島さんがものすごくまくしたててしゃべってきた。

『違う!違う、違う。あのね、これはね、友だちでお菓子を持ち合うのは乙女の流儀なの!それを食いしん坊だなんて言っちゃダメよ!食いしん坊じゃないんだから!』

「ああ、そうなんですか?いや、すみませんでした」

『そうそう、わかればいいのよ。わかればね、ともかく何かお菓子持ってきてね!』

 そう言うと電話が切れた。僕は携帯電話をしまい、自転車に乗り家を出る。

 やれやれ、菓子だと言っていたっけ。ふじうらの前にまず、セブンイレブンに行くか。

 そんなことを考えながらセブンイレブンに行く道をこぐ。真夏の日照りが僕を容赦なく照りつけた。




 セブンイレブンで菓子を買い、そのままふじうらに行く。そして、両社はものすごく近いのですぐついた。

 自転車置き場に止めようとすると寺島さんがそこで手を振っていた。本当にここは小さいスーパーだからすぐわかるのだ。

ーしー、じゃり。

 自転車を寺島さんのすぐ隣に置いた。

「おはよう、笹原君」

「ああ、おはよう、寺島さん」

 寺島さんは白のTシャツとブルーのジーンズをはいていた。すごくシンプルでこざかしい華やかさとは違った、シンプル故の美がある。今日何が起きるのか、寺島さんに聞いた。

「寺島さん。今日の勉強会は何を勉強するんだ?」

「あ、うん。そうだね。それまず、話さないといけなかったのに、私何を言ってたんだろ。ごめん、数学と英語を勉強しようかと思っているの。笹原君はそれ持ってきた?」

「ああ、持ってる、数学と英語と世界史と化学つっこんだから」

「そう、よかったー」

 そう言って寺島さんは微笑んだ。こういう微笑みの時は夏の体力が絞られる気候が、一瞬(いっしゅん)で春風に変わったような気がする。でも、本性はニワトリだから、もう恋をすることはないだろう。

「よし、じゃあ、行こうか。笹原君」

「はい、行きましょう」

 



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