アタタカイヤミ 20
昼休み、またみんなで彼女をいじめるのか、と思うと嫌気がさしてきた。そう思っていたら、また金田君がとんでもないことをした。
昼食の時間、波田さんの机をみんなが少しずつずらしてよけて、波田さんは孤独に食べなければならなかった。みんなが波田さんなどまるでいなかったように振る舞っている。
そんな中、金田が波田さんに近づいた。
「なあ、波田おなかすいているよな?」
そうにたにたいいながら近づいた。しかし、当然のことながら波田さんは何も答えなかった。
金田はまだ、こんなことを言う。
「俺、波田のためにいいもんを持っているんだ」
そう言って金田はそれを出した。それはアルミ箔の弁当箱だった。そしてその箱を開けた。それをみたときみんなが騒いだ。
「うげー、何だよ、金田!」
「やだー、それあり得ない!」
「もうー。それ、超きもい!」
みんなが騒ぐのは無理もない、金田が出したのは…………。弁当箱の中にうねうねしているミミズだった。
「もう、やめてよ!金田君!食欲なくなるじゃない!」
金村さんが本気で怒った。だけど、次の金田君の言葉に簡単に納得してしまった。
「ごめん、ごめん。でも、これが波田の昼ご飯なんだよ」
それに金村は虫を壊して遊ぶ子供の、あの新しい虫を見つけた喜びのように目を輝かせた。そして、周りのみんなもそれにやがて祭りをする住人のようにどんどん活気づいてくれた。
ー食ーえ、食ーえ、食ーえ。
波田さんを包囲するように囃子立てが起こった。波田さんは逃げようとするが、それを男子が腕を固める。それに金田君がミミズを箸でつまみ、波田さんの眼前に持って行く。でも、波田さんは口を開けなかった。それを金田君は弁当箱を机において、左手で波田さんの口を無理矢理開けた。
波田さんは涙を流しながら嫌々していたが、口を無理矢理開けられた頃から、本気で嫌がり始めた。涙を流してすごいうめき声を出してきたのだ。
だけど、金田君は無理矢理波田さんの口にミミズを入れた。
ーもぐ、ゴックン。
「おおー!のんだー!」
クラスのみんなが一斉に拍手をしながら沸き立っていたのだ。みんなが最高に盛り上がっていた、それは端から見て狂気にしか見えなかった。
ぼくはその熱気に押され冷静に昼食を食べていたが、内心ではかなり怖かった。しかし、それを表に出すわけにはいかず、昼食を一心に食べていた。
祭りは少しずつ収束していたが、波田さんはうつむいたまま動かなかった。
それからというもの波田さんをいじめることが多くなってきたような気がした。実際には見えることは少なくなっているが、げっそりした波田さんの姿を見ていると、ああやはりいじめは続いているのだな、と思うのだ。
それを見てぼくはあることを思い出す。人に杭を打たれる藁人形を。呪いを一心に受けて、人の欲望のために打たれて埋められるのだ。
波田さんはきっとただ、単に捨てられる存在なのだろう。人のガス抜きのために、そう思うとなんだか悲しかった。
7月に入った。空気の温度が暑く人をゆでさせ、周りの人たちはだるそうに動いている。その中でぼくは暑く人を熱気に進む中でも心は洞窟のこけみたいにブルーでじめじめと暗かった。
学校には行きたくなかった。こんないじめのあるクラスなんて正直言ってもう関わり合いたくなかった。
しかし、それなら不登校になるのか、というのもダメだった。本当はいきたくないけど、そんなことをすればまた、前と同じ元の木阿弥になるのは明白だから、なので行くしかなかった。
光りがまぶゆいばかりに蜃気楼を作り出す世界。僕はその体がだるくなるような世界のなか、自転車を止め校舎に入る。そして、僕は階段を上っている最中考えることはいじめのことばかりだ。どうしたら、いじめをなくせる?どうしたら村田たちにいじめが悪いと言うことを教えれるのだ。そんなことを考えながら教室に入るとぎょっとした。
そこには骨があった。
いや、骨ではなくて波田さんがいたのだが、それがすごくがりがりな体型になっていたのだ。波田さんはぽっちゃり型であったのが、ここまで骸骨のようになってしまうとは、ここまでいじめは人を変えるのかと思って愕然とした。
ただ、いじめをしている人はあまり変わらなかった。波田さんが太かったら、くせえんだよ、といってけって、やせてきたら俺のおかげで痩せれてうれしいだろうといってけって、骸骨ぐらいになったら、きもいんだよ、といって思いっきり蹴るのだ。もう、そこまでの体型になったら蹴られたらもうぼろぼろだから起き上がるのは時間がかかるのだ。
しかし、やはり変化はあったかもしれない。明らかにけりの威力は骸骨になったときが一番強くなっているから、彼らは内心脅威を感じているのかもしれない。そして、ここからもっといじめがひどくなったような気がした。別にやることがひどくなったわけではなくて、何か執拗に必死にいじめているような気がするのだ。




