アタタカイヤミ 18
いじめは止まらなかった。全く止まるそぶりも見せずにいじめは確かに進行をしていた。いや、もう進行ではなくて進化の頂点にすらなっていた。
ある日、体育の時間。普通に授業をしていたが、先生が急用ができたとのことで授業を抜けてしまって、自主トレということになった。
僕はその自主トレの時男子からの言いつけでサッカーボールを取りに行かされたときに、僕は倉庫に行ってサッカーボールを取ったのだが、そのときにある音が聞こえた。それは倉庫の裏で音がしたので、僕は裏手に回ったのだが、そこで見たものは……………。
それを初めて見たとき、僕は誰かが抱き合っているように見えた。だが、それは違っていた。よく見ると女子生徒を男子生徒が羽交い締めをしているのだ。そして、もう一人の男子生徒が女子生徒に向かってダッシュし、跳躍する。そして、その女子生徒に向かってドロップキックを食らわせたのだ。
ドゴ!
女子生徒が大きくよろめいて、盛大にむせた。それを見たその場にいたほかの女子生徒、村田たちが大いにドロップキックを食らわされた女子生徒波田さんを嘲った(あざけった)。
「ははは、ちょ〜、おかしい〜。見た!里子!あれちょ〜受けるよね!」
「うん。すごくおもしろいわ、これ」
それから男子たちが代わる代わる、波田さんにドロップキックを食らわした。男子たちが断片的な会話を総合していると誰が一番波田さんにダメージを与えられるかで競争をしているらしい。
二人目の男子がドロップアウトをかます。
ーどん!
ーげほっ!げほっ!
波田さんが大きく咳き込んだ。相変わらず村田たちは笑っていた。
僕はあまりの衝撃を受けたのでしばらく立ち尽くしていたが、おそるおそる逃げようとして一歩後退した。
しかし、それがいけなかった。運悪く落ちていた缶を踏んづけてしまった。
当然、金田が僕に気づいてこちらに近寄ってきた。
「おい、笹原、なに見てんだよ」
そう金田がガン付けてきたが僕は素っ気なく言った。
「別に」
僕はそろそろ引き際だと思って逃げようとしたが、そのとき、3人目の人が蹴った。
ーどんっ!
ーげほっ!げほっ!げほっ。
今度のが今まで一番激しい咳き込み方をした。男子たちは3番目の人をこれは優勝決定か!といってからかっていた。女子達も、マジ受ける、次はどんなリアクションをするんだろうね、といっていた。金田もそれにすごく興奮していた。
「おおー!今の見たか!笹原!今のスゲーいったぜ!」
男子たちが波田さんを立たそうとする。しかし、波田さんはたたなかった。真剣に嫌々をした。
それが何か村田たちを刺激したのだろう。村田たちは波田さんそばに行ってその顔にがつっと足で踏んづけてからこう言った。
「何、かまととぶってんだ!この豚が!おとなしく蹴られとけ!」
そのまましばらく足をぐりぐりさせていたがやがて足を外した。そして、男子がが波田さんを抱え込み、立たせた。
波田さんを立たせたときに金田君はこっちを見て、にたりと笑いこう言った。
「どうだ?笹原、お前もやっとくか?」
「いや、遠慮しとく」
そんな僕達が話しているときに4番目の人が飛んだ。
ーどんっ!
そのときだった。そのとき、波田さんは腹を抱え込んで口を真下に向け胃の中にある物をはき出した。
ーう!おえーっ。
それにいじめているグループが大騒ぎをした。
「うわ!こいつやっちゃたよ!」
「ああ、まじできたねぇ」
「はは、ほんとうだ!まじきしょい」
「もう、半径3メートル以内にこないでくれる?汚いから」
そんなことを口々に言った。特にこの事で笑ったのが金田君だった。金田君は波田さんに近づいてこう言った。
「はは、こいつぁ、おもしれぇや。反吐が反吐を吐いたぞ」
そう言って金田は波田さんの肩を蹴った。しかし、波田さんは全く動かなかった。
いくら蹴っても何もリアクションがないことに業を煮やして、金田はこんなことを言い出した。
「はは、わかったぞ。こいつあれだ。こっちが何言っても何も言わないのはもう、完全に反吐と仲良くなりたいから、こっちに何も言わないんだ。じゃあ、仲良くキスでもして、な!」
そうして、金田君は波田さんの頭を波田さんがはいた吐瀉物に向けて踏みつけた。
ーぐしゃ。
「ははは!やだー、反吐が反吐にキスしちゃったじゃない。ちょ〜お似合いだわ」
それにみんな爆笑する。反吐、反吐といっていると予鈴が鳴ったので彼らは更衣室に帰っていった。
僕はそのあとにそっと、誰にも知れずに逃げた。今見たことはなんでもなかった、と言い聞かせながら一心不乱に逃げたのだ。




