アタタカイヤミ 103
「大丈夫?村田?」
僕は腰を抜かしている、村田に対して手を伸ばす。僕は当然のように自分の手が受け入れられると思っていた。しかし………………。
ばし!
氷の塊が有効の飛行機をはじき返し、飛行機ははじかれた歓声にしたがりぶらりと後に揺れた。
そのまま、村田は教室は出て行く。
僕は最初は何が起きたかわからず、静止していたが、すぐに村田が出ていく方向に意識を向ける。
「あ、おい!待てよ!村田!」
そしてすぐに教室を出てあたりを見渡す。
村田は上の会談からさらに上に向け動き、体が消えた。
「あ!待てよ!」
そして、僕はそこに向かって走り出す。
いったい、何がどうなってるんだ?いや、わかっている。何故こうなったのか本当はわかっている。論理的に考えたらこれは考えられる結論だ。だが………………。
………………………
考えられるもう一つのパターン。僕はそれを想像しただけで体の腕が震える。わかっていた、わかっていたんだ、こうなることは。
ガチャ。
僕は屋上の扉を開いてそろりと屋上に出る。
白い陽光が降り注ぐスタンドガラスの中のその中央に村田は独りで立っていた。
………………
僕は無言で村田の後に進み、口を動かした。
「村田……………」
「話しかけないで!」
優しく背中に止まろうとするタンポポの種に、暴風がそれをはじき返し、吹き飛ばした。
「………………話しかけないでって言われても話しかけないと何が何だかわからないだろ?ともかくなんで僕をそんなに嫌っているのか話してくれ」
しかし、その理由は僕は非常にわかっていた。こういう可能性を気づいていた。しかし、注意をよその方に流し可能性として吟味をしなかった。
今、僕はその可能性のつらさに身をさらうかも知れない。その可能性に体が小刻みに震えた。
村田はそれまで完全に独りで時を止めていたが、僕の言葉に時が戻ったかのような陸上に揚がった魚のように体をびくりと震いだして、完全と僕に向かって振り返った。
「なんで?なんでですって!あなたがそう言うならわたしも聞きたいことがある!なんで、あのことをばらしたの!………………あのままでよかったじゃない。あのままみんな幸せだったじゃない!わたしもあなたも成田先生も金村も!みんなが明るく笑っていた。みんながお互いを信頼していた………………それなのに!なんでなんでばらしたの!あの時が幸せだったのに、みんなが仲良くしていられたのに、なんで、なんで………………」
村田は話しの後半になると顔を俯け、濁った(にごった)声が漏れ出した。
「………………何故、それを言ったのかの説明はできる。今まで僕が甘受していた、幸せ”は欺瞞に満ちたものだから、僕はそれを破いた。
この“幸せ”は不自然なものなのだ。本当で真の幸せは本当に姿を見ても多分びくともしない正しいものだと思う。
でも、僕らの“幸せ”は全く正しいものではなかった。僕達の“幸せ”が周りに透明化されると周りから非難される。周りに嫌悪の念をいだかされる。果たしてそんな“幸せ”を存続させて良いのか?守って良いのか?
僕はそんな“幸せ”はこわすべきだと思う」
僕の言葉を聞き終わったあとの村田は体の中の生気が一瞬すり抜けたように見えた。だが、すぐに僕に向かって背を向けた。
「でていって、もう話すことはないからでていって………………」
「いや、しかし……………」
「出てって!もうなにも話すことはない!」
僕の再びの糸は横から轟音とともになたで切られた。
「……………………わかった、出ていく………………」
今、彼女と話しても何も得られるものはない。彼女に反省を促す以前に何も接点を生み出すことはできない。
今は引くべきだ。
僕は羽虫の足取りでそっとその場から離れた。
ドアからちらりと見た村田は冬の光りを纏い(まとい)、彼女の生命がそれと同調しながら発光し、冬の光りとなっていた。




