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悪役なのかヒロインなのか、教えてください。  作者: たばさ むぎ
1章 転生したらヒロイン? それより魔女になりたいのです。
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04 ―魔法のこと― 1

ブックマークが増えていたので調子に乗って本日2回目の更新。

こちらから来た方は1話前からどうぞ。

 

 

 

 ジオ兄様の回転地獄からやっと解放された私はしばしの休憩のあと、オレガノによる魔法講義を受けることになりました。

 ジオ兄様は復習という名目で一緒に受けてくれるのですが、私の休憩中はお母様から正座(この世界のもありました! 異国の反省の仕方という扱いです)を命ぜられて涙目です。


 ジオラスは生徒会長を務めるくらいだからちゃんとしている人物だったハズですが……。

 これから変わるのかなぁ。私のせいで変な方向行かないように気をつけて見ていようと思います。

 ……私に出来るか分かりませんが。どうにも読めないお兄様です。

 


「お嬢様、ご気分はいかがですか? よろしいようであれば先に属性の判定をしておきたいのですが」

「は、はい! 属性の判定ですか?」

「そうです。属性は……いえ、説明は判定後にまとめてお話しましょう。それでは楽な姿勢で立って足を肩幅に開いて……そうです。そうしたら私が合図をするまで深呼吸していてください」


 オレガノの指示通りに体勢を整えて目を閉じて深呼吸を始めます。

 目を閉じる瞬間に見えたオレガノはモノクルを触りながら私を注意深く観察するように見て、なにか呪文のようなものを唱えていました。


――深呼吸をする度に身体の中になにか巡っている力を感じる。

 暖かくて涼しくて爽やかで落ち着く気分がして、光を感じて暗さを知る。

 上手く説明できないけれど、そんな感覚――



「もう目を開けてよろしいですよ」と言うオレガノの声で目を開ければ大人3人は何か話し合っているようなのでジオ兄様のほうへ目を向ければ……ジオ兄様の目が輝いてる。

 まさかこのパターンはさっきと同じ!? ではないかとひっと顔が引きつる。

 ジオ兄様が素早く正座から立ち上がり一瞬よろけたので、足が痺れたから動けないだろうとホッとした瞬間に彼は走って(!)私のほうへ。

 気を抜いてしまっていたのでジオ兄様の行動に対応できず、またぎゅうぎゅうと抱きしめられる形に。

 彼はどうしてそこまでするのでしょうか?

 やはりこれは補正力なのかと疑問は増えるばかりですが、今一番気になるのは……。


「ジオ兄様、足が痺れてないのですか!?」

「え? あ、うん。何度も正座してるから慣れたよ」

「先程の辛そうな顔はもしかして……」

「ん、なんのこと?」


 演 技 だ っ た !


 大変ですよ、お母様!! 正座ではお仕置きの意味がないようです!



「そんなことよりも、凄いよ。リーア!」

「何がそんなに凄いのですか?」

「リーアは全属性持ちなんだ!」

「全属性?」


 自分の事のように喜ぶジオ兄様の言葉に耳を疑います。

 “ヒロイン(フリージア)”が“全属性持ち”? 

 ……ありえない。

 基本4属性の火・水・風・土。

 そして特殊属性といわれる光と闇

 『乙女ゲーム』内のヒロインであればそれに追加で光属性がつくのも補正力(チート)として理解できる。


 ただ、闇属性もあることはおかしい。

 光と闇はどちらかしか持てない設定のハズ。何かのバグ? それとも――



「リーア、聞いている?」

「え? あ、ごめんなさい」

 未だに私を抱きしめたままのジオ兄様に覗き込まれていました。

 どうやら考え込んで彼が話していたことを聞き逃してしまったようです。

 もう一度言ってもらえるようにお願いしすれば「もちろん」と満面の笑みで答えてくれました。

 近くないですか? と言う言葉は流されましたが……。



「全属性持ちはめったにいなくて、カルセオラリアという双子神の守護を受けた者と言われているんだよ」

「ということは何人かいるのですか?」


 確かゲームでは闇属性の対抗として光属性があって主人公と敵対する関係の人物が持っていたはず。

 何人もいるということはその設定が変更されているってことか……。むぅ。


「たしか……先代の王妃様がそうだよ。あとは今の魔法院の魔法師長と副長に治療魔法師長。上級者全体で10人いたかな……これは噂だけど、世界樹の麓に住むと言う賢者と森の魔女に塔の魔女かな。それからオレガノと僕」

「ジオ兄様も?」

「そうだよ。一緒で嬉しいよ、リーア」

「心強いですね」

「そのためにはちゃんと修行しないとね」

「お父様」


 声に振り向けば――顔だけしか動けませんでしたが――話し合いが終わったようでお父様たちがこちらにやって来ていました。両親たちが近づくとジオ兄様はやっと私を離して横に立ちます。

 お父様は私たちの前に立ち微笑むと、ジオ兄様にゲンコツを落して「君は心得を忘れたのかい」と厳しい声を出しました。その言葉を聞いたジオ兄様はハッとして「申し訳ありません!」と謝ります。

 初めて聞く厳しい声のお父様とジオ兄様の行動に戸惑っているとオレガノが説明してくれました。


 “全属性持ち”というものは総じて魔力の量が多く、もしコントロールを誤れば被害が大きくなってしまうリスクがあるということ。

 その魔力量と全属性使えるということは狙われやすいため、(全属性同士はともかく)情報の秘匿は必須であり国王・宰相・魔法院の長・副長・騎士団長と本人とその家族に知らされるのみ。

 そのためこの場所に今いる人物以外がいた場合、その場にいた全員が罰を受けることになるということ。

 この部屋にはオレガノが〈消音結界(サイレント)〉を張っているので、言葉は外には漏れないそうですが気をつけなければならない事には変わりありません。

 そのため、お父様は厳しい声を出したそうです。


「でもいつ〈消音結界(サイレント)〉というものを張ったのですか?」

「お嬢様がたが部屋に入った瞬間からですね」

「最初からですか?」

「はい。お嬢様はウイスタリア家の血を引いておりますので」

「……どういうことですか」

「それは私から説明しようか」

 おいでとお父様に言われ側へ行くと小さなアメジストの付いた指輪を渡されました。

 アメジストは本当のお母様がいつも身に付けていた、大好きだった宝石。

 なぜ今このようなものを渡されるのか分からずお父様を見れば、泣きそうな顔?


「これはね、アキレアが最後に来た時に忘れていったものなんだ」

 あの子は感が良かったからと寂しそうにお父様は言う。


「あの子は全属性持ちではなかったけれど、優れた魔法師だったから何かを感じていたのかもしれない。ウイスタリア家は代々魔法に強くてね、全属性持ちも多数生まれているんだ。だから最初からリーアが全属性持ちではないかと思ってオレガノに結界を張るように指示してあったんだよ」

 だからそれは君が持っているんだよと指輪を持った私の手を包み込んで笑う。

 そんなお父様の表情を見て迷う。ちゃんと思い出した記憶ではないけれど、さっきオレガノに説明された時の“狙われやすい”という言葉と符合する記憶のこと。


「……私が全属性持ちだから狙われたのでしょうか」

「それはないと思うが……あの子はオレガノに判定をしてもらうと言っていたし、あの事件の時はリーアが全属性持ちということは分からなかったはずだ」

 ついぽつりと零してしまった言葉に反応して「少し方向性を変えて考えてみるか……」と考え込んでしまったお父様。

 不味いと思い先程の言葉をなかったことにしてもらおうと口を開く前にお母様に「何になりたい?」と聞かれました。


「お母様? あの……」

「そうだとしても、そうではなくても貴女のせいじゃないわ」

「でも!」

「あのことは大人に任せて。それよりも未来を見ましょう」

「未来……何になりたいかですか?」

「そうよ、全属性なら選び放題よ?」

 お茶目に言うお母様は先程の話題から私を離したいみたいです。

 たぶん今は何を言っても関わらせてくれないでしょう。それならば早く実力をつけないといけませんね。


「どんな道があるのですか?」

「そうねぇ……。ジオラス、貴方は知っていますね。リーアに説明なさいな」

「はい、母上」

 お母様に呼ばれたジオ兄様が「座って話そう」と私たちをソファーに誘い、向かい合わせに座ります。お母様は私の隣です。

 お父様とオレガノはまだ話しているようですが、こちらには注意を向けていたようでソファーへ向かう時にチラリと見たらにこりと笑って手を振ってくれました。


「まず先に聞きたいけれど、リーアは魔法を使った道に進みたい?」

「許されるならば。……全属性を持っているのはちょっと怖いですけど」

「うん、そうだよね。良かった」

「良かった、ですか?」

「自分の力が怖くないと全属性使いにはなれないから」

「過信して暴走してしまう可能性があるからですか」

「そうだよ。ってリーアは本当に難しい言葉を知っているね」

「あ、あはは」

「まぁ、このあたりの細かい話はオレガノがしてくれると思うから。じゃ、説明するね」


 ついまた混ざってしまった言葉使いに一瞬冷や汗が出ましたが、ジオ兄様があまり気にしないでくれて助かりました。ジオ兄様の説明によると魔法を扱うなら魔法院を目指すのが良いとのこと。魔法院の魔法師は大きく分けて3種。


魔法師…主に対魔物用の魔法を研究:実戦もある。

治療魔法師…主に治療魔法を使った処置や研究。

魔法技師…主に魔法の研究:物に魔法を継続的に付加などの開発もあり。


「こんなとこかな。僕は魔法師を目指しているんだ」

「私は……」

 3種3様に魅力がある……でも。


「私は治療魔法師になりたいです。でも、守る……守れる力も欲しいです。」

「リーア、治療魔法師は人々を癒して守るんだよ」

「そうだけど、そうじゃなくて……迷惑をかけたくないんです」

「迷惑? リーア、どういう……」

「リーア。貴女はどうしたいの?」


 ジオ兄様の言葉を手で制止させたお母様が私の手を取って何か覚悟を決めたように問う。

 お母様は先程の私とお父様との会話で気付いたようです。私の求めているものを。


「魔法も淑女教育も頑張ります。だから私に守るための戦い方を教えてください」

「それが貴女の望むことですか」

「はい。ジオ兄様もしていますよね?」

「リーア!?」

「そうですか……そこまで理解しているとは。さすがにあの方の娘ですね。」


 あれ? 

 すべて心得たような表情のお母様に戸惑います。この反応は予想していなかったのですが……。

 ジオ兄様と会った時にバルコニーから降りてきたのを見てなにか体術のようなものをしていると検討を付けただけなのですが、思わぬ方向に来てしまったような?


「えーと、お母様?」

「アキレア様は治療魔法師でありながら体術のエキスパートで、白衣の戦乙女(ヴァルキュリア)と呼ばれていたのですよ」


 サッと立ち上がり、胸の前で手を握り締めて頬を紅く染め、何かを思い出すようにキラキラとした目で遠くを見るお母様。

 あぁ、なんだろうこの脱力感……。


「まったく、私の奥さんは妹の事が好きだねぇ」

「えぇ、私たちの年代ではあの方に憧れないものはおりませんわ。ですから……」

「うん、ありがとう」

 苦笑いでやってきたお父様がキラキラした笑顔が一変したお母様を優しく抱きしめているのを見たらフリージアの両親の記憶と深織(わたし)の家族の記憶が同時に甦った。



 愛していた、愛されていた、大好きだった。


 もう会うことは叶わない、大切な人たち。



 だから今度は、今度こそは守りたい。

 私の命でみんなが助かるならきっとそうする。

 でも、それは最後の手段にしなきゃならない。

 だってフリージアは残される哀しみを知っているから。



 もう一度お母様に託された指輪を握って決意する。


 恩返しのためだけじゃなく私の夢として治療魔法師になって人々の役に立てるようにと。


 それともう一つできた誓い――強くなって今度は身近な人を守ってみせる。





 ――アメジストの石言葉は『決断・心の平和・調和』――








いつもお読みいただき、ありがとうございます。


次回は明日の21時予定。


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