30 ―もやもやと迷う―
思ったよりもぐっすりと寝ていたようで目覚めはスッキリ♪
くうぅ~と伸びしてからのふわぁあ~という大あくびをしていたら部屋に入ってきたメリア様とアイビーにバッチリ見られてしまった。
淑女以前に女性として如何なものか……。
夕方かと思ったら、次の日の朝だとは。……私は何時間寝たら気が済むのでしょうか。
しかもずっと制服のままで後ろとか絶対にたくさんの皺がついていると思うし、お風呂も入ってないー!
不可抗力だとしても切ない。
メリア様のご好意で治療魔法師棟のお風呂を使わせてもらえることになりました。
朝風呂なんて贅沢~♪ と湯船に浸かりながら考えるのはあの話のこと。
物語どおりに後半まで魔物が出てこないのが一番なんだけど。
でも下手に介入してもいけないし……兎にも角にも情報収集をしないといけませんね。
彼らの魔法レベルとアマリリス様と彼らがどこまで親しいか。
もしかしたら親しさで話が進んでいるって線も頭に置いておこう。
さて、誰に聞くかだけど……やっぱりミモザかな。でもストレリ様に関しては聞かない方が良さそうだし。
他に誰かいたかな。
……そろそろ逆上せそうだから、後でにしよう。
スッキリした気分でアイビーが持ってきてくれた、胃に――ひとりで食べられたので精神的にも――優しい朝食を食べて一息ついていたらカサブランカ様から上級のためのレクチャーの残りを詰め込み授業するとの連絡が。
10日分を半日で詰め込むって……。無謀としか言いようがないのですがこれさえクリアすればちゃんと上級者と認めてもらえますし、動きやすくなりますからね。
そうだ、閲覧禁止の本を読むのもいちいち許可を取らずに済む! あの禁術のことも他の今は失われた魔法についての知識が欲しい。あの話では出てこなかったけれど、『乙女ゲーム』では重要なファクターだった。
何か役立つこともあるかもしれないから頑張って終わらせて図書室へ行かないと。
兄様には内緒で。
気合を入れて受けた詰め込み授業はなんとか夕方で終了。
さすがに学園よりも濃密な授業だったせいか、疲れを〈状態回復〉(裏ワザ)で癒す。精神的にはグッタリだけど、アイビーに1時間だけ待ってもらって図書室へ行った。
1時間ではあの禁術の本は見つけられなかったけれど、失われたという『光+闇の合成魔法〈時空〉』に関しての知識だけは手に入れた。上手く発動出来れば奥の手として使えるかも。ただ読めない部分が多くて解読には時間がかかりそう。日本語なのは助かったけど。
寮の部屋にアイビーと共に戻ると入り口でミモザに抱きつかれた。彼女にもたくさん心配をかけたなぁとぎゅうっと抱きしめ返したらそれ以上の力で抱きしめられて一瞬お花畑が見えた。
ミモザさんー、ギブです……。
久々にミモザと夕食を食べて、それから倒れた日の数学のノートを見せてもらった。さすが成績優秀者のミモザさん! しかも解かりやすい解説付きで助かった~。
お礼はこの時期ピッタリのレモンアイシングのかかったレモンケーキ。私の得意なケーキの一つ。前世の妹の侑李も好きでよく頼まれたな……。元気でいてくれると良いけど。
いけない、ちょっとしんみりしちゃった。
復習と予習が終わって、一緒の時間を過ごしたいと言うミモザのお願いで二人きりのティータイム。
夜なのでカモミールティーを飲みつつ、食堂に実は裏メニューがあるとか次の日休みにどこへ行こうかなど取り留めのない話をしていると授業の話になったので、聞くなら今かな? と幼馴染たちの魔法レベルのことを話題に出してみた。
「ミモザって魔法院に所属していないわりには魔法使えるよね? どこで習ったの?」
「ん~、一応私って殿下の幼馴染って枠に入るから~、王宮で習わされたの~」
「へぇ……それってアマリリス様も?」
「うん。殿下を守るように~ってよりは自身を守って足手まといになるなって言う意味合いが強いかも~」
「そうなんだ。どのくらいまで使えるのかな? あ、言っちゃいけなかったら言わなくて良いよ」
「別に口止めされてないから良いよ~。ただその当時のことだけど。全員初級レベルのものは全部出来てたよ~」
魔法の授業は結構個人差が出るから、進み具合もよるけど1年時に中級から始めていれば中級の半分くらいは使えているよね。でもあの話では2年時の夏休暇に強化したいということだし……実際はどのくらいまで出来ているんだろう。
どこまで出来ますか? なんて聞ける訳がないし……。
「フィーちゃん?」
「あぁ、ごめん。す、すごいね~、やっぱり魔法院じゃなくても進んでいるんだね」
「う、うん?そうかも~」
……考え事していたためにミモザに心配されて、慌てて取り繕ったけど微妙な雰囲気になってしまい、「そろそろ寝る時間だね~」とそれを苦しい言い訳にして今日のところは解散することにした。
お互いに「お休み、また明日」と挨拶をして部屋に戻るためにドアノブに手をかけた時「フィーちゃん!」と呼ばれた。なに? と振り返ると反対側の入り口にいるミモザが「私は絶対に、何があっても、フィーちゃんの味方だからね~!」と言って、私が呆気にとられている間に自室へ入って行った。
すごい告白をもらってしまった……。そんなに不安そうな顔してたかな、気を付けないと。
ミモザは私のことを凄いと言ってくれるけど、本当に凄いのはミモザのほうだ。私はあんなこと言えないよ。
とても嬉しくて苦しい。絶対に彼女を巻き込んではいけない、と心に刻む。
自室に入り寝る前にひと仕事。
あの日本語で書いたノートを取り出して今の段階で思い出した『web小説』の事柄を書いていく。
フリージアは自作自演で被害を――うぅ、気まずい――受けたようにしつつ、アマリリス様に嫌がらせをするんだよね……。ノートやドレスの破損に、一番は魔物を呼び寄せる犯人に仕立てることだったかな。
でもどうやってしてたのかな? 魔物を呼び寄せるなんてそんな魔法聞いたことない。また図書室で調べないと。
魔物が発生する箇所に連れて行くといっても日にちも時間もわからないけど場所だけは書いておかないと。
アマリリス様たちが対処できないといけないから、魔法レベルが分かるまで〔マギィ〕の時はそこを重点的に見回るようにしておこう。他に怪我人が出ては不味い。
「やることが多そうだなぁ……」
ノートを閉じ、念のために〈鍵設定〉をかけて引き出しの奥へと仕舞い込む。
明日の授業の支度をして――教養と数学と魔術2時間か――ベッドに入って眠りにつくまでまた考える。
ストレリ様には最初から嫌われているようなのでこのままで良いだろうし。
アシンス様は……ミモザとラブラブだから手を出しにくいっていうか出せない! 私には関心はないだろうし、その前にミモザと一緒じゃないと会わない人だよねぇ。放置で良いよね? ダメかな?
そういえば、ニコティ様はミモザよりもあの人たちに近い位置にいるんだよね……そうだ、彼がいた。特にティナス殿下の従弟だからそれ繋がりでアマリリス様にも近いハズ。
その情報も欲しいし、直ぐに仲を悪くすると逆に変に思われてしまうのも不味いので徐々に離れていく方向でいこう。
あとはアマリリス様とティナス殿下がもっと親密になるように嫌がられるように迫る……って今まで避けていた殿下を追いかけるってハードルが高すぎる! 確実に兄様とミモザに怪しまれそうだから良い方法ないかな。
パラメータとか見られたら良いのに!!
あー、同じところでぐるぐるとしている感じがして嫌だ。
心を失くしたり操ったりする魔法があれば悩まずに済むのかな……。
休み明けだからなのか、それとも色々な事を知ったからか二日ぶりの登校って独特の行きづらさがある。
予備の制服に腕を通して――そういえばリボンが行方不明なんだよね――ミモザと連れ立って女子寮の入り口まで歩く。
ちなみに制服の予備は10着あるらしい。ミモザは30着あると言っていたけれど……貴族様コワイ。
女子寮の入り口に人だかりのようなものが出来て、ざわざわとしている。
何かあるのかな? とミモザと話しながらその人だかりを避けようと一段高い場所に立ち、空いているところを探していると中心付近から「リーア!」と声がした。この呼び方をするのは家族しかいないから……ジオ兄様?
朝から何で? とビックリして立ち止まっていると人だかりがどんどん動いて道ができ、そこから兄様とアシンス様が歩いてきた。モーセですか……。
「に、兄様!? どうしたのですか?」
「おはよう、リーア」
「お、おはようございます。ってそれだけですか?」
「逢いたくて……ってそれも本当だけど、連絡事項があってね」
「連絡事項ですか?」
「うん」
ジオ兄様はちらりとミモザとアシンス様が話していてこちらに注意を向けていないことを確認すると『上級者おめでとう、さっそく動くことになったよ』と小声で話す。
私も小声で『ありがとうございます、それで?』と返してミモザのほうを見れば、なぜかサムズアップで「昇降口でね~」とアシンス様を引っ張っていってしまった。
なんだろうとジオ兄様を仰ぎ見れば苦笑いでミモザに手を振っていた。いつの間に仲良くなったのだろう……ちょっとずるい。そんな気持ちがバレたのか、兄様の「僕のほうがリーアとミモザ嬢の仲の良さが羨ましいよ」とからかうような声が落ちてきた。
恥ずかしくなって「当たり前ですー。親友ですから!」と胸を張れば、兄様はキョトンとした後にくくっと笑った。
良かった。一昨日の別れの時が気まずかったから心配だったけど、いつもの兄様だ。
兄様と連れ立って歩きながら、表面上は穏やかな笑顔を保ちつつ小声で指示を受ける。
午後は臨時で学園の生徒全員へ魔法の授業になるということ。
その時に今の学園の状態と〔マギィ〕の紹介。魔法のデモンストレーションをして圧倒させる……って穏やかじゃないですね!? 兄様? とても楽しそうなのは気のせいですか?
メリア様、兄様、私と何人かの学生魔法師は魔法院に呼ばれていると言うことにして、昼休憩時に魔法院に移動して私たち3名と他の〔マギィ〕7名とそこから変装して学園に行くそうです。
昇降口前でミモザとアシンス様が待っていてくれたので、そこで兄様とアシンス様とは別れて私たちは左棟の教室へ向かいます。
ジオ兄様に昼休憩時に治療室へ向かえば良いかと確認すると、兄様は「あぁ……」と言いながら周囲を軽く見回した後に目を眇めて「いや、迎えに行くから待っていて」と言う。
少し厳しい表情になった兄様を見る私にも眉間に力が入る。
空気がざわざわしている?
じゃあ後でと言いながら兄様は私の横を通り過ぎる時に小声で『雰囲気が変だ。十分注意して』と言った。
……物語の進み具合が知りたいと切実に思う。
お読みいただき、ありがとうございます。
悩み過ぎると抜け出せない。吹っ切れるまでモヤモヤ。
そんな状態(作者も←待て)




