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神様が泣いた日

作者: 森川 基

 昔、地上には神様がただ一人住んでました。神様の周りには誰もいませんでした。

 ある日、神様は友達を作ろうと思いました。神様は自分に似た人間を作りました。神様は人間と話をしました。神様に話し相手が出来ました。

 人間は愛し合った者同士、恋をしました。結婚をしました。子供を作りました。どんどん人間が増えました。

 神様には一つの欲しかありませんでした。神様の願いはただ一つ、みんなと仲良く暮らしていくことでした。しかし神様が想像していなかった困ったことが起きました。神様が作った人間には、神様が理解出来ない多くの欲を持っていたからです。人間は美味しい食べ物が食べたいと思いました。綺麗な着物を着たいと思いました。大きな家に住みたいと思いました。人間の欲はどんどんどんどん大きくなっていきました。

 人間は似た者同士が集まって、村を作りました。町を作りました。そして国を作りました。

 人間は自分の国を大きく豊かにしたいと考えるようになりました。人間は自分の国の隣りの国を支配したいと思うようになりました。そのために、人間は武器を作り始めました。人間は武器を使って戦争を始めました。勝った国は負けた国を支配しました。このように国はどんどんどんどん大きくなり始めました。

 人間は国を支配する者を王様と呼びました。大きな国の王様は、もっと大きな大地と多くの人々を支配したいと思うようになりました。そう考えた王様はだんだんだんだん強力な武器を作るように国の人々に命じました。

 そしてついにある国ではアインシュタインという人が「原子爆弾」という武器を発明しました。この武器を使えば、あっという間に数えきれない人々の命を奪うことが出来ます。多くの村も町も燃え尽くすことが出来ます。

 でもアインシュタインは悩みました。「もしこの爆弾を使ったら多くの命が奪われる。そして原子爆弾から放たれた毒はこの地上を覆ってしまう。もしそうなったらこの地上のありとあらゆる生き物が死んでしまう」

 アインシュタインは自分が発明した原子爆弾のことを王様に言うべきか黙っておくべきか悩みました。毎日悩みました。しかし、ある日王様はアインシュタインの発明した原子爆弾を知りました。王様は大変喜びました。王様はアインシュタインを国の英雄としました。

 ある日王様は、戦争に原子爆弾を使おうと考えました。そして将軍達に命じました。「この原子爆弾を使って、自分達以外の国を焼き払え。そうすれば私は地上でただ一人の王様と成るであろう」

 アインシュタインは必死で王様に願いました。「どうかそのようなことはお止め下さい。この爆弾は使ってはいけないのです。もし使えば、この地上のありとあらゆる生き物は死んでしまいます」

 王様はアインシュタインの願いを受け入れませんでした。アインシュタインを牢に閉じ込めました。

 王様に命じられた将軍達は原子爆弾を使って他の国を攻撃し始めました。たくさんの原子爆弾を使いました。ありとあらゆる国の町や村、そこに住む人々、それにありとあらゆる生き物が死にました。苦しみ焼けただれ、水を求めながら死にました。

 やがて原子爆弾の毒は地上全体を覆いました。原子爆弾を使うことを命じた王様も毒によって死にました。アインシュタインも牢屋の中で神様に謝りました。涙を流しました。アインシュタインも死にました。

 地上には、何もかもが無くなりました。何も無くなった地上をただ風がふいてました。神様は何も無くなった地上を眺めてました。神様の涙が地上に落ちました。たえることなく落ちました。神様はもう二度と人間を作ることはありませんでした。

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