甘いお菓子でごまかして
お待たせしました。長いので分けました。
お風呂に入り(入らされたとも言う)綺麗さっぱりになり、しばらく経つと少し気が楽になった。
意外とベタベタしてたのがなくなったのもあるが、体が動くしもう舌足らずじゃない。
体を拭き終わる頃に、イザベラさんから改めて少し凝った服を渡されたので袖に通してみる。
服のデザインは○○の錬金術士、みたいなロングプレイングゲームの服に近い感じ。制服みたいな感じの。
紺色の長い上着にクリームと紫色のラインがあるロングスカート。横には金色の飾り紐。
コスプレみたいだけど生地からして違うし、ボタンとか飾り紐があってデザイン的に意外とかわいい。
出来上がりを鏡で見て多少大きいが特に問題はないものだった。
でも、一人で服を着替えながら思ったのは今の私の現状ってどういうことなのか、だった。
正直、不安だ。
だって、さっきまで私、血だらけになりながら死に近づいていたのに、気がついたら木から生まれて見知らぬ顔立ち、髪色、皮膚の色すべてが違う外国人に囲まれて、なぜか言葉が通じてて…。
この後、改めて話をする、とイザベラさんとマリアさんは言った。
話を聞くと、後戻りできなさそうで怖い。
3人に連れられ改めて元いた部屋に戻った。
すると、中には私が生まれた時近くにいた5人の男性が、部屋の真ん中で椅子に座って何種類かのお菓子と、半透明の黄色い飲み物でおやつタイムをしていた。
「おまたせ、終ったよー。あ、ずるいわー。」
マリアさんが拗ねたように言うと、座ってた中で一番年長者に見える白人に見える白髪混じりの赤毛の男性が、
「君たちの分もちゃんと用意しているよ。適当に座りなさい。」
「やった!結、うちの隣に座ろう?」
「あ、はい。」
そう言って、手招きしてきたマリアさんの左に座ったら、私の左に座ってた焦げ茶色の髪の少年…たぶん要くんがフォークを咥えながら「うわぁ、隣に来たよ、最悪~」みたいな顔をしてきた。
私、あなたに何かした!?傷つくわ!
そう感じたのは私だけじゃなかったらしく、赤毛の男性が、
「要、非がない人に対してその態度は失礼だ。彼女に謝りなさい。」
その言葉と共にジロリと睨まれしぶしぶといった体で形だけ「スイマセンネ」と言った。
わぁむかつく。同い年に見えるのになんだこいつ。
「すまないね。13人目なんて前例が聞いたことがなくて、いろいろと一番不安に思ってる子だからこんな態度取ってしまって。君に当たるのは筋違いなんだが。…感情表現が少し攻撃的になりがちでね。」
「ちょっ、カイル!?そんな一番不安に思ってなんかない!それに子供扱いするな!」
「でもそういう意味で一番騒がしかったの要じゃん。トニーとエドはまた別だけど。」
「テオはどっちの味方だよ!?」
テオと呼ばれた明るい栗色の髪をした、柔和そうな顔をした少年も私や要と同年代かやや下に見えるが、精神的にこっちの方が大人に見える。
なんて思いながら、騒ぎを見ていたら隣からマリアさんが見た目がシフォンケーキなおやつをくれた。
お礼を言って、一緒に渡されたフォークで一口食べてみると、うん、見たまんまシフォンケーキ。おいしい。
2、3口食べたところでカイルさんが人差し指を上げながら話し始めた。
「最初に大前提を言っとくね。うすうす感づいてると思うけど、ここは君がいた世界じゃないってことを言っとくよ。君の名前は?」
なんとなく予想していたとは言えショックだ。
「小柴結です。あの、私、車に轢かれて死んだと思ったんだけど、それだと今私が生きてるのがおかしい事になるんだけどここは一体なんですか?」
「…記憶ありか。話す前に、今この場にいる人だけでも先に自己紹介しようか。何人かいないけど追々帰ってくる。まず私はカイル。今いる『生まれた者』の中では一番の古株だ。たぶん実年齢もかな。なにぶん記憶がないから皆、ホントの年が分からなくてね。気軽にカイルでもおじいさんでも好きに呼んでおくれ。因みに能力は炎だよ。…はい時計回りに次、ジェド。」
ん?聞き間違いじゃなかったら今能力とか言った?
「え、俺っすか。えー、名前はジェド。そこそこ前に生まれて、能力は…幽体離脱っていうのかな?…んーと、好きなものは辛い食べ物。よろしく。……はい。次、レオン。」
中東とかにいそうなよく焼けた皮膚の、黒い短髪の青年の名前がジェド、と。
それよりこの人も言っちゃったよ…。能力??え、ガチで?
後編へ続く!