始まりを奏でよう
仕事が休みの日にだらだらと更新します。第1話!
春――――
桜が咲き乱れ新しい一年が始まり心躍る季節
私、小柴結もそうなる予定だった。
そう。だった。
最後の高校生活の出だしは正直悪くなかった。
新しいクラスで幼馴染の子達と同じクラスになれ、初めてのテストはなかなかの点。アルバイト先でも今のとこ失敗して怒られる、なんてことがない。
でもね、だからってこれはないと思う。
今の状況。
死ぬわこれ…。
学校帰りに飴を舐めながら見通しのいい道路を歩いてたはずなのに気が付いたら血の海に横たわる体とするどい痛み。
最後に見えたのは車だった気がするし、轢かれたかな。
頭はやけに冷静で、この血の量だと生死は絶望的だと判断し、心の中で家族―お母さん、お父さん、生意気でよく喧嘩する弟の翔、まだまだお子様な妹の和に謝る。
しかし、…ホント痛い。なにこれ刺さってる?骨的な意味で。
あ、自分でウケて笑ったら口から血が出た。ツッコミ死か、斬新だな。
そんな自虐モードに入った私の周りが騒がしいけど、騒がしかったんだけど…もうだめ聞こえなくなって…き…た。
コポコポと心地いい音に包まれていた。
まるで母親の胎内みたいな気持ちよさを覚えてまどろんでいると―――
ボォトン、バシャッ!!
なにかが落ちて割れたような音が響いた。
いや、これ落ちたの私だよね。
…体が痛いんですけど。まるで3、4段目の階段から落ちたかのように。
しかし、何だろ。体がうまく動かない。
手間取ってる私の近くになぜか人の気配がする。
確認しようと目を開けようとするのだが、顔にかかる水滴とダルさでなかなかできない。
そんな中、たぶんいるであろう目の前にいる人達の中から真っ先に少年の様な声が叫んだ。
「マジで生まれやがった。13人目なんて聞いたことないぞ!?代替わりなんてしてないのにどうゆうことだよ!?」
「要、騒がないで。彼女がびっくりするでしょ。マリア。そこに置いてる服とタオルを頂戴。…ありがとう。」
やっと少し開けた目から見えたのは西洋風な顔立ちの白金の髪をした美人とインディアン系な顔立ちの茶髪のセクシー女性が近づいてる。どうゆう状況。
だめだ、遠くのものがぼんやりとしか認識できない。
目は悪くないはずなのに見にくい。
そんなことを考えていると美人な女性に体中を布で拭かれた。
私…17歳だからいい年なんですが。恥ずか死ねる。
自分でできるって言え!がんばれ私!
「…!ゲホッゲホッ!!」
むせた。というか咽喉にあった液体を吐き出す感じ。
「大丈夫よ。まだ生まれたてだから羊水が出るし、体はまともに動かせないからまかせて。」
…え?今、羊水って言った?生まれたて??どうゆうこと?
うっすら見える目で周りを見渡してギョッとした。
自分の横には立派な大樹、そしてまるで生ってた実が落ちて割れて私が出てきたかのような惨状。
…もしかして私、木から生まれた?
そして…私、裸…?
恥ずかしさのあまりひと思いに気絶したい…。
ホントは生まれる時、粘着質な液体(効果音的にブジュルッ!みたいな)にしようかと思ったんだけど、兄弟にキモいって言われたんでやめました。やめてよかった、かな?