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少女のおわり。



---数分前---


「佑樹!翔太!あの子見て!!すっごく可愛いわよ」

急に、三歩前を歩いていた幼なじみの太田真由が振り返り僕、桜佑樹と

同じく幼なじみの大岩翔太にそう言った。


言ったというか、叫んだというか。

とにかく、僕たちの進んでいる方向の右の道から確かに

可愛らしい少女が歩いてきていた。


少女は横断歩道を歩いている最中で

遠目には茶髪に大きな赤い花の髪飾りがよく映えている。


ところでおい。真由お前そんな可愛らしい少女に

堂々と指を指すのはやめなさい。


「で?何が言いたいんだよ」

僕の隣の翔太が当たり前といえば当たり前というか

正直なんで僕は思いつかなかったのか不思議なくらい普通な質問をした。

指を指してるとかそんなの言われてみれば結構どうでもいいし。


「え??特に深い意味はないけど。でも、ここら辺じゃ

あんまり見かけない子でしょ」


こんな田舎で見かけない子供がいるほうがおかしいしな。


・・・そうだ、たしかにあんなに可愛らしい子は今までに見かけたことが無い。

とすると、どこからきたのだろう?

不思議に思って少女の顔をよく見るために僕は少し

歩く速度を速めた。


その時、

僕たちの横を明らかにスピード違反の大型トラックが通り過ぎた。

「な・・・何だ?あの車は」

やっと、僕がその一言を発したとき

すぐ目の前で大きなブレーキ音と鈍い衝突音がした。

そして、宙に舞う少女の体。


何が起こったのかわからなかった。

少女はドサッと鈍い音をさせてアスファルトの道に落ちて、

トラックはその少し先で止まって、

どこかのサスペンスドラマでこんなシーンがあったかな。

と、頭のなかで思う。

そんなことを考えてこれもテレビの中の出来事だと、

そう思いたかった。

しかし、僕の見たことは現実のようで

夢だとも思ったが

つねった頬はしっかりと痛い。


つまりは、少女が撥ねられた、と。



ーーーーーーー


今、僕の目の前の黒いアスファルトの道には少女のものであろう

小さな血の池ができている。

そこに頭から血を流している先ほどの少女の小さな体があった。

それから、呆然と突っ立っている真由と翔太。


1分くらいの間呆けて動かなかった僕達。

一番初めに行動したのは僕の隣の真由だった。

真由は僕の腕にしがみ付いてそれから

一生懸命に唇を震わせて言葉を発した。


「あ・・・。っ、ね、ねぇ・・・病院・・・。きゅ救急車に、電話し、なきゃ」


真由は僕に話しかけたらしいのだが返事なんて出来なかった。

何しろ僕だってろくに落ちつけていないくせに、

それに、誰がどう見たとしてもあの少女はもう息はしていないだろう。

後から考えればそう思うのだがそのときは

僕も、真由も、それから翔太もそんなこと考えられなくて

とにかく頭の中が混乱していた。


真由はもたつきながらも

自分の鞄から元気な彼女らしいオレンジのケイタイをとりだして

「119」を必死に押している。

何回も押せば早くつながると言う訳でもないが。

僕は、血の池の中に横向きに倒れている少女を見やる。

綺麗な、とても整った顔をしていた。

頭についていた赤い花の髪飾りは血の池の中に落ちてしまっていて

まるで、白い花が赤く染まったかのようだった。



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