なんかこのテンプレありがちだよね
城に戻った私はそのまま獣王様に報告をしに執務室へ直行した。
「獣王様、転生者を保護してギルドに連れて行きました」
「ん、ご苦労」
銀色の髪と獣耳が紙束の山の中でピコピコ動いている。
「あの、獣王様」
「どうした?」
「どうして、人間、しかも転生者だの意味の分からない人間を保護しなければならないのですか?あんなの放っておけば……」
「リディア」
「なんですか?」
「僕の決定に不満があるのかな?」
カリカリカリ、と書類にペンを走らせる音が続く。
「いえ、ただあんな脆弱な生き物のどこが――」
「煩いよ」
ペンの音が止まり底冷えする声が発せられる。
「……申し訳ありません、出過ぎた真似をしました」
「分かったならいいよ、早く出て行って」
「はい……」
結局何もわからずに私は退出させられた、別に不満があるわけではないのだ、ただ教えて欲しいだけだ、獣王様がなぜ人間を重要視するかを。
そんな風に考えていると背中に重さを感じた。
「リディアちゃーん」
甘ったるい声と共に首に手を回される、やれやれ神出鬼没とはこのことか。
「……リアン様、銀狼族のあなたが公衆の面前でそのような」
顔は見えないがこのリアンという銀髪の女性はこの国で最も権力のある銀狼族の女性の獣人だ、ついでに獣王様も銀狼族のトップである、つまり彼女たちは偉いということだ、更に言うと歴代の獣王は全員銀狼族である。
「いーじゃない、頭が固いなぁリディアわー幼馴染に対してそれはないんじゃないー?」
何がどうなってこうなったのか、私ことリディアはリアン様の幼馴染という名目上親交がある、本当にどうしてこうなったのやら。
「いえ、私はこの国に遣える兵士としてですねー、ワヒャッ!?」
突然耳を掴まれるので変な声が出てしまった恥ずかしい、リアン様といると調子が狂う。
「だから幼馴染って言ってるでしょー?昔はもっと親しくしてくれたのにー」
「あ、あれは私も昔はわ、若かったというか、物を知らなかったというか!」
「くすくす、リディアはかわいいなー」
耳元で囁かれると変に反応してしまう。
「うう、リアン様やめてくださいよ」
隊長としての面子が大変なことに。
「リアンちゃんでしょー」
「ちゃ、ちゃん!?」
「いつもそう呼んで―――」
「呼んでません!」
「えー」
えーじゃないでしょうが。
今度は何を考えたのか私の頬を掴んで伸ばし始める、痛い。
「ひゃめてください、ほうがのひまふ」
「なんでこんなに柔らかいのかしらー」
私の静止の言葉も聞かず頬を引っ張りまくるリアン、まったく困ったものだ。
午後から日課の修練をしなければならないのでリアン様を背中に乗せたまま修練場に向かう、少し首が締められて痛い。
「もうすぐ修練場につくから降りてくださいよ」
目の先に修練場が見え始め、他の兵士たちの修練の音が聞こえる。
「え、もう着いたの?早いー」
「はぁ、ついたから降りてくださいよ」
「はぁーい」
ストン、という着地の音がしてやっと解放されたので彼女を見る、私と同じぐらい、いや少しだけ小さいぐらいの背丈の銀髪の獣人、まったくおんぶなんかこりごりだ。
「リアン」
「なに?」
「体重が軽すぎます、ちゃんと食事をとってください、また研究に没頭していたんでしょう?あとお風呂も入ってください、少し匂います」
長く美しいはずの銀髪はボサボサ、研究をする過程で白衣は薄く汚れどこぞの浮浪者もかくやという格好であった。
「うん?あ、お風呂入るの忘れてた」
しまったーと言いつつ手を振ると髪は美しくなり白衣の汚れも消えた、いつみても彼女の魔法は理不尽である、膨大な魔力と洗練されたその魔法技術は魔力が無く魔法が使えない私にとって羨ましい限りである。
「はぁ、食事はちゃんととってくださいね?」
「はーい」
「では」
背中を向けて修練場に入ろうとする私にリアンが声を投げかけてきた。
「リディア」
「?」
「人間をあまり甘く見ないほうがいいよ」
「っ!?」
振り返るがもうそこに彼女の姿はない。
「………あんな生物のどこが」
頭を振って考えを捨てる、私は何をしに来た?修練だ、ならばそれに集中すればいい。
Side部下
「隊長、少しは手加減してくださいよ」
「………」
「こ、腰がぁ、腰がぁ」
三者三様ボロボロの格好で地面に放り投げられている、それをした本人は当然のごとく我らがリディア隊長なのだが。
「煩い軟弱どもめ、さっさと立て、ほら次来い!ぐずぐずするな!」
次々とわが軍の精鋭が挑んでは投げられ挑んでは投げられ、もうやだこの隊長。
「今日はカリカリしてるな隊長」
「あーそうだなぁ、腰がいてぇ」
「まったく、もう戦える獣人がいないとかどんだけー」
横ではボロボロにされた部下ABCが目の前の理不尽に対して文句を言っている、まあそりゃそうだよなー。
「ついでに俺は腹がいてぇ」
目が合っちゃったよ、こっちに向かってくる、ああ、手が!手が!
Sideリアン
「駄目ね、リディア全然わかってない、あなたは人間を全く分かってない」
彼らは軟弱でも貧弱でもない、彼らはとても恐ろしい、牙を隠し能を隠しその欲望は留まるところを知らない。
「はてさて、今世の勇者は世界を救えるのかしら?」
それは物語、神様が創った世界の本当の秘密を知るために勇者が頑張るちょっぴりハードでテンプレな物語。
ああ、勝手にフラグ立てやがって…回収するの俺なんだぞ。