ホプキンズ
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ホプキンズは病院のベッドの中で目覚めた。
状況が飲み込めず、辺りを見回す。白い天井、白い壁、窓際の花瓶にだけ色らしいもの、緑の葉を携えた何かの花が飾ってある。良く見るとそれは造花らしかった。
暫くボーッとしていると様子を見に来た看護師に発見され、彼女により担当の医師が呼ばれた。
「気が付きましたか。自分のお名前を言えますか」
「ホプキンズです」
「フルネームでお願いします」
若い医師は手元のカルテを見ながら言った。
「ジャスティン・クロード・ホプキンズ」
私は喉の渇きから来るかすれ声を絞って答えた。
「ここが何処だか分かりますか」
「えっと、病院かな?」
「ええ。あなたは銃で頭を撃たれ、ここに運び込まれたんですよ」
医者にそう言われて気付き、ホプキンズは頭の包帯に手を触れようとした。
「触らないで!」
医者がホプキンズを止める。
「まだ傷口が塞がってませんから」医者は言った。「あなたは運が良かったんですよ。銃弾は脳を貫通し、後部頭蓋骨で止まりました。奇跡的に脳の損傷は軽く、銃弾も手術によって無事に摘出しました」
それから医者は興奮気味に、こんな奇跡は万に一つも無いことだと話した。
「以前、祭りの祝砲の弾に当たってしまった男性が、あなたと同じ様に九死に一生を得ましたが、脳の損傷が酷く、言語障害が出てしまいました。本当にあなたは運が良い」
「はあ、有り難うございます」
ホプキンズは嗤うしかなかった。
ツイてない事ばかりだ。
それから2週間もして、ようやく退院となった。
頭の包帯はまだ取れなかったが、傷口は塞がっている。
久しぶりの我が家にたどり着くと向かいの家の窓からオリバーがこっちを見ているのに気付き、絡まれる前に急いでドアを開け、中に逃げ込んだ。
床は複数の人間が踏み荒らした様な跡があり、警察官たちのものだろうと思った。犯人は直ぐに捕まったらしいのと、盗まれたのは家にあった現金が150ドルほど、犯人から押収してあるので他になにか無くなった物がある様なら、後で被害届けを提出してくれと入院中の病室で警察官に言われた事を思い出した。
ホプキンズは部屋に向かう。
部屋のドアを開けると床には撃たれたホプキンズ自身のものらしい乾いた血痕があったが、小物入れの蓋が開きっぱなしになってる他はそのままだった。
ホプキンズは壁際の水槽を観察した。
巣の中では動いてるものも多かったが、巣の奥では女王蟻が死んでおり、次世代が産まれないこのコロニーはやがて崩壊すると思われた。ホプキンズはおもむろに立ち上がり、部屋を出てガレージに向った。
バケツを手に取り、水槽の土をシャベルで掻き出していく。何往復かして水槽の土を全てバケツで裏庭に捨てた。すっきりとしたホプキンズは手に付いた土を叩いて払い、すっかり空になった水槽をどうするかと思案した。
「熱帯魚でも飼おう」
ホプキンズは頷くと、満足気に部屋へと戻って行った。
END.




