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イヴ
西暦1970年代の地球を再現したデジタルデータ、惑星UKI-1097は電脳空間で時を刻んでいた。
それは“大いなる意思”(マザー)が水の惑星や緑の星と呼ばれたかつての姿。
私は事ある毎にワープホールを潜り、電脳空間に造られた美しい地球の各地を旅した。エベレストの山頂、スウェーデンの森の中、ユーコン川に流れるカヤックの上、アマゾンの奥地、ニューヨークの雑踏。すべてが新鮮で美しかった。
「何故、もっと早く妻と来なかったのだろう」
日本の高尾の紅葉を見ながら、私は呟いた。
この美しい大地からイヴも生まれたのだ。確か、2000年代のアフリカだったか。
一瞬、私はコンピューターにアクセスしてUKI-1097の歳月を早送りしようかとも思ったが、直ぐに考え直した。
時間は限りなくある。
楽しみは後に取っておこう。
「いつか、イヴの中で、この様な生命溢れる世界に、触れられる事が、出来るのだろうか」
私は暖かな木洩れ陽を浴び、浅い眠りに落ちるような感覚を味わいながら、飽きが来るまでデジタルデータの紅葉の中に埋もれ佇んでいた。




