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アステリ

「何故、末妹様にだけ助言を?」

 俺は通い慣れた貴族院、ユリイカの部屋へと彼を訪ね、ひとしきり事の顛末を話し終えてから、そう詰問した。老ユリイカは書き物の手を止めて俺を見据え、口を開いた。

「彼女に直接尋ねられたからな」

「何と尋ねられたのですか」

「過去に候補者が消された事例を教えて欲しい、と」

「何故、私に教えてくれなかったのですか!」

「それはお前が聞かなかったからだ」

 老ユリイカは視線を書き物机に戻して言った。

「誰か聡い者が彼女に入れ知恵したんだろう。私が三代前から仕えているということを」

 国会がない時の老ユリイカの仕事は歴史の編纂(へんさん)だった。歴史は時の権力者によって都合よく書き換えられる。本当のことを知りたければ、それを見てきた生き証人に聞くしか無い。そういう意味でも老ユリイカはうってつけの人物だった。

「彼女は良い生徒だったよ」

 ユリイカは独り言の様に呟いた。

「生きる事に貪欲なのだな。知識が武器になり得る事を他の誰よりも理解していた」

 俺は何も言えなかった。事実、その通りだったから。何も武力だけが敵を排除する方法ではない。分かっていたつもりだったが、護衛という職業観念に囚われ過ぎていた。来るのを待ち構えるのではなく、避ける術を知るべきだった。

 だが、何かあると分かっていても聖女王(マザー)からの誘いを断れただろうか。負けん気の強いコリアなら拒む事はしないだろう。他の姉妹たちに負けじと胸を張るだろうから。末妹である彼女は自分の非力さ、立場の弱さを逆に利用したのだ。

「他の次代(セカンド)はどうなったのだ」

 ユリイカが訊いてきた。

「私はコリア様を送り届ける為に先に退出しましたが、あの様子では多分、皆」

「……そうか」

「この後、どうなるのです。オリンピアは」

(つつ)が無く始まるだろうよ。例え、次代(セカンド)がいなくなろうとも」

 俺はユリイカの言葉の意味が分からず、返す言葉に詰まった。

 ユリイカは嗤って言った。

「私は“三代前”から今の聖女王(マザー)に仕えている。分かるか?」

 俺は背中に冷水を浴びせ掛けられたかの様だった。

 敵は次代(セカンド)だけじゃなかったのだ。

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