アステリ
王国第三都市選定地。巨大な城壁や外壁に囲まれ、警備兵も多く駐屯する本国や第二都市と比べ、最前線にほど近いこの地の、特にその外縁部は駐屯する多くの歴戦の勇士たちの装いとは裏腹にまだまだ急ごしらえの感漂う簡素な作りとなっていた。
そこここで工兵たちが壁の補修にと忙しなく働いている。率いていた近衛兵たちを宿舎に帰し、俺は指令本部へと向かう。途中、ラゾームと鉢合わせた。
「若いのの調子はどうだい」
ラゾームは俺に声を掛け、近寄って来て肩を並べると親しげに細い儀礼用の触手を挙げてきた。
溜め息を堪えつつ、平静を装い俺も儀礼用の触手を挙げる。
「……何とかやってます、ラゾーム少佐。何名かが存在進化しました」
「ほう。今回の新兵は当たりのようだね」
「運が良かったのかも知れません。敵将校級とは遭遇せず、小規模な群と立て続けに戦闘出来ましたから」
「聖女王が排卵期を終えるのもじきだろう。それまでになるべく多くの兵を育てなければ。頼りにしているよ」
ラゾームは皮肉な笑みを浮かべて去っていった。
俺はその背に小さく舌打ちをし、再び指令室へと歩き出した。
歴戦個体を中心に組むラゾームの部隊は主に最前線でジャーヴィスの大型種を叩く役目を担っている。戦死者も多く出したが、戦果もそれなりに上げていた。反対に俺が受け持つ兵は近衛隊とは名ばかりの新兵が多く、戦場経験が無い者がほとんどで、平時は先王の身の回りを警護している。
今回の実践を兼ねた演習で幸運にも存在進化した個体は、次の編成時にはラゾームの隊へと移ることになるのだろう。その事を思うと気が沈んだ。




