アステリ
「大丈夫ですか」
俺の言葉にコリアは小さく頷く。しかし、その体は震えていた。
やがて悲鳴が低いうめきに変わる頃、聖女王は席を立った。
ちらりとコリアに目を向け、傍に立つ俺に先ほどの様な意味有りげな視線を向ける。先ほどと違うのはその口元に嗤笑を湛えていた。
その場の惨劇を尻目に、お付きの従者を伴って晩餐会場から立ち去る聖女王を見て、俺は悟った。
全ては彼女に仕組まれたものだったのだ。
オリンピアは次代同士の凌ぎ合いだと思っていた。だが、まさか元首までそのレースに絡んでくるとは考えても見なかった。
まだ動揺を隠せないコリアを自室まで連れて行き、部屋付きの従者に任せて休ませる事にした。こんな状況で明日のオリンピアは予定通り開催されるのだろうか。
俺がコリアの自室を離れ、後宮から立ち去ろうとした時、出口までの途中、廊下の向こう側から歩いて来る者がいた。見覚えがある。体調が優れないと晩餐会に姿を見せなかった末妹の次代。
俺は廊下の端に避けてやり過ごそうと頭を下げる。彼女が近くまで来た時、俺の前で足を止めて、声を掛けてきた。
「あら。あなた、ここの従者じゃないわね。誰かの護衛かしら」
「コリア様の」
「そう。今ここにいるってことは、コリア姉様は無事だったのね」
「無事とは」
「惚けても無駄よ。毒を盛られたんでしょう?」
「知っていたのですか」
「ええ。多分だけど、こうなると思ってたわ」
「何故」
「前例があるの。前回の時もそうだったと聞くわ」
「誰に聞いたんですか?」
「あら、てっきりあなた方も聞いていたものとばかり」
末妹姫は嗤った。
「ユリイカ様よ」




