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ホプキンズ

 5時間バーに居座り、そろそろ閉店だと言わんばかりに飲み渋っていた常連客の一人を店主が追い出したのを見て、ホプキンズもようやく重い尻を上げた。

 少し飲みすぎたろうか。

 寒さもさほど気にならず、酒で火照った顔が夜風にあたり気持ちが良い。飲み始めの頃のイライラは無くなり、家路までの道のりをふらふらとしながらも足取り軽く歩いて行った。


 バーを出てから小一時間。酔いのせいもあってか、行きよりも時間が掛かったが、ようやく家に辿り着いた。

 玄関の扉の前で鍵を取り出し、鍵穴に差し込む。

 おかしな事に鍵は少しの抵抗もなく回る。嫌な予感がして振り返った。時間も時間だ、ジンジャー家の灯はとうに消えていた。オリバーの小憎たらしい顔がチラつく。

「何かあったら、ただじゃ置かないぞ」

 ホプキンズは再び昼間の怒りがぶり返してきて、いたずらを警戒するのと同時に、次こそは何とかやり返す事は出来ないものかと思案した。


 リビングの明かりをつけ、特に異常が無いのを確認して、一先ずホッと胸を撫で下ろした。

「考え過ぎか。留守宅に忍び込んだら、イタズラどころの騒ぎじゃないしな」

 安心したら急に尿意を催してホプキンズはブルッと震えた。

 トイレに行こうと足を踏み出した時、自室のドアの向こうから物音がした。

 何とはなしに閉じたドアを開ける。部屋の中には窓に手を掛けて開けようとしているスキーの目出し帽の男がいた。


 瞬間、ホプキンズの頭に浮かんだのは何かのドッキリじゃないかと言うこと。男が慌ててジャケットの内から拳銃を取り出すのを見てホプキンズは半笑いの様に口元を歪めた。



「だ、誰だ。泥棒か?金目の物なんかないぞ」

 人の気配がして逃げようとしていたのだろう。目出し帽の男はホプキンズの様子を見て脅威は無いと安心したのか、窓から離れて銃を構えながら、ゆっくりとホプキンズを観察し始めた。

 騒がれても面倒だ。このまま逃げるか、何かで縛って大人しくさせてから、ゆっくり物色し直すか。目出し帽の男はそんな事を考えながら、何か縛る物はないかと部屋を見渡した。


 男が窓に近い壁際にあった水槽に近付くのを見てホプキンズは慌てた。

「それには触らないでくれ!大事な物なんだ。金ならやるから……」

 ホプキンズはそう言って、財布を取り出そうと慌てて胸の内ポケットに手を差し入れた。

 急な動きに驚いた目出し帽の男が拳銃を向け、銃爪を引く。

 一瞬、驚いた様な顔をしたホプキンズは力無く床に崩れ落ちた。

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