アステリ
「お前が助けてくれたんだってな。感謝する」
息を吹き返した護衛兵はそう言って頭を下げた。気が付いてみれば、その護衛兵は同期の雄だった。
雌ともう一人の護衛を後宮に帰し、俺は体を休める事が出来そうな場所を探した。
「何があった」
俺は近付いて来た後宮の警護の者に事情を説明し、医療班を呼びに言ってもらった。前庭の隅に置いてあるベンチに彼を休ませて訊いた。
「嫌がらせだろう。うちの姫様に勝ち上がって欲しくないのさ」
彼は痛みに顔をしかめて言った。
「他の候補者の手の者か」
「多分、そうだろう」
「殺しまでするのか?」
「……いや、そこまでじゃない。そうであれば俺は斬り殺されていた。多分、姫様に怪我を負わせて、オリンピアに出れなくするとか、そんなところだろう」
「護衛が一人死んでいた」
「本当か?」
「ああ」
「そうか……」
同期の雄は舌打ちをすると痛みに顔を歪めた。
医療班に怪我人の同期を任せ、後宮を離れた俺は急ぎ議場へと戻った。
老ユリイカは決められた時間に遅れた俺を責めなかった。帰路、遅れた理由を説明する俺の話を黙って聞き、ボソリと「面倒事に顔を突っ込みおって」と心底面倒そうに呟いた。
「議会に報告しないで良いのですか」
歩きながら俺はユリイカに尋ねた。
「こういう事は初めてじゃない。お前が助けた次代側も訴えているところだろう。だが、王宮は動かんだろうな」
「何故ですか。聖女王候補が襲われたんですよ」
「犠牲者が出たのは残念だが」
納得がいかない俺に老ユリイカは嗤って触手を振ると、見送る俺に背を向け自室へと消えて行った。




