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アステリ
それから六週間の間、オリンピアの準備が進められた。
俺は老ユリイカの護衛をしながら、暇を見つけてはオリンピアの会場となる広場へと足を運び、工事の様子を眺めた。
監督たちが工兵に触れ合わせた触角を通じて指示を出している。工兵たちの手際は見事で、何れも一糸乱れぬ働きを見せていた。
位の低いアステリたちは声帯が発達しておらず、触角を触れ合わせて意思疎通を図る。工兵は主にそういう者たちで構成されるため、大きな現場では指揮する上級官職が複数人配備される事が常だ。
そうした監督官よりも士官学校を出た俺の方が位は上であったが、まだ初陣前の護衛職であったため、こちらから声を掛けでもしなければ、そう気を使われる事はなかった。
老ユリイカを議会に送り届け、午後の休会までの間、暇が出来た俺は何時ものように暇潰しに工事の進捗を見に行った。
現場に近付くにつれ、怒号と剣撃が聴こえてくる。
何事かと音のする方へ駆け寄る。広場へと続く道を曲がり視界が開けてくると、二人を囲んで数人が触手を剣に変えて襲っているのが見えた。
状況は理解出来ないが、襲われてる二人の内、一人が雌であることが背格好で判る。俺は触手を戦斧に変えて走った。




