プロローグ
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私は窓の外の見慣れた宇宙空間を見つめ、溜め息を吐いた。妻に先立たれてからというもの、生活に色が失われてしまったようだ。
私は手にしたカフェを口に運び、一口啜った。
仕事の合間の趣味として買ったものがある。登録名には妻の名を入れていた。UKI-1097。妻が亡くなってしまったので手付かずなままのそれは、AIに任せて放置しっぱなしだった。
朝食には遅いブランチの様な疎かな数粒のビタミン剤と加工乳を摂っていた時、ふと、それの存在を思い出す。そういえば、長いこと手付かずだったが、どうなっただろう。私は食卓から腰を上げ、レクリエーションルームへと足を向けた。
プラネタリウムのモニターには赤や黄色のランプが点灯し、UKI-1097の青みがかった球体の全貌を映し出していた。
モニターから延びるコンソールにはタッチパネルがある台座が接続され、その脇にもいくつかの端子が絡まりながら微かに埃の積もった床に乱雑に投げ出されていた。
私はコントローラの電源を起ち上げ、パネルに指を伸ばす。パネルはまるでパチパチと雷が鳴るように青白く明滅し、ブーンという微かな起動音と共に操作可能を示す∆のマークを点灯させた。
忘れかけていた、それでもいくつかのコードを入力し終え、久しぶりにワールドを開いた。操作パネルの右側の空間に生まれたワープホールを潜る。ジワジワと一瞬の感覚をもって身体を構成する要素の一つ一つが彼の世界へと組み直されていく。
やがて意識が遠のいていった。




