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3.


 俺の高校は、自分の名前が書ければ誰でも入学できる県内有数の馬鹿高校だと言われている。そんな荒み切った場所に、突如として転校生が現れた。その転校生の周りには、股間だけで物事を思考する(さか)りのついたオスザル共が集まっていた。彼女は、この高校には場違いなほどの美貌を持っている。


 さらさらとした長い黒髪、ぱっちりとした二重瞼(ふたえまぶた)と大きな瞳、小さな鼻。口角を少し上げ、常に薄っすらと笑みを浮かべる。その表情からは、自らが美しく可愛らしいと自覚した余裕が溢れんばかりに(かも)し出されていた。


 転校生と群がる男子生徒を、遠くから見る女子生徒たち。その視線には、転校生への敵意と男子生徒への(さげす)みが込められている。だが女が蔑む性欲に支配された男たちと同じくらい、自分より優れた女への嫉妬心も気色悪いものだと俺は思う。


「あは、私って何だか……お姫様みたい」

 転校生が上ずった声で言った。彼女と俺の席は離れているが、教室全員に聞こえるように言ったから、俺の耳にも届いた。明らかに他の女子生徒への口撃。転校生に対する俺の同情心は吹き飛んだ。



「ごめんなさいっ! 許してくださいっ!」

 人気(ひとけ)のない路地裏で一人の男が叫ぶ。全身を震わせ、これから受けるであろう折檻への恐怖に支配されている。俺たちはそんな男の懇願を打ち砕くように、ゆっくりと近づく。


「ヒデオ、リョウ。頭と身体を押さえて」

 俺は二人に指示を出す。胸から背中、手首にかけてトライバルタトゥーがびっしりと彫られたタンクトップ姿のヒデオが、震える男を荒々しく羽交い絞めにした。

「俺一人で充分だわ。リョウは周りの警戒しとけ」

 ヒデオは体格に恵まれている。その見た目だけで、大抵の人間は怯む。男は抵抗が無駄だと悟り、目を閉じて(うつむ)いた。


「名瀬ちゃん、手に持ってる、それ何よ」

 鼻、唇、眉――顔面の至る所にゴテゴテとしたピアスを装着しているリョウ。彼はそう言い、爬虫類のような二股に分かれた舌を見せながら、顔を近づける。


「ホチキス。見りゃあ分かるだろ、リョウ」

 芯が出ない程度に軽くカチカチと先端を動かし、ホチキスをリョウへ見せつけた。

「あー、つか、そんなのどっから持ってきたん?」

「学校の教室。じゃあ暴れないようにしとけ、ヒデオ」

「おう」

 間髪入れず男の鼻先をホチキスで挟み、パチンと思い切り閉じた。芯が刺さる程度の僅かな痛みだが、男は耳をつんざく甲高い悲鳴を上げる。ヒデオとリョウはニヤニヤと眺めながら、俺の顔を見る。


「無料ピアッシングサービス。リョウみたいにしてやるよ」

 俺は軽快に手を動かす。男の小鼻へ左右対称に芯を打ち込む。それから両耳、両瞼、(あご)と、パチンパチンと作業的に進める。俺に躊躇(ためら)いはない。ホチキスが閉じるたびに男は身体をビクンと跳ね上がらせ、一定のトーンで悲鳴を上げ続ける。変わった楽器みたいで面白い。


「ひゃひゃ、おもしれー! やっぱ高校に通ってる高学歴は発想が違うぜ!」

 リョウが手を叩いて笑った。興奮のあまり身体を左右に揺らしている。その姿はまるでチンパンジーみたいだと、俺は思った。

「いいねえ、この制裁。派手な傷跡も残らねえし」

 一方、ヒデオは感心したように頷いている。


「芯が無くなるまで打ち込み続けるからな。頑張れよ」

 俺のその言葉に、男はブルブルと震えていた。情けない。返しに遭う覚悟もないなら、不良連中なんかとつるむべきじゃない。自業自得だ。この男への同情心なんて俺には存在しない。


「名瀬ちゃん、もう顔は打てるとこ無くねー?」

「じゃあ次は身体。ヒデオ、こいつのシャツ脱がせろ」

「了解。暴れるともっと痛いぞ。名瀬の手元が狂って眼球に直撃するかもな」

 そう言うとヒデオは力尽くで男のシャツを引き千切った。うっすらと脂肪の乗った上半身が(あら)わになる。俺は左右の乳首を順番にホチキスで挟み、芯を打ち込んだ。


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