17.
あの日の前後、俺の身に何が起きていたのかは分からない。中学校から帰宅すると、母親とその交際相手がゴミだらけの居間でセックスしていた。交際相手は母親に覆いかぶさるようにして、腰を激しく揺らしている。帰ってきた俺に気づいていただろうが、二人とも気にしていない。俺は家でも学校でも人間扱いされていなかった。
そして行為に夢中になっている交際相手の男の背後に近づき、後頭部を思い切り殴った。本当に思い切り――今まで人生で受けた辱めや苦しみ、痛みのありったけを全部乗せて殴った。母親に覆いかぶさる交際相手の上に馬乗りになった。男二人分の体重をその身に受けた母親の顔は歪んでいた。その男を殴り続けた。男が気絶すると、次はその下で苦しむ女をありったけ殴った。殴って殴って、殴りつけた。
その男と、その女の手足を縛った。家にあった衣服を使って縛り上げた。そして苦しみを与えた。無理やり水を飲ませて、飲ませて、飲ませて――パンパンに膨らんだ腹を蹴り上げたり。俺がされたことを、お返ししてやろうって。あらゆる苦しみを与えて、その日から虐待を受けなくなった。
翌日、日常的に俺へ暴力を振るっていた不良生徒を放課後に呼び出して半殺しにした。本当にタガが外れた暴力を味わわせてやった。治安の悪い地域だ。俺に暴力を振るった不良生徒は一人や二人じゃない。ある日、俺はリンチを受けて気絶した、だがそれでいい。次会った時にやり返せばいい。俺のタガは外れていた。物心ついた時から痛みに慣れている俺は、普通じゃない。殴り合いで怯むことなんてない。出血しても構わない。ガキの喧嘩なんて生易しいものにはしない。
暴力には動じない。暴力では脅されない。俺は生まれた時から死んでいるとあの日、気付いたから。ならばもう怖いものなんてない。生き物として、死を超える恐怖はない――ならば怖いものなんてない。
俺は暴力で暴力を克服した。痛みで痛みを克服した。ただ死ぬくらいなら殺してやる。俺が弱い個体を排除してやる。本能に従う獣のように。
罪を犯した者には俺が罰を与えてやる。虐めを受け続けた俺は、残酷なやり方を熟知している。目に物見せてやる。母親なんて、もう怖くない。暴力になんて、もう怯えない。俺にトラウマは無い。




