星の涙
夜空にひときわ輝く星があった。それは宙を駆ける魔法少女、星野光莉とその相棒の流星の姿だった。
光莉は普通の中学生。学校では友達と笑い合い、宿題に追われ、家では母親におやつをもらって、普通の生活を送っていた。でも、夜になると、光莉は別の顔を持っていた。彼女は、悪しき魔物から街を守る魔法少女だった。
「光莉ちゃん、また魔法少女の役目に行くの? あなたはまだ中学生なのよ!」
お母さんが心配そうに言った。
「大丈夫だよ! 明日にはちゃんと帰るから!」
光莉は笑顔で答え、家を飛び出した。
空を見上げると、星がひときわ輝いている。その星が、光莉に語りかけるように輝いた。
「敵はすぐそこまで迫っているよ! 光莉、魔法を紡ぐんだ!」
その声に反応するように、光莉は瞬時に魔法の杖を取り出し、空に向かって呪文を唱えた。
「星の力よ、今ここに集いしすべてを守りし光よ、私に力を貸しなさい!」
魔法の光が光莉を包み込んだ。杖が光り、彼女の体を輝かせながら、どこからともなく現れた魔物を迎え撃った。その魔物は、街の人々の幸福を奪おうとする闇の存在だった。
光莉は空中でひと跳びして、魔物の頭上に立つ。その杖を振り下ろすと、光の矢が放たれ、魔物を貫いた。
「これで終わりだね!」
光莉は息を切らしながらも、微笑んだ。
だが、その時、ふと胸にひとつの違和感が走った。どこか遠くから、悲しい音が聞こえてくる。光莉は耳をすませると、それが相棒の流星からの信号であることに気づいた。
「流星……?」
「光莉、お願い……すぐに戻ってきて……!」
光莉は急いでその場を離れ、流星の元へ向かう。途中、どこか寂しげに輝く流星の姿が見えてきた。流星は、光莉が助けるべき魔法の精霊、星の精であり、彼女の力の源でもあった。
「流星、どうしたの?」
「光莉……私はもう、長くない……」
流星は涙を流すように、星の光を放った。
「私の役目は、あなたを守ること。そして、あなたの力を支えること。でも、私もついにその時が来た……」
光莉は驚き、そして恐怖を感じた。
「そんな……だめ、お願い、流星、私にはまだあなたが必要だよ!」
流星は静かに微笑んだ。
「光莉、あなたはもう私がいなくても大丈夫。私がいなくても、あなたの心の中には、永遠に星の光が輝いているから」
流星は最後の光を放ち、光莉の目の前で輝きを増して消えていった。光莉はその光が消えるまで、ただただ見つめていた。
しばらくその場に立ち尽くした後、光莉は静かに目を閉じた。そして、ゆっくりと目を開けた。
「ありがとう、流星。あなたのおかげで、私は強くなれた。これからも私は、あなたの意志を引き継いで、みんなを守るよ。」
その瞬間、光莉の胸に温かい光が満ちていった。流星の力は、確かに彼女の中に残っていた。
「星の力よ、私に授けられし全ての光を、今ここに広げて!」
光莉の魔法が、かつて流星と一緒に放ったあの輝きに似たものとなり、街の上空を美しく照らした。悪しき魔物はそこにひれ伏し、光莉は再び街を守り続ける決意を固めた。
光莉は一度深呼吸をし、空を見上げた。流星はもういない。しかし、彼女は確かにその光を胸に抱き、歩み続けることを誓った。
「ありがとう、流星。私は絶対に、あなたを忘れないから」
光莉は夜空に向かって微笑んだ。その微笑みは、星空のように、どこまでも輝いていた。




