君を愛する事はない〜私はどうすれば良いのでしょう〜
下品です。
結婚式が終わった日の夜。夫婦として過す最初の夜。つまりは初夜。私は夫婦の寝室で夜着を纏い、少しの緊張感と共に夫を待っています。
「……どうぞ。」
暫くして、ドアがノックされたので、私はドアの向こうへ声を掛けました。ガチャリと言う音と共に予想通り夫が入室してきました。
「?」
私が首を傾げてしまったのは、夫は夜着ではなく、昼間に着用する様な普段着を身に纏っていたからです。
「済まない。」
そんな私に夫は、ドアを閉め、私が腰掛けている寝台に近付き、しかし寝台に上がる事はなく、立ったままで頭を下げました。嫌な予感が首を擡げます。
「私が君を愛する事はない。愛する事が出来ないんだ。」
予感を裏打ちする言葉でした。まるで巷で流行っているクズ夫ザマアの小説の冒頭シーンの様でした。……頭をきちんと下げている分、まだ善良なのかもしれませんが。
「……私と貴方の婚姻理由はご存知ですよね?」
小説では「婚姻の重大な理由をクズが把握していなかった」等と言う展開が有りましたので、確認をしておく事にします。
「勿論だ。私達の間に子供は要らないだろう。」
確かにそうです。私達は完全なる政略です。国家事業の為に結ばれた婚姻……。急な話だった為に相性を確かめる事も無いままに結ばれました。
私達は成人を迎えていたので、婚姻となり、この政略の要になりましたが、他にも付随して結ばれた方々が居ます。未成年なので未だ婚約ですが。その方々の婚約は事業の進捗程度では解消しても構わないものです。何せ場合によっては結ばれていた婚約を解消しての方もいらっしゃるので。
私達の場合は婚約ではなく、婚姻ですので簡単には行きませんが、事業が終わっても白い婚姻ならば離縁は可能でしょう。
但しその時の年齡を考えると、女の私は再婚が難しいと言わざる得ません。醜聞では有りますし。
補償が必要になりますわね。
しかし条件を私1人では決められません。確かに国家事業の為とは言え、貴族家同士の契約です。お父様に報告と相談が必要ですわ。
そしてそれには旦那様の事情を聞いて置かねばなりません。十中八九、愛人関係だと思いますが……、決め付けて動いて失敗☆等とする訳には行きません。
「理由を伺っても?」
「勿論だ。」
頷くと旦那様はお腹辺りに両手を持って行きます。
「最初に言っておく。君を襲う事は無い。」
「は?」
意味が分からない私の前で両手はベルトを外していました。
「!!!???」
そして白い婚姻を口にした旦那様はそのまま下着ごと衣類を……!!!
「な、な、な!!!???」
閨教育は受けていますが、実物は見た事も有りません。そもそもこんな見せられ方を想定していません!!
「見てくれ!! これが私なんだ!!」
見たくない!!!
「コレで普通なんだ!!」
見たくないと言ってるではありませんかっ!!←言ってない。心で絶叫してるだけ。
「コレでは君を愛せない!!!」
だから見たくないと言ってるでしょうっ!!??←言ってない。心で絶叫してるだけ。
「コレでは君を殺してしまうっ!!!」
だから見たくないと……、え? 殺す!?
私は物騒な言葉に漸く背けていた顔を戻し、きつく閉じてしまっていた目を恐る恐る開きました。
……線が細く、身長も私とそう変わらず、可愛……、コホン、少し童顔だけど柔らかで端正な顔立ちをした夫と私は共に18才。……で、コレは……、そ、想定外なんですが……。
令嬢の受ける淑女教育の一貫には閨教育があります。その際、男性の象徴の模型を見せられます。大きさは人其々で、決して体格と比例する訳ではないと聞いてますが……、それでもどう言う事ですか!!?
模型(大)より遥かに大きいではないですか!? こんな愛らしい殿方が何故!!??
「分かるだろう!? こんなにデカいんだ、君を壊してしまうっ!! 実際、閨教育の実施でプロ中のプロな娼婦を呼んだら、顔色変えられて……! それでもプライドから引き受けてくれたけど、先端だけで膣破壊仕掛けて医者を呼ぶ羽目に……!! 以降、全く閨教育が進んでないんだ〜っ!!!」
ベテラン娼婦でも!? ……確かに私では死んでしまうかもしれません……。国家事業の為の婚姻で要になる私が初夜で死亡(腹上死になるのかしら?)……。確かに何よりも避けるべきでしょう。
でも……、私、コレをどうお父様に相談すれば………?
私は途方に暮れるしかありませんでしたーー……。
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