表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第2話 初めての業

 明くる日、、、早速、正義の「能力」が日の目を見る。


 塾帰りの午後22時過ぎ、、、正義は昨夜と同じ道を歩いていた。


 物憂げに、昨日のコンビニへと目を向ける。


 (また火の玉が飛び出してきたししないだろうな・・・)


 もちろん、二夜も続けてそんなことなど起こっても、、、とは思うのだが。



 そのときだ。


 「おらぁ!!どけどけっ!!」


 歩道白線内を歩く正義の真横を、暴走する複数のバイクや原付が通り過ぎる。


 「あ、あぶねぇなっ!」


 次の瞬間、正義の眼に力が宿る。そして、


 「ドゴォォンッ!!」


 「えっ?」


 正義の数十メートル先で、、、バイクは炎上した。


 《マサヨシ、、、この場を離れろ。テレポートしろ》


 「、、、ランド?」


 考える間もなく、正義はランドの指示通りした。



 靴を履いたまま、、、自室で呆然と立ち尽くす正義に、


 《どうした、、、?履き物がそのままだぞ》


 「、、、そ、そんなことより・・・ランド」


 《なんだ?》


 「、、、死んだ?」


 《なにがだ?》


 「さっきのバイク・・・」


 《ああ、、、死んだ》


 正義は膝を落とした。



 正義が初めて能力を世界のためにおとした瞬間、、、そして初めて人を殺めた瞬間でもあった。



 《どうしたのだ?》


 「どうもこうも、、、人を殺したんだぞ!?」


 手の震えが、、、止まらない。


 《だからなんだ?》


 「なんだ、って・・・人を殺したんだぞっ!!間違いなく俺のせいだっ!おまえがくれた力を、、、使ったんだ!」


 《、、、わかるように言え。だからどうだというのだ?》


 ランドの妙な落ち着きに、、、正義は少し冷静さを取り戻すも、


 「俺は、、、人殺しだ」


 冷静さが戻った分、己の所業も理解した。確かに正義は「殺人」を犯した。


 《だからだ、それがどうしたのだと言ってる。まぁ、言わんとすることはわかってきたがな》


 「やっとわかったってか!?どうすんだよっ?俺は警察に・・・」


 《捕まるはずかなろう、、、私の知る限り、お前たち「人」の世ではそれには「証拠」が必要なはず」


 「証拠・・・?」


 正義は回想した。暴走バイクをめがけてサイコキネシスを放った直後、ランドの指示でここに移動した。


 客観的に考えれば、、、仮に「目撃証言」が現れてもサイコキネシスのほうは、、、立証のしようがない。


 《一応、母親に姿を見せておけ。事件からまだ5分ほどだ。あの場からここまではそう早くは帰れん》


 その夜のうちに、事件はメディアで取り上げられた。


 『暴走バイク3台が炎上、死者5人』


 原因は調査の結果、故障によるガソリンへの引火、とされた。


 その結果に安堵するも、、、正義の心は晴れなかった。なにせ人を殺めたのだ。


 数日、、、正義は「能力」を使うことはなかった。



 《どうした?覇気がないな》


 また、ランドも数日ぶりに現れた。


 「覇気なんか、もともとねぇよ」


 《たしかにそうだな。だからこそ、お前の『正義』に力添えすべく能力を授けた》


 「、、、なんでさ?」

 

 《わたしはお前の『正義』に賭けたのだ》


 「賭けたって、、、なにを?」


 《世界の命運を、だ》


 「、、、随分とでけぇな」


 《まぁ聞け、、、数日前の事故のときも、私が子供たちに火をかけられたときも、確かにお前のなかには『正義』の心が宿っていた》


 「、、、よくわからんが、なんていうか、、、『憤った』のは確かだな」


 《言葉はどうでもよい。とにかく、お前のように考えるものが少なくなった。そして、お前のように思えども言動には移さないものが大半、、、それがお前たち「人」だ》


 「、、、それは・・・返す言葉がないな」


 《それはよい。出来ることと出来ぬことはある。だからこそ、出来るお前がやれ》


 「、、、なにを?」


 《さっきも言ったはず、、、言葉はどうでもよい。「正義」でも「世直し」でも、好きな言葉を選べばよい》


 「、、、今度はランドが茶化すのかよ」


 《ふふふっ、、、つまりそういうことだ。もう一度言う、『ここに従え』とな》



 「しかし、、、また人を殺せ、ってのか?」


 《必要とあらば、な》


 「軽く言うよな、、、殺人だぜ?」


 《そこだ、、、それが何だというのだ?お前たちは平素、何食わぬ顔で『殺生』を繰り返しておるではないか》


 「、、、殺生?」


 《つまりだ、牛や豚、虫は平気で殺しても、人を殺すのは躊躇うのか、と言っている》


 「そ、そりゃ、、、躊躇うさ」


 《なぜだ?》


 「な、なぜ・・・って」


 《なぜ、他の生き物なら平気で殺せる?》


 ランドは続ける。


 《更に問うぞ、、、どちらが『悪辣』だ?他の生き物とおまえたち「人」は?》


 正義には、、、返す答えがなかった。


 《そういうことだ。わたしには「人」を殺すことを躊躇うおまえの気持ちのほうがわからんよ》


 《わたしには「人」を殺すことを躊躇うおまえの気持ちのほうがわからんよ》


 正義には、ランドの言葉が妙に得心がいった。


 確かに、、、これまで虫など殺すのに躊躇した覚えはない。しかし、、、暴走バイクの運転者を殺めたことに激しく動揺した。


 恐らく、それはそれでおかしいことではないのだろう。なにせ人を殺したのだ。




 そんなことを考えつつ登校してみると、、、何やら教室の様子がおかしい。


 「ん?なんかあったの?」


 「あ、真中くん、、、木村君が、、、」


 クラスメイトが名を挙げた木村の席のほうを見る、、、


 「、、、花?」


 聞くところによると、、、昨夜、同じクラスの木村は、自ら命を絶ったらしい。



 俺たちは緊急全校集会の名目で体育館に集められた。


 言葉を濁しながらではあるが、どうも木村の自殺原因は「いじめ」らしい。


 となると、俺たちクラスメイトには「加害者」もわかる。



 当事者たちは無論、全校集会の場にはおらず、「事情聴取」のため生徒指導室に集められていた。


 とはいえ、17歳の高校生にさしたる処罰もなく、せめてもの学校側が下した「停学処分」も、こともあろうか当事者の保護者どもの抗議で取り消しとなった。


 「確固たる証拠もなしに、『停学』の処分は重すぎる」


 と。


 ランドではないが、言葉がよくわからん、、、ひと一人を自殺に追い込んでおいて、「停学」は軽すぎるのでは、と思うのだが。



 「、、、というわけだ、ランド」


 俺はその夜、事の次第をランドに話した。


 《、、、それで?》


 「改めて、『それで?』と言われても、、、なんだが」


 《いや、マサヨシの言わんとすることがわからんのではない。それでお前はどうするつもりなのだ、と尋ねておる》


 「、、、ここが『力』の使いどころのような気もするが、、、あいつらを殺したら俺も同罪だ」


 《それは違うな。間違っておるぞ》


 俺は、、、ランドの言葉の続きに注視する。


 《マサヨシ、、、お前はその子がいじめられているのを知っていて、なぜ助けなかった?》


 「、、、そう言われてもな。『力』を貰う前のことだし」


 《では『力』がある今、なぜ行動を起こさない?》


 「と言っても、、、もう木村は死んじまったし」


 《そうではない。第二、第三の木村君が出ることは想定しないのか・・・》



 俺の気持ちに「切り」をつけるのに、、、ランドの言葉は十分であった。



 次の日、、、俺たちの学校では連日の緊急全校集会があった。


 木村をいじめていた加害者は三人いたが、、、俺は主犯格のみを裁いた。


 無論、残りの二人が心を改めないのであれば同様に裁きを下すつもりではある。



 俺は、、、暴走族を殺めたときほどは苦痛を感じなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ