プロローグ7 【9月19日/部活見学2日目】1/日中の出来事
1日目の【部活見学】も終えて、【芳一】は起床した。
今日は金曜日だ。
彼は月曜日から金曜日まで【アルバイト】をしている(平日に祝日がある場合は土曜日も出勤)。
だから、今日も出勤だ。【バイト先】は彼の【アパート】から徒歩で15分と言ったところだ。
彼の兄、【徳太】の家からは更に近く、【バイト先】から歩いて5分の距離に彼の自宅(三階建て一軒家)はある。
この家に【芳一】は一緒に住まないかと誘われているが、兄にも家族が居るのでちょっと躊躇している。
【芳一】と【徳太】には姉が一人居て、姉の【遼子】は結婚して彼等の母親とも暮らしている。
父親は既に他界している。
【遼子】の家には空きが無く、【芳一】に助け船を出せる家族は【徳太】だけだった。
だが、今は少し、【徳太】の家に世話になっても良いかなと思うようになっていた。
昨夜の【夢の異世界】の体験で、少し前向きに生きてみようと思うようになったのだ。
人との触れ合いを求めていて、独身貴族だった彼は兄との共同生活を考える様になっていた。
だから、朝一で兄に電話して、生活の事で相談したいと伝えたのだった。
その後、【バイト先】に出勤した。
始まるのは8時からだが、彼は30分前に出勤して、仕事の準備をしていた。
始まるまでの余った時間は【小説】のネタを考えて【メモ】を取ったり、仲良くなった同僚達と話をしたりして過ごした。
そして、7時55分からラジオ体操が始まり、彼は多くの同僚がやらないのにも関わらず、ちゃんとラジオ体操をしていた。
彼の持論は【身体】は【資本】であり、【健康】な身体でないと何もできないと言う考えを持っていた。
だから、人がやらなかったとしても彼は必要だと思ったら、何でもやるタイプだった。
ラジオ体操もその一つである。
同僚達からは、
「【芳一君】は真面目だねぇ」
「まともにやってるのお前だけだよ」
「続くねぇ」
などと言われることもあるが、
「こういうのはコツコツやるのが大事だから」
と答えてやり続けていた。
【芳一】は人と違う事、他人と一緒じゃない事を全く恐れないタイプなのだ。
人と違うからこそ、人も驚く発想がポンポン浮かぶのだ。
人と同じ事をしていたらそう言う発想はほとんど出てこない。
それが本能的に解っているのだ。
だから、それが他人との衝突の元でも止めない。
自分の我を通すのだ。
そんな彼は最初の内は反発もあったが、次第に彼の実力と共に認められ出して、あいつは変わり者だけど面白くて良い奴だと思われる様になっていった。
それは困っている同僚を手伝う事も率先してやる事も影響していた。
困っている時の【唯野君】と言われるまでになっていて、彼よりも年上の【同僚】も彼を【生き字引】の様に思って、相談する事も多かった。
彼は様々な社会経験を今まで積んでいて、話題も豊富だし、面白いエピソードも色々あった。
だから、自然と、人が集まる様になって行ったのであった。
そんな彼の仕事は【検品】と言う仕事だ。
本を発送するためにベルトコンベアに発送者達が本を積んでいく。
それは人がやるものだから当然ミスも出る。
【芳一】はそのミスをチェックして、不足していたり、間違った本を正しく揃え直す仕事をしていた。
彼の仕事は正確でしかも早く、【バイト先】の【上司達】も一目を置いていた。
彼が本当に一つの事に集中したら、誰よりも優秀なのは、明かだった。
【上司達】には、
「一日という事で勤務しないか?」
と言われているのだが、彼は、
「いえ、せっかくの申し出ですが、【創作活動】がありますので、申し訳ありませんが、半日でお願いします」
と断っていた。
通常であれば、そんなバイトなどいらないと言われるのが普通だが、彼は、よく仕事をさぼったり休んだりする人達のカバーに入ったり、一人で何カ所も受け持ったり、人の倍以上働く事もあったので、彼がクビになることは無かった。
それよりも如何に彼が出勤している間に彼に仕事を回すかを重視したのだった。
【芳一】はそれだけ有能な【バイト】だった。
【バイト】では【定位置】以外にも引く手あまたであり、彼の取り合いがあるくらいだった。
そんな訳で、決して高くは無い【アルバイト】だが、人に恵まれており、彼はちょっとした幸運を感じていたりもする。
彼が自殺を踏みとどまった理由の多くはこの【バイト先】の同僚達が良くしてくれた事も大きな要因と言えるだろう。
そんな【バイト】では、仲の良い【同僚達】と何気ない【雑談】などをして、半日の勤務を終えた。
その後は自宅に戻り、【執筆活動】をする事になる。
が、今日の所は、【今夜】寝る時に見学する【夢の異世界】での【部活】を何処にするか?を考える事にした。
昨日は【文芸部】だったが、今日は違う【部活】を体験する事になる。
寝てから考えると言う手もあるが、今からある程度、絞っておかないと、【見学】する時間が減ってしまう。
だから、寝る前に大体、何処の部活にするか決めておこうと思ったのだ。
【部活】は昨日の【文芸部】の様に、実際の学校でも存在する【部活】もあれば、【ファンタジー世界体験部】や【SF世界体験部】の様に、実際にはあり得ない【部活】もある。
なので、7夜の【部活見学】の内、2、3回くらいは実際には無い【部活】を体験してみようと考えていた。
つまり、【第2夜】となる今夜は、そう言った【部活】を選択してみようと思っていた。
選んでも実際には活動して居なかったら意味がないので、昨日見た【リスト】で【数字】の大きかった、参加人数の多い【部活】の中から選ぶ事にした。
【芳一】は昨日の記憶を思いだそうとする。
が、当然、全部は思い出せない。
ある程度の【部活名】しか覚えていない。
全部で、200種類前後ほど部活があったと記憶している。
その中で9割近くが【1】から多くても【7】、【8】人くらいの人数だったので、全部足しても1000人行かなかったと思っていた。
意外と少ない様にも思えるが、この【夢の異世界】に行く資格があるのは、頑張ったのに認められずに悔しい思いをしている人に限定されるだろうし、現在寝ている人数だから妥当な数字だと思っている。
そんな中で、【現実に無い部活】として覚えているのは、
【異世界チート部】、【心霊体験部】、【変身部】、【SF世界冒険部】、【ファンタジー世界冒険部】、【巨大ロボット製造部】、【海賊部】、【魔法少女部】、【仮想科学部】、【架空世界部】、【合体部】、【モンスターテイマー部】、【性転換部】の13種類だ。
他にも、5、60種類あった気がしたが、多すぎて記憶に残っていない。
なので、覚えている【部活】がどんな【部活】なのか考えて見ようと思った。
この中から今夜、見学する【部活】を決めるつもりになっていた。
基本的に【部活見学】は7夜あるので、現実にもある【部活】と現実には無い【部活】を交互に見ていこうと考えている。
昨夜は現実にもある【文芸部】だったので、今夜は現実には無い【部活】にしようと思っていた。
【異世界チート部】は、恐らく、【チート能力】を持って、【異世界】を冒険する【部活】
だろう。
【心霊体験部】は、恐らく、【霊】の出る場所などに行って、【心霊現象】を体験する【部活】だと推測される。
【変身部】は、言葉の通り、【変身】する【部活】の事だろう。
ちょっと興味もある。
【SF世界冒険部】は、【サイエンスフィクション】の【世界】を体験するのか【少し不思議】な【世界】を体験するのか解らないが【冒険】をしていく【部活】なのだろう。
【ファンタジー世界冒険部】は、【中世】の様な舞台でドラゴンやフェアリーなどが登場する世界での冒険なのかも知れない。
【巨大ロボット製造部】は、【巨大なロボット】を作る【部活】だと思うが、本当にそんなものが可能なのかちょっと疑問が残る。
【海賊部】は、【海賊】をすると言う事なのだろうか?
犯罪行為では無いのか?
【魔法少女部】は、アニメなどでは【魔法少女】となって町を守ったりする様だが、これもその類だろうか?
【仮想科学部】は、現実の【科学】とは異なる【科学】を使う【部活】かも知れない。
【架空世界部】は、空想の【世界】の【部活】なのか?
【合体部】は、なんだろうか?【合体】と【融合】は意味合いがちょっと違うから、何かと身体が【融合】すると言う事は無いとは思うが。
【モンスターテイマー部】は、【モンスター】を育てるのかも知れないな。
【性転換部】は【異性】に【性転換】すると言う事なのか?
【芳一】は男だから、彼がこの【部】に入ったら、【女性】になるという事なのかも知れない。
この中で無難と言えば、【異世界チート部】だろうか?
一番人気と言っていたし、最初に選ぶとしたらこの【部】だろう。
と言う事で、【芳一】は今夜の【部活見学】は、【異世界チート部】の見学をする事に決めたのだった。