プロローグ5 【9月18日/部活見学1日目】2/学校見学開始
気付くと【河瀬 萌和佳】が待っていた。
【萌和佳】は、
「お待ちしていました【唯野さん】。【学校見学】へようこそ。
それでは、【学校見学】について説明させていただきます」
と言った。
【芳一】が、
「え?他の人は?」
と聞くと【萌和佳】は、
「居ませんよ。同期の方が一緒かどうかをお尋ねしたいのですよね?
ですが、人により、就寝時間は異なりますし、【学校見学】と言っても【部活見学】ですからね。
人によって見たい【部活】も異なります。よって、一緒に行動する事はあり得ません。
私は眠りにつかれた方から順番に案内させていただくだけです」
と言った。
「はぁ、そうなんですか?」
「そうなんですよ。それで本題に入らせていただきますが、貴方はこれから7夜にかけて7カ所の【部活】を見えない状態になって【見学】する事になります。
実際に貴方が【部活】を始める時は誰もやっていない【オリジナルの部活】を選択する事も可能ですが、この7夜だけは存在している【部活】から選んでいただきます。
そうでないとどのような活動をしているか理解出来ないからです。
【インビジブル・サポーター(invisible supporter)/不可視の支持者】と言うアイテムをお渡ししますので、質問などはそれに対してしてください。
自動で、回答するはずです。
それでは既存の【部活リスト】はこれになります。
これは現在、【対象者】が就寝中であり、【部活】が行われている【リスト】になりますので、誰も【就寝】していない【部活】はリストアップされておりませんのでご注意下さい。この中から今日の分を選んで下さい」
「はぁ、この中からですか?」
「はい。選んだ時点でその【部活】に移動します。
では私は次の方の案内をしなくてはなりませんのでこれで失礼します」
と言う話になり、また、【萌和佳】は立ち去ったのだった。
忙しない人だなと思いつつ、【芳一】は【リスト】を確認する。
すると、この【リスト】、不思議な事に、【部活】の名前が新たに出て来たり、消えたりする。
恐らくは出て来た【部活】は対象者が、【眠り】について【部活】が開始されたのだろう。
そして、消えた【部活】は対象者が【起床】したと言う事を意味しているのだろう。
だとすれば、気をつけて選ばないと、見学に行った【部活】がすぐに終わってしまうと言う事も考えられる。
それと【部活名】の横にある【数字】も気になる所だ。
これは推測だが、これも数字が増えたり減ったりしているので、【部活】の参加者を示しているのでは無いだろうか?
現に、消えた【部活】の横の数字は【1】で、【0】と記された時点で消えていたし、増えた【部活】の横の数字も【1】がほとんどだからだ。
と言う事は数字の大きい【部活】は途中で消える可能性が少ないと言う事が理解出来た。
そう言う条件なら【見学】しやすいと言う事になる。
後はどんな部活にするかだが、彼は自分が小学生だった頃の【部活】を思い出した。
【小学4年生】の時は確か、【卓球部】だったはずだ。
【野球部】や【サッカー部】と言う選択肢もあったが、彼は【少年野球チーム】に入っていたし、【サッカー】は近くに【グラウンド】があったので、そこでよくやっていたため、あえて、全く経験の無かった【卓球部】に入ったのを思い出した。
人差し指を引っかけて握るタイプの【ペンホルダーラケット】から初めて両面で使える【シェークハンドラケット】が欲しくて親に買ってもらった思い出がある。
ちなみに【小学5年生】と【小学6年生】の時は【料理部】だった。
ほとんど女子ばかりで男子も何人か居たが、2年連続で【料理部】になったのは彼だけだった。
料理の部活なのに【料理】はほとんどせず、もっぱら、【試食】や【食べる専門】で女子の部員によく怒られていたのを思い出した。
彼は、子供の頃は結構やんちゃだったのだ。
そんな事を思い出しながら、彼は【部活】の【リスト】を一通り見ていく。
見ていくとやはり、普通の【部活】だけでなく、何だこの【部活】は?と首を傾げる様な【部活】も混じっている。
【萌和佳】が一番人気と言っていた【異世界チート部】と言うのも確かにあった。
だが、彼が求めているのはこういう【部活】ではない。
自分の【夢】を叶えるための【部活】である。
【異世界チート部】も自分の【キャリア】を高めるためには必要な事かも知れないが、1年以上続ける気持ちにはなかなかならない。
だが、どういうものかを見る上では非常に興味がある【部活】である事は確かだ。
通常の【部活】とどう違うのか比較して見る必要があると判断した。
まず、一日目は普通の【部活】を見学して、二日目はこういう、【通常の部活】とは異なる【部活】を選択して比べてみようと言う事になった。
よって一日目は、【通常】の【部活】を見学する事にした。
彼が選んだのは、【文芸部】だった。
やはり、【小説家】として活動している彼が選ぶべき第一候補はここしかないと思って選んだ。
【数字】を見ると【4】と書かれているので、現在、4人が【活動】しているのだろう。
それを見学させてもらう事にした。
【文芸部】に決めた途端に、【芳一】は【文芸部】の【部室】に移動した。
見ると、現実にある【文芸部】とどこか違和感があった。
どう違うかと言えばまずは、【文芸部】の【部室】は、まるで【競技場】の様に大きかった。
中央にコミュニケーションを行うのに必要だと思われる会議室の様に机と椅子が並んだ場所があるが、そこには誰も座っておらず、【部室】の周りにあるたくさんの【個室】にこもり、各々黙々と【執筆】を続けていた。
思っていたよりもずっと地味な光景だった。
もっと和気藹々とやっているものだと思っていたが、違っていた。
試しに空いている個室を覗いて見てみると、机と椅子と、両サイドの妙な空きスペースがあった。
【芳一】は、
「あの、質問、良いですか?」
と言った。
すると、【インビジブル・サポーター】が、
『はい、なんでございましょう【唯野 芳一様】』
と答えた。
【芳一】は、
「あの、この机と椅子の両サイドにある妙な空きスペースはなんですか?」
と質問した。
『それは、参考資料などやパソコンなどが召喚されるスペースとなっております。
部員の方が欲しいものが出る仕組みになっております。
防音にもなっておりますので、他人の目や声を気にする事無く、執筆活動をする事が出来る様になっております』
「へぇ、そうなんだ?じゃあ、その執筆活動をしている人の見学って出来るのかな?」
『申し訳ありませんが、【アイディア】に関する事なので出来ません。
代わりに、貴方様も擬似的に、この個室を使う事が出来ます。
残念ながら、ここで創作したものは部員の方と異なり、保存が出来ませんが、体験する事は出来ます。
体験、されますか?』
「そうだな、ちょっとやってみるか」
【芳一】は、少し触ってみることにしたのだった。