プロローグ34 【9月24日/部活見学7日目】2/久しぶりに会いませんか?2
【アルバイト】もいつもの様に終えると、彼はその足でアパートに戻り、軽くシャワーを浴びて、汗と汚れを落とすと、その足で、昔の同僚の【上城 裕治さん】60歳と会うために、待ち合わせ場所の【大宮駅】に行くために埼京線に乗る事にした。
ちょっと遠いが最寄り駅として使っている【駅】は快速が止まらない。
そのため待ち時間がちょっとかかる。
ちなみに、その【駅】の前にある【大きな公園】は、絡んできた高校生【大門 隼人】と【弁当】を食べた場所である。
【芳一】は【アパート】から持ってきた【上城さん】に見せる【書類】をチェックした。
実は、【悪徳出版社】とのやりとりでケチが付いた【ちょいちょいちょいな】と言う【ペンネーム】を変更しようと思っている【芳一】は、本名の【唯野 芳一】の【アナグラム】で【たのだ いほうち】として、それに当て字を加えて作った【頼田 異放置】とした新しい【ペンネーム】として【再出発】をしようと考えている。
【ちょいちょいちょいな】の方は【ホームページ】や【ブログ】などでは、長い間、使用していたので、【ハンドルネーム】としてそのまま使用し、【本】を出す時は、新しい【ペンネーム】/【頼田 異放置】を使用すると言う事に決めていた。
今日は同じ、【クリエーター】仲間として、【漫画】を出版した事もある【上城さん】の意見を聞こうと思っていた。
【ちょいちょいちょいな】としては【幽霊】を【キャラクター化】させたものを【自画像】代わりに使っていたが、【頼田 異放置】として、【男性キャラ】と【童女キャラ】と【オリジナルモンスターゆるキャラ】の三竦みとして【使用】しようと考えている。
3つの【キャラクター】を使っているのは、それぞれ【小説】、【漫画/イラスト】、【アニメーション】の作業もやっていると言う事を【表現】しているとしている。
とりあえず、ささっと【ラフ】だけ描いておいたので、どうでしょうか?と聞いてみたいと考えている。
と言う訳で、一通り、【上城さん】に見せる【書類】が全部揃っているのを確認したら、電車を少し待っていた。
昼間の東京から埼玉への下り電車ということもあり、電車の中は空いている。
【芳一】は電車に乗り込み、車内を確認する。
隣の席には母親らしき若い女性とその子供が座っている。
子供ははしゃいでおり、その手が【芳一】に当たった。
母親は、
「すみません」
と謝った。
【芳一】は、
「あ、いえ。気にしないで下さい」
と声をかけた。
すると、子供が、
「お兄ちゃんそれなぁに?」
と聞いてきた。母親が、
「こらっ、【慎二】」
と注意する。度重なる【芳一】への失礼に立場が無いと言う心境なのだろう。
【芳一】は、
「良いんですよ。坊や、これが気になるのかい?」
と言った。
「うん。なぁにそれっ?」
「これはね、お兄ちゃんが作った【キャラクターグッズ】ってやつだよ。
【人】に見せるつもりで持ってきたんですけど、【鞄】からはみ出てたみたいだね?」
「へぇ~、お兄ちゃんが作ったんだぁ~?良いなぁ~、可愛いなぁ~」
「良かったら貰ってくれるかい?これはまた作れば良いから、坊やが欲しかったらあげるよ」
「良いの?やったぁ~」
「そんな、悪いですよ」
「いえ、喜んでくれるならそれが僕にとっては嬉しいんで、どうぞ、差し上げます」
「そうですか?じゃあ、代わりと言ってはなんですが、飴を一つどうぞ」
「ありがとうございます。じゃあ、物々交換って事で。坊やもそれで良いかい?」
「うん、ありがとお兄ちゃん」
「こっちも飴、ありがとね。後でいただくよ」
と言うほほえましいやりとりがあった。
ちなみに【慎二】という坊やが、37歳の【芳一】の事を【お兄ちゃん】と言ったのはお世辞ではない。
【芳一】は凄く若く見えるのだ。
それは彼が創作活動などをしているから感覚が若いため、10歳以上若く見られるのだ。
下手すると10代でも通じるほど若く見えるので、双子の兄の【徳太】と並んで立っているととても【一卵性双生児】とは思えないほど似ていない。
【徳太】は年相応の顔をしているのに対して、【芳一】は、若い人がする様な活動を精力的にしていたし、転勤して茨城の外れにちょっと居た時は、週末に東京に出るために、仕事が終わったら何十キロも荷物を持って歩き、そこから高速バスで3時間かけて東京に出て東京で遊び、日曜日に戻ってくるという事などもしていたし、【A2のコピー用紙】を箱ごと買って、それを担いで高速バスに乗って持ち帰ったという変わったエピソードまである。
とにかく、20代から30代の前半にかけてよく足を使って動き回っていたので、体力も意外とあるのだ。
色んな所に出歩いて、色んな人と話したり、時には喧嘩になったりした事も少なくないのだ。
実は絡んできた関西人の高校生【大門 隼人】が【芳一】に声をかけた時、
「おっさんやないか」
と言ったが、それは調べていて、彼の年齢が37歳だと知っていたからそう発言したのだが、見た目がもの凄く若かったので、内心、驚いていたというのも隠れた事実だった。
【芳一】の周りではこういった光景が珍しくない。
人の良さがにじみ出ているのか、昔は、普通に歩いていた彼に道を聞く女性が結構な頻度で居たものである。
また、新たな職業に就くためにハローワークの案内で入った【技術学校】で知り合った【女性】/【武藤 恵子さん】享年68歳は、人生最期に、早逝した息子に充てた【文章】を【自費出版】として出そうとした時、その【文字入力作業】を【技術学校】で【パソコン】を覚える時に、お世話になったからと言って、【芳一】に仕事を依頼した事もある。
【芳一】は、【ホスピス】での【終末治療】を受けていた彼女の元に行き、【小説家】として【メジャー】になるからと誓った事もある。
そう言う心温まる【エピソード】もたくさんあるのだ。
【芳一】が様々な【人物】を描く事に長けている理由の一つは、彼自身の人柄が引き寄せる、【人と人の縁】である。
それを【小説】などで【表現】するから、【人】は引き寄せられるのである。
少なくとも【盗作】する輩には逆立ちしても真似の出来ない芸当と言えた。
ちょっとした外出でもそう言った触れ合いのある人生を【芳一】は歩んでいたのだった。