プロローグ24 【9月22日/部活見学5日目】6/アニメ制作部見学2
【芳一】は現在、【夢の異世界】で【アニメ制作部】を見学している。
【崎本 桔梗】28歳と【星井 瑠璃】23歳との待ち合わせ時間まで後1時間半ほどあるので、【インビジブル・サポーター】の勧めで【アニメ制作】の【疑似体験】をする事になった。
と言っても、本当の【アニメ制作】ではない。
実際に【アニメ制作】をしてしまうと【1夜】辺り最大8時間という時間制限では、とてもじゃないが、ほとんど作業は進まない。
省略出来る所は省略出来る様に、この【部活】では対応されている。
現実の【アニメ制作部】には存在しない、【帽子】や【ヘルメット型】の【イメージ作画装置】と言う物を被って【制作】するらしいが、その前に、【資料】などが【召喚】される【棚】に行って、それを見てみようと言う事にした。
被って見ると、【チュートリアル画面】で一から【アニメーション】の作り方が【レクチャー】されていたが、一応、【ループアニメーション】程度なら【芳一】は作れる技量があるし、今回は2人のアイドルのどちらかが来るまでの時間つぶしなので、じっくりと体験している余裕は無い。
そこで感覚だけで、【イメージ作画装置】を操って見ることにした。
ダメ元でやってみたが、元々、【アニメ】を作る技術を持っていたので、感覚だけで何とかなった。
例えば、【キャラクター】と【背景】は別カットで作って合成する事や、【レイヤー】で別々の【画像】を上にしたり下にしたらどんな重なりになるかと言う事など、最低限の【アニメーション】の仕組みの知識は持っている。
なので、実際に【アニメーション】を作る作業を【イメージ作画装置】を通して【イメージ】して行くと、通常、【イラスト】などを描くと当然、時間がかかるものだが、一瞬にして、出来上がるので、【芳一】は、【作業工程】をイメージして行くだけで、超サクサク作業が仕上がった。
なので、いつもは作業時間が限られているから【ループアニメーション】にして誤魔化して完成させていたが、今回は【ループ】にはしないで、【5分間のストーリーアニメーション】として作ってみた。
展開としては、ありがちだが2名の【キャラクター】による【バトルアニメーション】だ。
【格闘ゲーム】である様な、【バトル】を行う【舞台背景】を作って、そこを2名のキャラクターが縦横無尽に動き回ると言う【アニメーション】を作ってみた。
実際に、【芳一】の技術でこのレベルの5分間アニメーションを作ったら、一ヶ月はかかりそうな手間をものの【1分】で仕上がったのは驚きだった。
いつもの【ループアニメーション】では【SE】や【キャラクターの声】などは入れていないが、この【アニメーション】では選択して入れる事も出来るので、完成度がいつも作っているものよりも段違いに上の仕上がりだった。
【芳一】は、自分で作った【アニメーション】の出来に、
「おぉ~、これは」
と反応した。
思ったよりも出来が良かったので、ちょっとした感動をしたのだ。
これに気を良くした【芳一】は、【ラブコメアニメーション】も作ってみる事にした。
今回はあくまでも【部活見学の試し制作】なので、複雑な設定ではなく、【ラブコメ】としては使い古された古典的な展開の【登校中、出会い頭にごっつんこ】と言うベタな感じの設定で作ってみる事にした。
一応、男の子視点と女の子視点の両方で見た展開を考えて、道端で突然、ぶつかるまでの【エピソード】を【アニメ化】した。
正直、これは面白味は全くない。
何のひねりも無い展開なので、目の肥えた【アニメファン】なら、
「だから、何?」
と冷たい反応をするだろう。
だが、これはあくまでも、【アニメ制作】の練習でやっている事だ。
だから、お約束過ぎる展開でも出来を確認すると言う点ではそれで間違いないと言えるのだ。
こうして、一つずつ確認して行くことにした【芳一】は、
【ホラー】、【ギャグ】、【ラブシーン】、【スポーツ】、【日常系】、【食べ歩き】、【eスポーツ】と言う様に、テーマを決めて【5分アニメ】を量産して行った。
そして、次の【戦争】の1シーンを描いている途中で、【インビジブル・サポーター】が、
『【唯野様】、【崎本様】が見えられました』
と連絡が来たので作業を止めた。
【桔梗】が、
「【唯野さん】、お待たせしました」
と言ってやってきた。予定より少し早い到着だった。
【芳一】は、
「どうも、【星井さん】はどれくらいで来られるかわかりますか?」
と聞いた。
【桔梗】だけでなく、今回は【瑠璃】にもレクチャーしなくてはならないと思っているので、聞いてみたのだ。
2人いっぺんに眠ると言うのは困難だろうが、それでもなるべく時間を合わせないと【芳一】は、【瑠璃】に解説する事が出来なくなる。
【桔梗】は、
「それがまだ、仕事中らしくて、後、30分くらいは起きていないと行けないそうです。
その後、出来るだけ早く、仮眠をとるらしいので、その時は【瑠璃】も来られると思うとの事です。
多分、後、1時間くらいは来ないかも知れませんね。
あの子、今夜の【睡眠時間】は、3時間くらいしか取れないみたいだから、なるべく手短に教えてあげて欲しいんですけど駄目でしょうか?」
と聞いてきた。
【芳一】は、
「3時間ですか?短いですね。大丈夫ですか?そんなに睡眠時間短くて?」
と聞いたら、【桔梗】は、
「オフの時はなるべく睡眠時間を多くとる様にしているらしいけど、普段は大体、3、4時間眠れれば良い方なんだそうです。
元々、ショートスリーパーなので、それでも問題無いと言ってますが、私としても心配です。あまり無理をしないで欲しいんですけどね」
と言ってきた。
「そうですか?それは心配ですよね。お察しします」
「アイドルをやっていたら、それは仕方ない事だと思います。
売れる程、忙しくなりますから。そう言う意味じゃ、私は睡眠時間は6時間以上取れますから、売れてないって言う事なんですけどね」
「あ、いや、何か済みません」
「いえ、お気を遣わせてすみません。それより、私、明日の【部活見学】、何にするか決めて来ました」
「あ、そうですか?どんな【部活】ですか?」
「はい、ちょっと恥ずかしい名前なんですけど、【アース・ヒーロー部】と言う【部活】です」
「え?【アース・ヒーロー部】?」
「はい。【地球を守るヒーロー】の【部活】です。女の子なのに、こんな【部】、おかしいですか?」
「いやいやいや、そんな事ないです。かっこいいです」
「ありがとうございます。私、小さい頃、【ヒーロー】に憧れていたんです。
特に、【地球】を侵略しようとする色んな【侵略者】達から、【地球】を守る【アニメ】が大好きで。
ご存じですか?【アース・ホープ】と言う【アニメ】なんですけど?」
「知っているも何も超有名作品じゃないですか?子供から大人まで幅広い人が知っている名作です。
一度連載やアニメは終了してますが、今、【新シリーズ】として、【アース・ホープ・ハイパー】として連載が続いているあれですよね?」
「はい。その通りです。ご存じでしたか?」
「これでも一応、クリエーターの端くれなので、そう言う有名作はちょっとチェックしていますよ」
「そうですか。私の初恋の相手って【アース・ホープ】の主人公の【誠 皆夢】なんです。
彼と結婚するのが夢でした。子供っぽい夢ですよね」
「そんな事ないですよ。素敵な夢です。今なら、【アニメキャラ】とも結婚出来る可能性もありそうですよね」
「えぇ。でも、大きくなるにつれて、男性より、女性の方が魅力的に思う様になって。
【瑠璃】と知り合った時、ビビッと来ちゃって。
女の子が好きって気持ちと男の子が好きって気持ちが両方あるって言うか。
気持ち悪いですよね、こんなの?」
「そんな事ありません。今は多様性の時代です。誰が何を好きかはその人次第だと思いますよ」
「ありがとうございます。そう言って貰えると救われた気持ちになります。
話はそれましたけど、【皆夢君】の様に、【地球】を守る【部活】って一度見てみたくて。
一年以上続ける自信は全然無いんですけど、【部活見学】は一度、見てみたいと思っていて」
「そうですか?僕としては【星井さん】さえ良ければ、かまいませんよ。
おつきあいさせていただきます」
「ありがとうございます。後、【瑠璃】からの伝言で、あの子も明後日の【部活】を決めたそうです。
【シチュエーション・イベント部】だそうです。
色んな【シチュエーション】を体験していく【部活】だそうです。
あの子は今夜は3時間くらいしか無いから、この事を【唯野さん】に伝えておいて欲しいと頼まれていたので、伝えさせていただきました」
「わかりました。【シチュエーション・イベント部】ですね。
了解しました。それも楽しそうです」
などと雑談を交わし、その後で、【芳一】は、【アニメ制作部】の【活動内容】を自分なりの解釈で説明したのだった。
【桔梗】は、
「流石は、【唯野さん】ですね。私だけだったら絶対に、ほとんど理解出来ないままやり過ごして居たと思います。頼りになります。これからもよろしくお願いしますね」
と言った。
【芳一】は、
「いやぁ~それほどでも無いですよ」
と謙遜したが、内心は、
(もっと褒めて)
と思っていた。
その時、
「お二人で何を話して居るんですか?」
と言う声がして、【瑠璃】が現れた。
これで3人、揃った事になる。




