プロローグ23 【9月22日/部活見学5日目】5/アニメ制作部見学1
【芳一】は、今夜も【心療内科】で処方された【睡眠導入剤】を使って、寝る時間を調節する事にした。
いつもの様に【萌和佳理事長】と軽く挨拶をして、【インビジブル・サポーター】を受け取り、【アニメ制作部】を選択して、その【部室】へと転移する。
どうやら、【桔梗】と【瑠璃】はまだ来ていない様だから今夜は一番乗りであると言える。
と言っても他の大人が何人か見える。
この【アニメ制作部】を含めて【部活見学】の対象となっているのは、全て【初等部4年生】なので、当然、大人の姿で居るのは【部活見学】に来ている人間だと言うのが簡単に推測が付く。
やはり人気のある【部活】なのだろう。それなりに見学者が居るのである。
【芳一】の同期に【森永 郁郎】34歳と言う【漫画家】をしていた男性が居たのでひょっとしたら、ここで会えるかも知れないと思っていたが、残念ながら彼の存在は確認出来なかった。
考えてみれば、【部活見学】は7夜に渡っており、基本的に毎日違った【部活】を見学しているはずである。
なので、例え、【郁郎】が【アニメ制作部】を見学に来たとしても、今夜来ているとは限らないのだ。
同期の【桔梗】と会ったのはあくまでも偶然であり、一日でもずれていたら彼女とも行動する事は無かっただろう。
そう言う意味では【桔梗】とは運命の出逢いだったのかも知れないと思うのだった。
そんな事をチラッと思ったりしたが、【桔梗】と【瑠璃】がやって来る前にある程度、【アニメ制作部】を把握しておいて、彼女達に説明せねばならない。
そう言う約束だったのだから。
やはり、通常で考えられる【アニメ制作部】とはどこか違っているような【部室】だった。通常の【アニメ制作部】で考えられるのは、例えば、【ペン】や【コピック】などの様に作画をするための【道具】などがあったりするだろう。
そう言った物が見受けられないのだ。
この【夢の異世界】の【文芸部】と同じように、【資料】などを【召喚】する【棚】などはある様だが、【アニメ制作】に必要不可欠だと思える様な物があまり見受けられない。
今はタブレットなどによるデジタルが主流とは言え、やはり、手描きの【アニメーション】の魅力も捨てがたい。
だから、そう言った道具があるのが普通だと思っていたのだが、【インビジブル・サポーター】に質問すると、
『お答えします。それは制作時間をそのまま【部活】の活動時間に使ってしまうと、1日最大でも8時間までという時間制限がありますので、【アニメーション】を1本分制作しているだけで相当数の日数を使ってしまいます。
この【アニメーション制作部】は数多くの【アニメーション】を作り出す事を【部活】としての主体と考えられておりますので、【制作時間】は出来るだけ【イメージ】だけで省略出来る様になっているのです。
そのため、現実の【アニメ制作部】には存在しない、【帽子】や【ヘルメット型】の【イメージ作画装置】と言うものがあり、それを被って【部員】は【アニメーション】を制作していくのです。
全ては【イメージ】が物を言う世界ですので、全てを【映像化】させるのはそれなりに難易度が高いですが、これならば、1人で、【アニメーション】に関わる全ての【作業】を行えます。
【アニメーション】の作り方は、【イメージ作画装置】で映像として見ることが出来る様になっていますので、それを参考に作ります。
【部員】の方々にとって、作業工程を他の人に見て欲しいのではなく、作り上げた【作品】を【鑑賞】してもらいたいと思われているので、【アニメ制作部】とは言っても【制作】の部分は出来るだけ省略する様に出来ています。
【部員】の方達は、【アニメーション】が完成したら【試写会】をやるはずですので、それをご鑑賞ください』
との答えが返ってきた。
なるほど、それならば、アイドルの2人も気兼ねなく見学する事が出来るかも知れないと思った。
現在、【部員】として活動しているのは【7人】である。
7人の小学四年生達が、各々【自分のアニメーション】を【制作】している。
【アニメーション】が完成したら、作業をしている【他の部員】達にも知らせが行くが、他の部員達は、その作品を見ても良し、見ないで自分の作業に没頭するも良しと言う事になっている。
ほとんどの【部員】が自分の作業に没頭して他の【部員】が作った【アニメーション】をあまり見ようとしない事がほとんどなので、その場合を考慮して、予め、【視聴者】が別に用意されている。
【AI】の様な物で動いている【人工的な人間モドキ】ではあるが、普通の人がするであろう反応が予めインプットされているので、作った【アニメーション】が面白いかいまいちかなどを判定してくれると言うものになっている様だ。
この【アニメ制作部】は実際に【アニメ】に携わっている人達が入る部活だろうから、こういった【視聴者】の反応も聞いてみたいと思っているだろう。
そう言う意味では【作品作り】の勉強になる【部活】と言っても良いだろう。
【芳一】は、【桔梗】と【瑠璃】が眠る予定として指定した時間より、2時間ほど早く来ているので、その間、1本でも完成した【アニメーション】を見れないかと思って待っていたが、30分経ってもありそうもない。
やはり、納得のいく出来になるまで何度もやり直したりしているのだろう。
【インビジブル・サポーター】に聞くと、
『【アニメ制作部】としての傾向は、部活の後半に発表する場合がほとんどです。
前半は【制作】中心となります。
今は【部活】の前半の作業をされている方がほとんどですので、しばらくは試写会は無いかと思われます。
宜しかったら、【アニメ制作】を体験なさいますか?
【部活見学】なので情報としては残りませんが、疑似体験はする事が可能ですよ』
と言ってきた。
【芳一】は、
「そうだな、こうして黙って待っているのも時間の無駄だし、ちょっとやってみるか。
じゃあ、悪いけど、【崎本 桔梗さん】か【星井 瑠璃さん】が来たら教えてくれないか? 作業は途中でも止めるから」
と言った。
【インビジブル・サポーター】は、
『了解いたしました。お二方のどちらかが来られた時にはお伝えします』
と言う返事が返ってきたので、【芳一】は【疑似体験】をしてみる事にしたのだった。