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プロローグ2 【都立夢異世界部活学校初等部】入部入学案内

 【唯野(ただの) 芳一(ほういち)】は、現在、アルバイトで生活をしている。

 【執筆活動】をするためにそれまで働いていた会社を退職し、そこで貯めた貯金と半日のアルバイトで食いつないでいた。

 その間、【発明】や【イラストレーター】などを経て、【小説】の執筆活動をしていて、自費出版でとある【出版社】と契約し、いざ、【出版】と言う事になって出版社の裏切りにあい、それまで、【出版社】に渡していた【小説】を全て奪われ、他人名義で出されてしまった。

 それらの【小説】は珍しい設定などが受けてどれも売れに売れたが、その印税が【芳一】に入る事は一切無かった。

 【芳一】は法に訴えたが、【悪徳出版社】は巧妙な手で彼を絶望の淵に追い込んだ。

 裁判費用で多くの失費をした彼は次に出す話を作っても自費出版で出せない状態になってしまった。

 彼は絶望し、自殺を何度も考えたが、その度に死にきれず、何となく生きていると言う状態を繰り返していたのだった。

 それで兄の【徳太】の申し出を受けるかどうかで迷っていた。

 出版費用なら兄が出してくれると言う話もあったが、根が生真面目な彼は自分の力で何とかしようと思っていて、それを断っていた。

 そんなモヤモヤする日々を送っていた彼だったが、半日働いて、半日は執筆活動やイラスト作画などを含む創作活動を続けていた。

 もはやいつ次の出版が出来るか解らないが、創作活動の熱だけは冷めなかったのであった。

 そんな彼の元に現れたのが【都立夢異世界部活学校初等部】の理事長を名乗る【河瀬(かわせ) 萌和佳(もなか)】だったが、彼女は【芳一】に【都立夢異世界部活学校】の説明をして去っていった。

 そんな狐につままれた様な状況だった【芳一】は、コンビニで夜食となる弁当を買い、現在の自宅となるアパートに戻った。

 そこで、何となく、酎ハイ片手にテレビを見て、そのまま疲れて眠ってしまった。

 気付くと、彼は知らない景色の前に立っていた。

 一人ではない。他に数名いた。男が自分を含めて4人、女が2人の6名だった。

 自分も例外では無いが、どの人間も絶望感を身に(まと)った様な表情をしていた。

 どこかで人生の【絶望】を味わったと、そんな雰囲気だった。

 若い奴、年配、色々いたが、みんな疲れた顔をしていた。

 そんな6人の前に、先ほど話しかけてきた女子高生、【河瀬 萌和佳】が現れた。

 彼女は希望に満ちた者の、満たされた者の目をしていた。

 少なくとも、ここに居る6人とは違う人間だというのが見て取れた。

 【萌和佳】は、

「皆さん、先ほどはどうもです。

 改めまして【都立(とりつ)夢異世界(ゆめいせかい)部活学校(ぶかつがっこう)初等部(しょとうぶ)】の理事長をしています【河瀬かわせ 萌和佳もなか】です。

 ここに居られる6名の方はみんな、賢明に努力をされ、実力を付けながらもそれがまともに評価されず、狡猾(こうかつ)な人間達に絶望を植え付けられた可哀想な方達です。

 私はそれを良とはしません。やはり、頑張った方はそれなりに報われないと駄目ですよね。

 でも、世の中は努力した者が必ず報われるとは限りません。

 薄汚いやり口であなた方の努力を否定するクズというのは少なからず居るものです。

 そこで、当校といたしましてはそんな報われない方々に【セカンドチャンス】/【セカンドキャリア】を提供させていただこうと思いまして、あなた方に声をかけさせていただいた限りです。

 【都立夢異世界部活学校初等部】の【入校案内】をさせていただき、翌日からの【7夜】に渡る、【部活見学】をしていただき、その翌日から3日の間に、【入学】か【否】かを決めていただきます。

 あなた方が生徒になる場合、【入学】を決めた【夜】の翌日から【初等部4年生】と言う肩書きと姿になって、毎晩、【生徒】として、【部活】に参加していただきます。

 【部活】であって【部活動】では無い理由は、【部活静】と言う参加方法もあり、その場合は何もしないと言う選択肢もあります。

 【初等部】の三年間については【部活静】が認められていますので、何もしないで三年間、過ごす事も可能です。

 ただし、【中等部】からは、【部活静】は【落第】の対象になる可能性がございますのでご注意下さい。

 【初等部】の間、【部活静】が認められているのは、あなた方がショックを受けている状態だからです。

 癒しの時間、心の傷が癒える時間も必要だという判断で、三年間はどの様な行動を取ろうと一年後には自動で進級出来ます。

 ここまではよろしいですか?」

 と言った。返事は無かった。みんな呆然としていた。

 挙手が無いことを了解したと捉えた彼女は、続けて、

「よろしいですね。ではあなた方は本日、9月17日付けで【入校案内】を受けた同期になります。

 7日間の【部活見学】を経て、9月25日から9月27日までの3日間の間に【入校】か【否】かを決めていただき、【入校】を選択された場合、9月26日から9月28日より、【夢異世界】へ登校していただきます。

 その日より、あなた方は【初等部4年生】として部活をしていだだきます。

 【初等部5年生】となるのは、例えば、9月26日【入校】の場合、来年の9月26年に自動で【進級】します。

 その時点で、【転部】を希望される方は、おっしゃってください。

 それより前に【転部】を希望される場合は【留年】扱いとなりますので、ご注意下さい。

 【留年】は全学年で4年間のみ認められています。

 それ以上になった時点で退学となりますので気をつけてください。

 また、当校に【入学】された場合、一日辺り最大8時間まで【部活】に参加する事は可能ですが、それ以外の時間は今まで通り普通に生活をしてください。

 また、【院等部】まで卒業される事により、どんな事でも【句点くてん】、つまり【マル】までで1文として成立する願いならば何でも叶える事が出来ると言うこともお知らせさせていただきます。

 私も、実は52歳なのですが、【17歳の女子高生となって都立夢異世界部活学校初等部の理事長として不幸な目にあっている努力家達を導きたい。】と言う願いを叶えて今の立場になっています。

 17歳の若々しい身体で、あなた方を導ける存在として活動出来る様になったのも【院等部】までの20年間を無事に全うしたから願いが叶えられました。

 これを聞いたらあなた方も希望が持てると思います。

 あなた方の望みも20年後に卒業出来たら、必ず叶うのです。

 良い話だと思いませんか?信じられない話に聞こえますがこれは事実なのです。

 騙されたと思ってやってみませんか?あなた方は自ら命を断つ覚悟をしている方達です。

 最期だと思ってやってみてはいかがですか?

 それでは、この後の時間は起床時間まで自由時間となります。

 同期同士、ご歓談くださるも良し、退出されるも良しです。

 本日は全員揃うまで待機していただきましたが、明日からは就寝された方から順番に、自由に【部活見学】をしていただきます。

 それでは私は失礼させていただきます」

 と言ったまま姿を消した。

 後に残された6名はしばらく呆然と立っていたのだった。

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