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プロローグ14 【9月21日/部活見学4日目】2/夜までどうするか?

 【部活見学】も今後どうするか決めたので、後は普通に生活をする事が出来る。

 夜まで時間もあるし、後は何をするかである。

 気晴らしに外に出てみる事にする。

 と言っても生活費は決めているので予定以外の失費は避けたい所だ。

 物価の上昇もあるし必要以外の買い物は避けたい所だ。

 だが、確か、【プリンター】のインクの予備が無かったはずだ。

 【イラスト】などは【ネット】で公開しているので基本的にインクは必要無いのだが、バイト先などで、【パソコン】が使えない同僚達に自分の作った【イラスト】を見せるには、【パソコン上】で作った画像をプリントアウトする必要がある。

 インク代もバカにはならないのだが、サービス精神が旺盛な【芳一】は【ネット】が見れない人達にも出来るだけ、紹介したいとして、【プリント】してバイト先に持っていっていた。

 その【イラスト】が欲しいと言う人には惜しみなく、渡していた。

 彼が【バイト先】で人気がある理由はこの事も関係している。

 はっきり言えば、話していて色んな事があるから楽しいのだ。

 だから、彼の周りにはいつも人が集まる。

 休憩中に、小説のメモやイラストの練習などをしていると、

「何書いてるの?」

「見せて、見せて」

「良く描けてるね、これ」

 などと言われる。

 【芳一】も褒められると嬉しいので、気をよくして、【バイト】が終わって午後、創作した【作品】の一部なんかを持ってきて渡している。

 そう言う様な事をしているからこそ、【バイト先】の同僚達は彼が騙されたと言う事が許せなかった。

 仕事先は流通業でもあるので、彼を貶めた出版社の噂はドンドン広がっており、悪評は広まっている。

 天に唾を吐けば自分に返ってくる様に、その【悪徳出版社】にもいずれ、しっぺ返しがやって来るだろう。

 【芳一】としてもそんな【自業自得】、【因果応報】を受ける事になる所を気にしては居ない。

 高い授業料を支払ったと思って、そことは二度と関わらないと言う事を決めて前に進む事にしている。

 今は出来る事をやっていこうと言う気持ちになっていた。

 まずは応援してくれる人のためにインクを買いに行こう。

 そう、思った彼は近くの【電気屋】にインクを買いに行ったのであった。

 【電気屋】に行くと、女性店員が、

「いつもありがとうございます。今日はどう言った物をお求めですか?」

 と聞いてきた。

 この【電気屋】には、インクの他にも1回録画用ブルーレイソフトやひげ剃り、パソコンやルーターなど日常品で必要な商品を良く買いに来ていた。

 だから、店員にも顔を覚えられていたのだろう。

 【芳一】も、

「あ、【黒田さん】、いつもお世話になります」

 と言った。

 彼女の胸には【名前】の書いた【プレート】があるし、ブルーレイレコーダーのリモコンがおかしくなった時、解らないことがあったので質問したら名刺をいただいた事があったので、名前を覚えていた。

 【芳一】は、その人懐っこさと、それまで、自分の作品を発表するために色んなクリエーターに自分の作った名刺を配って話した経験もあり、近所の行く先々の店で、顔なじみになっていた。

 近所の人もバイト帰りの【芳一】に、

「お疲れ様ぁ~」

「仕事帰り?」

「暑いねぇ~」

 などと声をかけてくれる。

 良く行く食堂では、

「おっちゃん、いつもの」

 と言えば、いつも頼んでいる料理が出てくる事もあるのだ。

 それだけ、色んな所で顔が利くのだ。

 近所付き合いも良く、近所の人達の間で彼を悪く思っている人間は、彼の才能に嫉妬している人間達くらいだ。

 それだけ人望もあった。

 だから、近所を歩くとそれまでの人間関係が反映されて気持ちが良くなっていた。

 【黒田さん】に【プリンターのインク】が足りなくなっている事を伝えて持ってきて貰い、買い物を済ませると、良く行く【ファストフード店】に立ち寄って新作バーガーを食べた。

 彼は新作バーガーが出る度に、この【ファストフード店】でその新作を試しに買って食べている。

 もちろん、【ファストフード店のクルー】とも顔なじみだ。

 【クルー】の【榊さん】は、

「【芳ちゃん】、ここの所、暗い顔をしてたけど何だか少し、垢抜けて来たんじゃない?」

 と言った。

 【芳一】は、

「そうかな?」

 と言うと、

「うん、何だか少し吹っ切れた様な顔をしているよ。それまでは首でも括るんじゃないかって顔してたけど」

 と返して来たので【芳一】は図星をつかれてギクっとなった。

「そ、そんな風に見える?」

「うんうん、【芳ちゃん】、すぐに顔に出るから」

「そ、そうかな?」

「根が素直なんだよ。そこが可愛いんだけど」

「一応、僕の方が年上なんだけど」

「関係ないよ。可愛いものは可愛い。頑張ってるのはかっこいいしね」

「こらっ、【榊】っ、仕事しろっ仕事」

「はぁい先輩。じゃあ、また来てね、【芳ちゃん】」

「ごめんね、怒られちゃったね」

「良いって良いって、じゃあ、私、接客があるから」

「うん、色々ありがと」

 と言うやりとりがあった。

 【芳一】の人柄がにじみ出ている様なやりとりだった。

 その後、【芳一】は少し足を伸ばして【土手】に行った。

 そこでは、中学生達だろうか?

 【野球】をしていたり【サッカー】をしていたりしていた。

 【芳一】は、持ってきていた【スケッチブック】と【鉛筆】を手に取り、その【少年達】をスケッチした。

 やはり、気分転換には【絵】を描くのが一番だと彼は思った。

 彼の父親は【絵】が上手く、三姉弟の中で、父親と同じ、【絵】を描く様になったのは彼だけだった。

 彼は父が、姉を描くのを幼い頃見ており、それで自分も絵を描いて見ようと思って独学で練習していたりした。

 父は絵の描き方を教える前に亡くなってしまったので、最初は漫画などの絵を【半紙】に透かしてなぞる練習から始め、それで次第に描ける様になっていた。

 何事もコツコツやることが大事である。

 気づいたら、父の画力を超えるまでになっていたのだ。

 姪っ子達が小さい頃は、【芳一】が絵を描いてあげたら喜んでいたと言うのも楽しい思い出だ。

 そんな彼には見合いの話も多くあったが、彼は趣味や発明などに生きるとして結婚という選択はしなかったが、代わりに多くの人から好かれる人物になっていた。

 正しい事は正しい。

 間違った事は間違っているとはっきりと言う性格のため、今までの職場では心ない上司達や経営陣と揉める事も多かったが、困っている同僚達からは、

「よくぞ言ってくれた」

「頼りになる」

「俺は君についていきたい」

 などと言ってくれたりしていた。

 やはり、多くの人が長いものには巻かれる日和見主義である。

 だからこそ、上役にもビシッと言ってくれる彼には人望が集まった。

 それをよく思わない経営陣とはよく揉めたが、彼は何でも器用に仕事をこなしていたので、なかなか文句も言えなかった。

 だが、短気でもあった、会社に嫌気がさして自ら退職を選ぶ事も多かった。

 彼はこれまで10社近く会社を変えていた。

 普通、それだけ変えれば採用も難しいとは思われるが、面接での彼の対応は素晴らしく、有能感がにじみ出ていて、採用する側もつい、欲しくなると言う感じで今まで採用されていた。

 が、年を取る事に年齢から採用も難しくなり、今のバイト先に落ち着いたと言う経緯があったのだ。

 彼は有能ではあるが、生き方が非常に不器用な男だった。

 だが、非常に個性的でもある。

 そう言う人間は【創作物】を作るのに向いている。

 なぜならば生きている事自体が、【ネタ】の塊なのだから。

 何もない人生を生きている人間より、遙かに多くの【ネタ】が生活に直結しているのだ。

 そう言う人間には発想では勝てない。

 だからこそ、彼は【創作者】として生きる道を選択して行く事になるのだ。

 彼ならば何度挫折してもその度に復活し、やがては成功者としての道を歩んでいく。

 そんな予感がする人物だった。

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