プロローグ12 【9月20日/部活見学3日目】3/雑談部?
その日の午後は、現在の自宅の【アパート】に戻り、部屋の掃除をする事にした。
大分、モノは減っているのだが、それでもやはり、部屋の中のモノはたくさんあり、これをそのまま、【徳太】の家で割り当てられる【部屋】に持ち込んだら、【芳一】が居るスペースが無くなってしまう。
だから、少なくとも3分の2は減らさないと引っ越す事も出来やしない。
そう言った訳で、今の内にモノを少し減らしておこうと思ったのだった。
必要なものといらないものを分けるのは正直苦手だった【芳一】はいざ、捨てるとなると、当時の思い出がよみがえり、なかなか、捨てる覚悟は持てなかった。
それでも、やらなくては前に進まないとして、普通の人がやるペースよりもかなりスローペースだったが、少しずつモノを整理していった。
【芳一】はやりたいと思う事は人の何倍ものスピードでこなすが、やりたくない事に対しては人の何倍もの時間を要した。
やる気がある無いで、【超人】から【愚者】にまでなれるのが【芳一】と言う人間だった。
ずっと捨てる作業(主に思い出を振り返ってそれを最後に楽しむ時間が多かった)をしていたので、その日の【創作活動】は休んだ。
また、情報収集のための【番組】などのチェックもする暇が無かった。
そんな状態で眠ったので、【疲労】が貯まっており、【部活見学】も集中出来ないと考えた【芳一】は、【部活見学】の【第3夜】の【部活】を【雑談部】とした。
【雑談部】?とは如何なる【部】か?
それは単に【部員同士】、おしゃべりをすると言う【部活】である。
疲れていて新しい【部活情報】が入らないと考えた【芳一】は無難だと思える【部】として、【雑談部】を選択したのだが、これはこれである意味、【重要な部活】でもあると言えるのだ。
なぜならば、【部員】同士が会話しているから、【芳一】の知らなかったこの【夢の異世界】の【情報】が会話として出てくるかも知れないからだ。
【見学】するのが、【初等部4年生】同士の会話なので、【深い所】まで話すとは考えにくいが、それでも、少なくとも、そこで会話するのは、【部活経験者】だ。
だとしたら面白い【情報】が聞けるかも知れない。
疲れたなどと言っている場合ではないのだ。
が、疲れたと思ったからこそ、この【部活】をチョイスしたと言うのは、運が良いのか、悪いのか?
それは彼が会話の情報を覚えて居られるかどうかにかかっている。
この【雑談部】と言う【部活】の特徴は、【部員】が2人以上居ないと活動出来ないと言う点が挙げられるだろう。
1人だったら、【雑談】では無く、【独り言】だからだ。
だが、1人でも【雑談】の準備は出来る。
それに2人以上居ても反りが合わない相手とは会話もはずまないだろう。
そう言う意味では人間関係が非常に重視される【部活】と言えるだろうか。
【芳一】は昨日までと同じ様に、【萌和佳理事長】と簡単に会話をして、【インビジブル・サポーター】を付けて貰い、【雑談部】の【部室】に【転移】した。
【雑談部】は、現在3人が活動中だった。
3人とも女の子だ。やはり、話をする事でストレスを解消すると言うのは男より女の方が性に合っているのかも知れない。
【インビジブル・サポーター】は、
『【唯野様】、この【部活】では、本人が仲間内以外で知られたくない情報は自動的に【自主規制音/ピー音】が鳴りますのでご了承下さい』
と言っていた。
なるほど、確かに他の人には知られたくない内緒話というものもあるだろう。
テレビなどでもモザイクがかかるシーンや伏せ字などには【ピー音】が入る事がある。
それと一緒と言う事だろう。
その条件でしばらく話を聞いていると、3人の【部員】の名前が、【あっちゃん】、【ちーたん】、【ぴっぴ】だと言うのが解った。
いずれも【ニックネーム】か何かだろう。
【あっちゃん】は、
「それでさぁ、私、思うわけよ。
ここってさぁ、【都立夢異世界部活学校初等部】でしょ?
だとしたらさぁ、【県立】とか【道立】とか【府立】もあると思わない?
私、それに気付いちゃったんだよねぇ。凄いと思わない?」
と言っていた。
確かに、彼女の言うとおり、【都立】と付いている事から【東京都】の学校かな?と思う節はある。
現に、【芳一】も東京都に住んでいて、仕事場も東京都だ。
言われて見ればそう言う事も考えられるなと思った。
続いて、【ちーたん】が、
「それなら私も気付いた事あるよ。私達、同級生としてこうして話しているけどさ、実際には実年齢ってそれぞれ違うじゃない?現実世界で会っても同じように話せるかな?」
と言った。
それに対して、【ぴっぴ】は、
「だよねぇ~私も実際に現実世界でみんなと会って、実は【ぴっぴ】だよ何て恥ずかしくて言えないよ。
良い年して、【ぴっぴ】?って笑われるのが怖いモン」
と言った。
確かに、【ぴっぴ】と言う【ニックネーム】は【小学4年生】だから成立している様な【名前】だと言える。
年配の女性が自分を【ぴっぴ】ですと言っていたら悪いがちょっと引いてしまうと【芳一】は思った。
そんな事を考えた【芳一】だったが、彼女達の【雑談】を聞いているとそのほとんどが【オチ】が無いたわいの無い【ネタ】ばかりだった。
女子の会話とは大体こんなものか?と思える様な話題ばかりがほとんどだったが、たまに、【なるほど】と思える【話題】もあり、退屈という感じは何故かしなかった。
また、【雑談部】の【部員】が全員、同じ時間で眠りに就いた訳では無いので、途中で退出したり、また、別の【部員】が入ってきたりなど、入れ替わりがあった。
それを見て、【芳一】は複数の人数で関わって【部活動】をすると言う事はこういう事なんだと理解した。
【部員】の人数が、【就寝時間】や【睡眠時間】、【起床時間】などにより増えたり減ったりするのだ。
当然、【睡眠時間】が被らない【部員同士】は、その日の【部活】で一緒に【過ごす】事は無く、中には同じ【部活】を選択していても、進級する最後まで、【存在】を知らないまま、出逢わずに終わると言う事も考えられるのだ。
【部活動】が認められているのは一日8時間まで。
二度寝、三度寝などをすれば、8時間までなら途中で一端起きて、また寝ると言う事も可能だが、最大8時間をどう使うかで活動の仕方も変わるだろう。
それに、決まった時間に上手く寝れると言う保証もない。
【芳一】は【心療内科】で【睡眠】を促す【薬】を処方されているから、ある程度は、【睡眠】をコントロール出来るが、普通の人には難しい芸当かも知れないと思ったのだった。
結果として、思ったよりも、【雑談部】の【部活動】は【芳一】にとって結構、参考になる事が多い活動と言えたのだった。
一応、【雑談部】は、現実にもありそうな【部活】としてカウントするとして、明日の【第4夜】はまた、現実には無さそうな【部活】を選ぼうと【芳一】は思ったのだった。
こうして、【第3夜】の【部活見学】も終えた。