プロローグ1 都立夢異世界部活学校に入学しませんか?
【唯野 芳一】37歳独身は絶望していた。
破天荒だった若い頃から色々と挑戦して、その経験を元に紆余曲折を経て、長年の念願だった小説を出したものの、悪徳出版社に騙されて、他人名義で出版されたのだ。
絶望感から自殺も考えたが死にきれず、ただ自暴自棄になっていた。
そこに現れたのは、一人の女子高生だった。
話しかけて来た彼女にパパ活は間に合っていますと断るが、その女子高生は奇妙な事を言い出した。
「初めまして、私、【都立夢異世界部活学校初等部】の理事長をしています【河瀬 萌和佳】と申します。
決して、援交目的で近づいて来た女子高生ではありません」
そう、彼女は語った。
は?【都立夢異世界部活学校】?そんな学校があるのだろうか?
どう考えてもあり得ない【学校】だ。
【夢】や【異世界】など【学校名】としては相応しくない【言葉】のチョイスだし、【部活学校】とはどういう意味だろうか?
また、【初等部】と言うのもおかしな話だ。
【初等部】とは【小学校】の事だろう。
37歳の【芳一】には全く関係ないし、彼は結婚もしていないので、当然、子供が【小学校】に通っていると言う事もない。
親戚には居るが、現在、絶望している彼は親戚付き合いも少し遠慮しているくらいだ。
双子の兄である【唯野 徳太】が心配して、部屋に空きが一つあるから一緒に暮らさないかと言ってくれていたが、【芳一】は【徳太】の家族に遠慮して、少し躊躇している。
【徳太】の娘は確か今、高校生と中学生だった様な気がしたが、しばらく会っていない。
【徳太】の娘の友達かと思ったが、そうでも無さそうだ。
つまり、これだけで怪しさ大爆発という状態なのだ。
【芳一】は、
「僕に何かご用ですか?怪しい宗教の話ならお断りしますよ。
僕はちょっとそう言う事につきあえる程、余裕が無いんです。
他、当たってもらえますか?」
と突き放したが、彼女は話を続ける。
「いえいえ、貴方の様な方にこそ、関係があるのです。失礼ですが、世の中の世知辛さに絶望なさっていますよね?」
「何故、貴女にそんな事を言わなければならないんですか?」
「貴方に希望を与えるため、夢を叶えて貰うためです。異世界には興味ございますか?」
「流行の異世界転生ってやつですか?」
「そうですね。異世界転生です。ただし、貴方が眠っている間の1日辺り最大8時間の間だけです。それ以外は現実の生活をしていただく事になります。
睡眠により【夢】を見ている間だけ、異世界に転生していただくシステムとなっております。
そこで貴方は【小学校4年生】から【セカンドキャリア】を謳歌していただく事が出来ます。
貴方は小学4年生となり、【部活】をしていただきます。
小学4年生から小学6年生までが私の受け持ちとなります。
小学生の間は1年ごとに部活を変更していただいてもかまいません。
3年間、私の学校の元で、【アオハル】、してみませんか?」
「は?何を言ってるの君?意味がまったくわからないんだけど?」
「まぁまぁ、やるやら無いは貴方の自由ですが、最後まで説明だけはさせて下さいよ。
【都立夢異世界部活学校】は部活動だけを【夢の異世界】でしていく学校になります。
【都立夢異世界部活学校】は初等部3年間、中等部3年間、高等部3年間、大等部(大学)4年間の合計13年間、【部活】や【サークル】だけをやっていただきます。
【院等部】(大学院)という制度も7年ほどありますが、それは延長扱いとなりますので【基本的】には大等部4年生までとなります。
部活動は【初等部】では毎年【転部】が可能ですが、【中等部】では3年間、【高等部】でも3年間、【大学】では4年間、それぞれ同じ【部活】や【サークル】を基本的に全うしていただきます。
一応、【転部】も可能ですが、一度でも【中等部】から【大等部】の間、【転部】してしまわれると【院等部】へは行けませんのでご注意下さい。
つまり、【初等部】で3回、【中等部】と【高等部】と【大等部】で1回ずつのみ【転部】が許されていると言う事になります。
それ以外での【転部】は【留年扱い】となります。
【留年】は4年間まで許されておりますが、それ以上になった時点で【退学】となりますので、ご注意下さい」
「さっきから何の話を?」
「次に部活動の種類ですが」
「話聞いてないし」
「何でもご自由に決めていただいて結構です。
どんな部活も出来る様になっています。
通常の部活からSFやファンタジックな部活まで何でも可能です。
一番、人気があるのは【異世界チート部】と言う【異世界】を【チート能力】を持って活躍する部活を指します。
他にも、【SF戦争部】や【漫画研究部】、【小説執筆部】などで多くの方が【入部】されています。
部員が在籍している場合は、他の部員と一緒に部活をしていただきますし、誰も居なければ貴方が部長となって活動してください。
部に必要なものは全て揃っておりますので、ご自由に使用してください。
また、人によって、【睡眠時間】や【就寝した時刻】、【起床の時刻】は異なりますので、【部活】への【参加】はそれぞれ個別扱いになっていると思ってください。
続きは今夜、【夢の異世界】で、説明いたします。
今は、入学案内という事ですので、話は以上です。ご静聴、ありがとうございました」
と言って、彼女は立ち去った。
残された【芳一】は、
「な、何だったんだ、今のは?」
とつぶやいたのだった。