松山千春の「卒業」を聴きたくなった
ある日、松山千春の「卒業」を聴きたくなった。1979年3月に発売された「窓」のB面曲。
松山千春って、あのスキンヘッドの怖そうな人だ。初期の歌しか知らないが、デビュー前後は地元STVラジオにだけ出ていたからアタックヤングとか、そのあとはオールナイトニッポンをよく聴いていた。
「旅立ち」でデビューして「季節の中で」で世間一般にそれなりに知られるようになった頃、松山千春は1979年放送の単発テレビドラマ「一年」で主題歌と挿入歌を担当した。
「一年」は釧路に汽車通学する男の子と女の子、高3の1年間をドキュメンタリー風に追った85分の作品。STV札幌テレビ放送の創立20周年記念作品で、倉本聡が「北の国から」の前に関与している。
ドラマの内容はあまり覚えていない。2人の高校生が部活を中心としたそれぞれの学校生活を過ごす1年を追っていた。前宣伝と違い、2人の日常は交わらない。
エンディング、汽車通学の情景。2人はそれぞれの友人と談笑しながら、同じ車両に乗っている。松山千春の「卒業」が、スタッフロールとともに流れる。2人はそれぞれ社会人(実業団)と大学に進む。その先も2人が交わることがあるのかは、描かれない。
1回しか観ていないドラマの、B面曲。44年間聴いていなかった曲を、聴きたくなった。
松山千春は倉本聡と仲が良かったらしい。ドラマ「一年」の曲を引き受けた。でも考え方の違いでドラマ放送時にはすでに仲違いしていた。
降板する直前のアタックヤングで(ドラマの宣伝をすべきところを)クソ味噌に言っていた。普段からクソ味噌な言い方をする松山千春だが、通学列車内しか場を共有することがない2人が「お互いを意識しあっている」ように演出したい倉本聡に松山千春が激怒、曲を引き揚げようとしたが恩があるSTVのため(というか大恩人で既に故人となっていた竹田健二の顔を立てて)曲は残した、とのこと。
(この一件がなければ「北の国から」は松山千春が曲を提供していたかもしれないが、それはまた別の話)
シングルB面曲の「卒業」はギターで始まる3分20秒の曲だが、1979年5月のアルバムバージョンはストリングスで始まる5分の曲で調性も変わっている。松山千春は「シングルバージョンは倉本聰を思い出す」と言って、アルバムバージョンと後の再録音バージョンでは別アレンジに変えた、そうだ。
どんな曲を歌うか、どのように歌うかはシンガー、松山千春の自由だ。ウィキペディアの松山千春のタイアップ曲一覧には「卒業」が「一年」の主題歌(相当)だった事実は載せられていない。
Youtubeにはシングルバージョンの「卒業」がある。いつか消されるかもしれないけど、コメント欄には「卒業式で歌った」という思い出も綴られていた。
1979年11月に発売されたシングルコレクション「起承転結」にはシングルバージョンが収録されている。1994年5月に発売された再発廉価盤だが、入手できた。
熱心なファンではない私だが、松山千春の「卒業」は、1回しか観ていないドラマのエンディングの、この曲だ。