確かにゲーム世界に転生したいとは言ったけど!!
拝啓、父さん母さん。
僕が居なくなって何時間、何日、何ヶ月経ったかは定かではありませんが元気にしておられますでしょうか。
あの日、酔っ払ったお爺さんの軽トラに撥ねられた僕は……
「はぁ、はぁ……これどこまでクリアすれば終わるの?」
ゲームの世界へと異世界転生しております。
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目を開けると、黒色とも言わないほどの暗黒が目の前に広がっていた、
「頭いた……あれ、ここどこだっけ……?」
確か、神社でお祭りの片付けしたあと、田んぼの横の道を進んでいる時に……
「後ろからなにかに追突されて……」
痛む後頭部に触れると、ねとりとした生暖かい感触がする。
「もしかして僕……」
「いらっしゃいませ登坂様、私は担当の蛇尾と申します。」
声のした方向に振り向くと、そこには鶏の頭を持つ人型の怪物が立っていた。
「あー、ここがかの地獄ってところですか?」
「いえ、確かに死んでは居ますが地獄ではございませんよ。」
しれっと死んでいることが確定してしまった。
「ここは有限会社瀬平ライフサイクルでございます、登坂様は生前に行っておりました転生アンケートの抽選懸賞に当選しておりましたので挨拶の方に伺わせて頂きました。」
「転生アンケート……?」
確かに答えた記憶はあるものも、そんな胡散臭いなアンケートでまさか何かが当たるとは到底思っていなかった。
そもそも死後に転生アンケートの懸賞を死後に渡しに来たということは……
「もしかして、賞品って異世界転生ですか?」
「はい、アンケート内で回答されておりました"ゲーム世界"に転生する権利が賞品として授与されます。」
なんという渡りに船だろう。
中学の頃から憧れていた、剣や魔法のゲーム世界に僕が行けるだなんて。
「こちら内容の説明からさせていただきますと……」
「大丈夫です、すぐ行きます!!」
「ですが、説明が……」
「いえ、僕わかるので!!」
「わかりました、では……」
蛇尾さんが自身の後ろに案内すると共に、その場に扉が現れる。
「受け取り後のキャンセルが出来ないようになっておりますが、大丈夫でございましょうか?」
「キャンセルなんてしませんよ! ひゃっほーい!!」
扉を開くと、視界が新しい門出を祝うかのような白い光が真っ暗な世界に広がる。
光に包まれるにつれ、身体の輪郭が薄れて新世界に適した身体に再構築される。
心地よい感覚に包まれては、意識が徐々に薄れて心身共に眠りに着く……
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そして意識は覚醒する。
どれくらいの時間が経ったのだろうか?
不思議と空腹や喉の乾きは感じず、身体の底から力が湧いてくる。
新たなる門出に心躍らせて目を開いた時、
そこにあったのは自身の体躯と同じ高さを持った木箱であった。
「なんで木箱が……」
試しに登ろうとするも身体が上がらず、登ることは出来ない。
しかし、ちょっと力を込めれば木箱は前へ押すことが出来る。
「いや、嘘だよな?」
木箱を動かし開けた視界を確保すると、地面にマークが付いている。
そのまま、部屋中を探索するとマークが付いた地面が3つと木箱が3つ。
出口の類のものはなく、多分だがあのマークの上に木箱を運べばこのステージをクリア出来るだろう。
「確かにゲーム世界に転生したいとは言ったけど!!」
木箱をマークの上に運ぶ。
視界が暗転して、次のステージに運ばれる。
そう、僕は倉庫番のゲーム世界に転生した。