第97話 すべては二人の手の中に
「分かった。お前の要求を認める。私が負けた時は、時間停止を解除してから死のう」
随分と素直ですね。
もう少し反論してくるかと思いましたが。
「お前の要求は予想していた。それに、負けなければ問題ない。私は勝つつもりでいる。負けた時の想定など不要だろう」
なかなか強気な発言ですねぇ。
まあ、婦警さんらしい気もします。
あなたは自分の命と世界をチップにして"ゲーム"を開いた。
ぜひとも楽しませてくださいよ。
せっかくの機会ですから、お互いに満喫しましょう。
「お前は怖くないのか。負ければ死ぬんだぞ」
愚問です。
僕は常に"ゲーム"で己の命を晒してきました。
元より死に恐怖は感じず、むしろ清々しい気分ですよ。
あなたの本気を肌で感じます。
相当な覚悟ですね。
自己犠牲すら厭わず、目的のために邁進している。
僕はそういった精神性が好きです。
極限状態でこそ人間の本性が出ますが、あなたのそれはとても気高い。
半端な偽善がここまで昇華されるとは思いませんでした。
きっと止まった四か月で色々と考えたのでしょう。
まったく、本当に素晴らしいですよ、ええ。
いつから"ゲーム"を始めますか。
僕は今からでも構いませんよ。
「お前がいいのならすぐに開始する。ちなみに今回のゲームは、私とお前が共同で実施する形でいいな?」
それはどういった確認なのでしょう。
本来なら婦警さんが主催者で僕は参加者になりますが、それを平等にするということですかね。
「概ね間違っていない。共同実施を明言することで、互いがゲーム内容に納得した証明にしておきたい。万が一にもお前が途中で放棄しては困るからな」
それは絶対にありえませんがね。
ですが良い考えだと思います。
僕が"ゲーム"を実施する体を取ることで、ミームによる強制力が働きますからね。
不利になっても途中放棄ができなくなります。
そこまで考えた上での提案ですね。
「無論だ。やれることはすべてやっておく。世界を救うためなら妥協はしない」
律儀ですねぇ。
念のために訊いておきますが、イカサマが発覚した場合のペナルティーはどうしますか。
互いに絶対無いとは言い切れないでしょう。
「その時はイカサマをした人間の勝ち点をゼロにしてゲームをやり直す。指摘した側の勝ち点はそのままだ」
なるほど。
無条件の負けではないものの、圧倒的に不利になると。
面白いですね。
ミームによるイカサマが前提なのでしょうか。
「解釈はお前に任せる。だが、一度のイカサマですべてを失う可能性はある。覚悟をして実行することだ」




