第43話 罠職人のゲーム
赤いボタンを押すと、ヨウエルさんの命が救われて、リペアという組織に損害が発生します。
青いボタンを押すと、リペアには何も起こらず、代わりにヨウエルさんが死にます。
実に単純明快なルールですね。
複雑な"ゲーム"も悪くないですが、復帰記念としてはこれくらいがいいでしょう。
そろそろ本格的に再開したいと思っていたのですよね。
だからヨウエルさんが来てくれて本当に助かりました。
是非とも心ゆくまで楽しんでくださいね。
今回の"ゲーム"のために用意した物はすべてミームで取り揃えてあります。
品質には自信がありますよ。
僕はその辺りにもこだわる性質なのです。
婦警さんも嬉しいですよね?
「……私に聞くな。なるべく巻き込まないでくれ。こうして協力しているだけでも気分が悪い」
ちょっと照れているようですが、彼女も本当は舞い上がっているのですよきっと。
だからヨウエルさんも盛り上がってくださいね。
「罠職人チョイス。あなたは重大なミスを犯していますよ」
ほほう、何ですかね。
よければ参考までに聞かせてください。
「私は不死身です。頭部を粉々にされても再生し、たとえ死んでも魂の記憶は漂白されずに転生します。ここで私が自分の命を犠牲にしても、何のデメリットにもなり得ないのですよ」
真っ当な指摘ですねぇ。
しかし、そんなことを言われるのは予想していました。
だから僕も事前に回答を用意しています。
ヨウエルさん。
あなたは今から僕の"ゲーム"に参加します。
デメリットがない、なんて絶対に起こらないのですよ。
それが僕のこだわりです。
己の命と使命――あなたは一方を選んでください。
そしてもう一方を捨ててください。
降参や放棄なんて選択肢はありません。
あなたは提示された二つのボタンを、自分の意思で押さなければならないのです。
たとえ不死身だろうと関係ありませんよ。
"ゲーム"で受けた傷は決して再生しません。
魂の強制的に漂白されるので、記憶を保って転生するのは不可能です。
これは必殺技なのです。
だから多少の原則は無視できます。
罠職人の"ゲーム"というアイデンティティーが、ミームの影響力を帯びて成立しているのですよ。
つまりあなた個人のミームでは対抗できません。
僕が生涯を通して作る"ゲーム"を舐めないでください。
「この感覚……どうやら本当のようですね。あなたは全存在をそのゲームとやらに賭けていますね。だからミームも果てしなく強力だ。確かに私の力では無視できない」
認めてもらえて光栄です。
そして、認めたことで余計に縛られましたね。
あなたは既にルールの範疇にいます。
決して逃がしませんよ。




