第32話 生の価値
「いやはや、朝のドライブは良いですねぇ。なんというか、気分が上向きになりますよ。そうだ、ドライブスルーで食事を買いに行きますか」
絶対に行かないからな。
後部座席に首無しの男を拘束しているんだぞ。
ドライブスルーを利用している場合か。
「どうせ店員さんは気にしませんよ。今の状況で普通に働いているのはモブでしょうからね。首無し男でもサイコキラーでも平然と接客してくれると思います」
うーん、しかし……。
本当に大丈夫なのか?
「もし問題が起きたら責任を持って対処しますよ。それよりお腹が空きました。何か食べないと倒れそうです。婦警さんは平気なんですか」
私も喉は乾いているが、別にミームで出現させればいいんじゃないか。
武器を用意できるお前なら可能だろう。
それですぐに揃えればいい。
どんな高級料理でも自在のはずだ。
「おやおや、婦警さんは分かっていませんねぇ。ミームで食事の支度をするなんて無粋ではありませんか。やっぱり食の娯楽は大切ですよ。ちゃんとお店を利用するべきです。そうですよね、うにゃうにゃさん」
「みょへへーん」
「ほら、彼もこう言っています。早くドライブスルーに行きましょう」
その男が何を言っているか分からないのだが……。
お前は理解できたのか?
「まったく意味不明ですよ。ちゃんと話す気がある状態だとマシなんですがね。たぶんふざけているのでしょう」
「そうだにゃーん」
確かに会話はできるようだな。
ただし頭がおかしくなっている……いや、頭はもう存在しないのか。
不死身なのはスルーしたとして、一体どうやって発声しているんだろうな。
「さあ、そこも不明ですね。どういったミームが働いているのやらという感じです。上手く不死身になれる解釈があるなら、ぜひとも真似したいものなのですがね」
不死身のミームか……。
お前みたいな殺人鬼でも死が恐ろしいんだな。
「別に死は恐ろしくはありませんよ。ただ、人間は脆く儚すぎる存在なので、少し補強したいのです。僕はこの素敵な世界をずっと観測したいですからねぇ」
そうやって生き永らえて殺人ゲームの犠牲者を増やしていくつもりか?
「はい。それが僕のライフワークですから」
堂々と言うな。
人間の命は限りがあるからこそ輝くものだ。
ミームに頼ってまで命に逆らうのは間違っているだろう。
お前も私も、人間の範疇で生きるべきだ。
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