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第6話 僧侶ラグレイト1

「お前みたいな辛気臭い野郎は他のパーティーにでも入れて貰えよ! ガハハハッ」


「回復呪文しか使えない僧侶なんかもう必要ないんだよ! これからは賢者の時代だクックックック」


ドマーニとセイバーが僧侶を馬鹿にしている。まるで俺が追い出されているのと同じだ。

ダンジョンでは魔力が滅多に回復しないから魔法を使う事を控えて、戦うことが少ない僧侶や魔法使いに比べて、魔力の消費が無く戦える戦士や武闘家方がパーティー内では立場が高い場合が多い。

そして勇者は魔法を使える上に戦闘も出来るからかなり重宝されて、レベルが一番低くてもリーダーになったりして立場が強いが、僧侶や魔法使いはレベルが高くとも軽視される。

ゲームでは職業による差別はなかったが、この世界ではこんな扱いはよくある事だ。


「レベルを上げさせてやったんだ! 感謝しろ。それだけの高いレベルならもういいだろう、引退でもして教会で働けよ」


ゼストが冷たく言い放つ。


「ちくしょう僕は頑張っていたのに……」


ラグレイトは涙を流す。


僧侶は戦闘職の中でも特殊で、一般職と変わらないぐらい使える職業だ。

なぜならば僧侶は教会でも働ける。武道家や戦士などと比べて、引退しても働くことが出来る。

そしてレベルが高ければ、使える呪文が多くて教会でも引く手あまただろう。


だが逆に考えるとダンジョン探索者(冒険者)の中には僧侶が数多くいて、ダンジョン探索者(冒険者)内では僧侶を使い捨て感覚で使われる場合が多い。


ラグレイトが高レベルという事ならば、かなり前線に出て戦士並みに戦闘をしていたという事になる。

それは魔物を倒さなければ(息の根を止める)マナ(経験値)が入らないからだ。

戦士や武闘家とか勇者そして魔法使いは、高い攻撃力で敵を倒す事ができるのだが、僧侶は攻撃力の高い金属の武器が持てないから攻撃力が低く弱いのだ。

もちろんトライトン(僧侶)持っていたような杖(棍棒)で殴り倒す戦闘方法なのだろうが、魔法使いよりも少し高いだけの力を持つ程度の僧侶だ。他の職業に比べてレベルが上がるのが極端に遅い。


レベルが高くするには二通りある。

一つは単純に前線に出て、魔物を(棍棒)で殴り殺す。

もう一つは遊び人とかのレベルを上げるみたいに、魔物を倒す直前(殺す直前)までダメージを与えてから、他のメンバーに止めを任せる。

俺が『剛剣の牙』のメンバーにしていたやり方だ。


……まあ俺みたいに戦略方法を考えてやっているメンバーとは思えない。だから単純に前線に出て魔物を倒すやり方だろう。

それならば防御力の高い鎧も身に着ける事が出来ず、他の人よりも傷つきながら魔物を倒してレベルを上げたのだろう。

それもパーティー全体の生命力を管理しながらだろう。

誰よりも役に立っていたと思っているのに使い捨てアイテムみたいな扱いされて、涙が出てくる気持ちはよくわかる。

俺も同じ涙を流したばかりだ。


「じゃあな、いままでの宿代は払ってやるから感謝しろ……もう、宿から出て行けよ」


セイバーがそう言うと、ラグレイトを残して酒場から出て行った。



「レグナムどうしたの? 大丈夫? どこか痛いの? 」


ベリーサが俺を心配して聞いてくる。


「あ……すまん」


俺は追放された事を思い出して、苦々しい顔をしていたみたいだ。


「こいつに回復呪文かけてくれるか? 」


「えっ? 」


ここで全員が泡を吹いているプロシードに気付いた。


「プロシード大丈夫? 」


「どうしたプロシード! 」


「やだっ」


仲間のプロシード気絶しているので、流石に3人が慌てだした。

そのまま任せて席から離れる。

こいつ(プロシード)からハーレムパーティーを奪っても良かったが、それよりも……。


「ウッウッ……ちくしょう……なんでだよ」


俺はラグレイトに近寄る。


「大丈夫か? 」


こいつ(ラグレイト)をこのままにはしておけなかった。


「……」


涙を流しながら死んだ目で俺を見る。


「……ちょっといいか? 店を出よう」


「えっ……その……」


俺はラグレイトの腕を掴むと、店の外に連れ出した。


「あの……」


突然見知らぬ魔法使いに腕を掴まれて、店から連れ出されたら戸惑うだろうな。

人が少ない通りに出てところで俺は手を離した。


「すまんな突然で、あそこだとお前が見世物になるからな」


ローレルの酒場だとこいつは見世物になる。

そうでなくともダンジョン探索者(冒険者)は、人の気持ちを逆撫でする事を大好きな奴が多い。

目の前でこんな追放劇を見たら、ラグレイトが泣き終わる前に囲んでおもちゃのように聞きまくるだろう。

こうして考えると、他の人が少ない宿で俺を追放したリベロ達の方がまだマシだと思える。


「あ、ありがとうございます」


「気にするな、俺はレグナムだ」


俺は手を差し出すと、ラグレイトは握手をしてきた。


「ラグレイトです……でもなんで助けてくれたのですか? 」


ラグレイトはすこし警戒している。

まあ普通はそう思うだろう。

ぶっちゃけダンジョン探索者はクソな人間が多い。助けてくれるという事は、その見返りを求めてくる人が多いのも事実だ。


「他人事と思えなくてな、詳しい話はどっかの店にでも入って話すよ」


流石に立ち話で話せる事ではない。俺には今でも他の人には聞かれたくない話だ。



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