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第4話 ナンパ

「ここの席空いている?」


「えっいきなりなに?」


「なにナンパ?」


 俺は女僧侶と女魔法使いが二人で酒を飲んでいるのを発見して、声を掛ける。

 歳の頃なら僧侶が15歳ぐらいと魔法使いが20歳ぐらいだ。二人ともなかなかいい身体をして色気がムンムンだ。


「そっナンパ」


 俺は出来るだけの笑顔を作りながら、二人の前の席に座る。


「えーいきなり」


 魔法使いが甲高い声を上げるが、悪い印象ではないみたいだ。


「いきなりでごめんね?二人が可愛かったから思わず声かけちゃった。美味しそうな酒飲んでいるね、俺にも一口頂戴」


「本当いきなりだね、別にいいけど」


「ありがと」


 そう言うと魔法使いの持っていたカップをもらうと口をつけて一口飲む。

 彼女が飲んでいたのはライクと言う酒だ。日本にある物でわかりやすく言うと、炭酸が抜けたコーラにオレンジジュースを混ぜてアルコールが混ざったような味だ。

 口の中に甘い味が広がる。

 前世で酒の味を覚える前に死んだからよくわからないが、チューハイみたいなものだろう。

 比較的この世界では甘い味の酒ばかりなので、本当の酒の味を知らない俺にとっては飲みやすい。


「美味しいね、そっちのも飲んでみたいな」


 魔法使いにライクを返すと、今度は僧侶の方の酒をねだる。


「いいよ、飲む?」


 渡された酒を口に含むと、メロンとリンゴを合わせたような味がするビュートだ。


「美味しい、ありがと!俺はレグナム、飲ませてくれたお礼に奢るよ!良かったら名前教えてよ」


「ホント?ミレーニアよ」


 魔法使いは胸がデカい。それを揺らしながら微笑む。


「うんマジ!二人が好きなの頼んで」


「えーいいの、私ベリーサ」


 僧侶も甘え声を出す。幼い顔立ちだけど、瞳が大きくまつ毛が長い。


「飲ませてくれたし、二人とも可愛いんだもん、なんでも飲んで」


 こりゃあイケるな。

 俺がここで二人をナンパしているのは理由がある。

 一つは今晩の相手としてだ。

 中学生から28年もこっちの世界で生きているのだから、快楽のために女ぐらいは抱いている。

 この世界では性病などがないせいか、性にたいしては緩めだ。妊娠しないようにするポーション(避妊薬)もあるから一夜限りの相手を相手を探すのは難しくない。

 普通の仕事をしている一般人ならともかく、生死を関わるダンジョン探索者をしていたら、貞操観念なんか持っている方が異常者と言える。

 中には男同士や女同士でやっている奴らもいると聞くしな。

 生死に関わるストレスを打ち消すために一時の快楽を得れるなら、細かいことを気にする奴が野暮ってもんよ。



「てめぇ、俺の女たちに何してんだ」


 三人で酒を飲みだして30分ほどたった頃、男の戦士が俺達のテーブルに現れた。


「あらプロシード」


 ミレーニアがちょっと残念そうというか、めんどくさそうな目をしていた。


「この男知り合い?」


「私たちのパーティーのリーダー、キャハハハ」


 ベリーサは酔っているのか笑いながら答える。


「そりゃ初めまして」


 俺はニヤニヤしながら、立ちあがって握手をしようと手をだす。


「なにニヤニヤしてんだよ」


 男の戦士は俺の握手を無視して俺に詰め寄る。

 歳の頃なら20歳ぐらいだろう。ゴツい筋肉質な身体と190㎝身長は、175㎝の俺を威圧する。


「そりゃこんな可愛い女の子達と酒飲んでいたらニヤニヤもするだろ。この後二人誘って、大人の遊び事をしようと考えていたしな」


「やだーレグナムのエッチ」


 ミレーニアが恥ずかしそうに声を上げる。

 おっ、この反応は悪くないな。


「てめぇ俺の女達だぞ」


 プロシードは俺の胸倉を掴むが。


「おっとブサイクな男は俺に触れるな」


「いてぇ」


 俺はプロシードの手首を掴むと、そのまま腕を後ろ手に捻りあげてテーブルに押し付ける。

 やれやれ、性に奔放だけど嫉妬や独占欲はしっかりとあるからな。

 てか自分のパーティーは全部自分の女かよ?ハーレムとか許せんな。


「えっすごい」


 190㎝の戦士が175㎝の魔法使いに抑え込まれるという姿に、ベリーサが驚きの声を上げる。

 そりゃそうだろ、魔法使いは非力と言う印象があるからな。

 力自慢の戦士が魔法使いに抑え込まれると言うのはとんでもない事だろうが、俺にとっては不思議でもない。

 まずは前世の知識で格闘やケンカの技を知っていた。もちろん漫画とかの受け売りだから初めは使い物にならなかったが、28年もこんな荒っぽい世界で生きていたらそれを元に格闘技を覚えてモノにするのが当然だ。


「駄目だよ、初対面の人に掴みかかったら」


 それとレベル差だ。

 こいつレベルはまともに見ていないが(左手の拳レベル表示)、込めている力的に10から15ぐらいのレベルだろう。

 いくら戦士とはいえ、格闘技を知っているレベル42の魔法使いより強いわけがない。


「おい、プロシードを離せ」


 大柄な女が叫ぶ。格好から戦士だろう。


「あらペルソナちゃん、夜のお供はどうだった?」


 歳は23.4ぐらいで、鼻が高くまあまあの美人だ。

 ただ、ペルソナと言う女戦士はプロシードと同じ体格だ。この世界では男女共に『戦士』と『勇者』と『武道家』は身長が190㎝の同じ体格になる。

 10歳の『就職の儀』が終わると、職業に合わせた身体に成長していくのだ。

 ゲームの世界では戦士と勇者が男女共に同じ防具を装備していた事から、その点は納得できた。

 逆に『魔法使い』や『僧侶』は皆の体格が違う。男でも身長が175㎝ぐらいまでしかなく、女は男よりもやや小柄だ。

 つけれる防具がローブとかのフリーサイズが多いし、唯一着けれる皮の鎧はダンジョンでは手に入らなく、素材を集めて店に渡して注文して作るしかない。

 その上皮の鎧は専用になってしまうから他のキャラクターには流用が出来なかったはずだ。


「プロシードがお前らを呼んでくると言ってな……途中だ」


「ありゃりゃ、そりゃ贅沢な話だな、なあ坊主」


「いてぇ放せ」


 俺は押さえつけている腕に力を込める。

 羨ましい……いや憎らしい。


「なあ、こんな魔法使いよりも弱い戦士よりも、強い魔法使いの俺と一緒にダンジョンに潜らないか? ちょうどパーティー探していてさ」


 俺が彼女らに声を掛けたもう一つの理由が、メンバー探しだ。レベルが低いだろうが、一から育ててもいいかと思っていたからだ。

 もう脳筋になる野郎達よりは、可愛い女の子ばかりのパーティーがいい。

 こいつみたい(プロシード)にハーレムライフなら、ダンジョン探索も楽しみになるだろう。


「えー」


「お兄さんとぉー」


「まあ俺は前衛も出来る戦う魔法使いだから、戦士が一人抜けても大丈夫だから安心して」


 本当に俺は前衛も出来る。

 この世界で生きて初めて気づいた事がある。

 魔法使いと僧侶は金属の武器と防具を装備出来ないが、これは装備出来ないではなく、金属を身に付けると攻撃魔法と回復魔法が使えなくなるのだ。魔法を唱えても敵や味方に届く前に、金属を通して魔力が霧散してしまう。

 魔力が電気みたいなのかどうかは知らないが、使えなくなるのは事実だ。

 ただ金属を身に付けても魔法が使えることが唯一出来るのが、勇者なのだ。それが勇者というレア職業のチートな部分だろう。


 だがしかし逆に考えると、魔法を使う時だけ金属を外せば使えるって事だ。

 鎧とかは戦闘中に外すことは出来ないが、武器が金属の剣や槍ならば魔法を使う時だけ手放せば使える。

 もちろん魔法使いなので、力は戦士や武道家とか勇者などと比べて見劣りはするが、低層階ぐらいなら問題なく戦える。


「てめぇ、俺のパーティーを口説いてんじゃねぇーよ」


 プロシードは俺に抑え込まれて暴れようとしているが、完全に関節が入っているので、どうすることも出来ない。


「俺はレベル42だ。君たちに損は無い話だよ。こんな男よりも満足させれるよ? もちろん、いろいろな意味を込めて毎日でも満足させるよ? 」


 長年ダンジョン探索者(冒険者)として生きてレベル42にもなると、夜の方も高レベルだ。

 3.4人を毎晩ご相手をしたとしてもへこたれるような事はない。


「へぇー」


「やだっそうなの? 」


「えっ……」


 あらやだ、皆なかなかいい反応するじゃん。

 プロシードがペルソナだけと相手をしていたという事は、プロシードのハーレムライフに限界が来ていたかもな、だからミレーニアとベリーサの二人が酒を二人で飲んでいたかもな。


 ぶっちゃけ190㎝の女戦士(ペルソナ)は体格が良すぎて、俺の趣味的にはご相手は勘弁して欲しいが、頑張れないことも無い。

 ミレーニアとベリーサを途中で探しに来たというのは、そろそろプロシードが相手するのに限界だったかもな。

 俺……この戦士(プロシード)の場所を奪えるなら頑張っちゃうよ。






「てめぇーらふざけんな! 」


 プロシードが叫んだと思ったが、その声が聞こえたのは店の奥からだった。



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