第3話 ローレルの酒場
ローレルの酒場。
ここは多くのダンジョン探索者が集まる酒場だ。
ここで仲間を集めて4人のパーティーを組み、ダンジョンに向かう。
一生を共にする仲間を組むことがあれば、その日限りの仲間を組むことがある。
よくラノベなどでよくある『冒険者ギルド』といったシステムはダンジョンを潜るのには関係無く、こういった酒場で仲間を探して個人的にダンジョンに潜る。
つまりはダンジョンに潜るのは自己責任と言うわけだ。
もちろんラノベみたいな『冒険者ギルド』みたいなものは存在するが、あれは前世の職業で言うと日雇い労働者用のハローワークだ。
就職の儀で職業を得たが、調子に乗って自分の身の丈合わない職業を得て持て余してまともに働けないか、ダンジョンに潜る事を諦めた者が働く場所だ。
普通の者なら就職の儀で『鍛冶屋』とか『農民』や『商人』など堅実な職業を得る。
簡単に言うと『勇者』とか『武道家』や『戦士』そして『魔法使い』みたいな職業はダンジョンに潜るしか役に立たず、ダンジョンに潜る事を諦めた者にはただの無能でしかなくなる。
もちろん国の戦力として傭兵や兵隊になって、雇われるのも手かも知れないが、上手く行く保証もない。
貴族とかならば騎士として働けれるだろうが、身分の低く身元を保証出来ない者を雇うほど、国も馬鹿ではだろうな。
「仲間募集を頼む、俺はレベル42の魔法使いだ。希望は仲間の平均レベルが35以上の中層階以上の潜れる奴を頼む」
「なかなかレベル30以上のダンジョン探索者はいないですよ」
受付嬢が渋い顔をする。
そりゃそうだ、レベル30以上の中層階ダンジョン探索者だと、仲間が決まっている場合が多く、募集をかける事が少ない。
中層階以上のダンジョン内で、メンバーが欠けるような事になれば、それは全滅を示す。
そんなパーティーがいたとしてもベテランたちだ。数は多くない。
「まあ希望だよ、無理なら俺を欲しいパーティーを紹介してくれ」
俺は仲介料金の500ギルス銀貨を受付嬢に渡す。
「わかりました。こちらをお持ちください」
木で出来たプレートを受け取る。
番号が書かれており、これで希望にそった仲間がいれば、酒場にある掲示板にその番号が書きだされる。
『剛剣の牙』に入るまでに、半年近くかかったからな。それでもあいつらが当時のレベル20前後のだったから、今回はもっとかかるかもな。
かと言って『魔法使い』はソロではダンジョンに潜る事は出来ない。低層階ならともかく、中層階以上でソロは死ぬ運命しかない。
後は低レベルのパーティーに入るかだ。
レベル10前後なら俺ぐらいの高レベルの『魔法使い』を求めているだろうが、こちらとしてはうま味が少ない。
装備を揃えるだけの金も持っていないだろうし、低層階ではなく、儲けられる中層階に潜れるようになるまでには、かなりの年月を要するだろう。
『回復の守り』のアーティファクトは絶対に必要だ。ゲームでも持つと持たないとでは進める階数が違ってくる。
一から教えるとなるとまた手間がかかり、武器などの装備も揃えるなると、500万から1000万ギルスは必要となってくる。
俺が低レベルから育てたパーティーは『剛剣の牙』だけでは無い。
他にも3組ほどいたが、中層階でほとんど脱落した。
最初のパーティーでは、戦士が死んでメンバーの心が折れて解散。
次のパーティーでは、勇者と女僧侶が恋仲になって、残された武道家が嫉妬から勇者を殺して解散。
その次のパーティーは、40階のボスのドラゴンと対峙したら、ドラゴンでビビッて引退って……。
……うーんろくなパーティーがいない。
後は俺がパワーレベリングで無理矢理レベルアップさせたから、精神とレベルがともなっていない。
『剛剣の牙』も俺が回復の守りと、魔力消費を抑えた戦いを教えたばかりに、ドンドン脳筋化していったんだよな。
あれもレベルにあった戦い方でも無かったかもな。でも仕方がない。俺と同レベルの仲間がいないからだ。
俺は左手の拳に刻まれた焼印を見る。
そこには『42』と刻まれている。これはレベルの表示だ。
ダンジョンで魔物を倒すとマナが体内に溜まり、教会に行くとマナに応じたレベルの焼印が刻まれて、『戦士』と『武闘家』は力や生命力が大きく上がり『魔法使い』や『僧侶』はレベルにあった呪文を教わることが出来る。『勇者』はそのどちらもだ。
俺は……後一つの呪文を覚えれば、『魔法使い』としての成長は止まる。
正確にはレベル50までは力や生命力が上がり続けるが、『魔法使い』としてはさほど意味がない。
俺は早く50階にあるアーティファクトの『転職のオーブ』が欲しい。
あれがあれば『賢者』に転職が出来る。『賢者』に成れば回復呪文を覚えてもっと有効な戦い方が出来る。
そしてレベルが1に戻り、さらなる成長が出来る。
ふっ……。
こうなると俺も脳筋と言われてもおかしくない。
ダンジョンに潜り、結婚もせず子供も作らずに魔物相手に戦う。追放されても新たなパーティーを探して戦い続ける。
『賢者』なんぞにならなくとも、ここまでの高レベルだ。適当な生産系の職業に転職をして引退をすればいい。
この世界で生きていけばいいだけだ。
だがしかし、日本に戻りたい気持ちが強すぎる。
最下層に行ってどんな願い事が叶うと言うアーティファクトを手に入れれば、日本に戻れると思うと夢が諦めきれない。
俺はゲームの世界の中に入っている。
つまりはゴールが存在すると言う事が、俺を諦めさせてくれない。