第2話 ゲーム
実は俺には前世の記憶がある。
前世では日本と言う国で生活をしていた。そこで俺は中学校に通う、14歳になったばかりの少年だった。
最後の記憶によると修学旅行中の、飛行機に乗っている時に空中に掘りだされて死んだみたいだ。
原因はよくわからない。
今考えるテロで爆破されたか事故のどちらかだろうが、知った所でどうしょうもない。
それよりもこの転生して生まれた世界が、死ぬ前にハマって良くしていたスマホゲームの世界にそっくりだった。
そのゲームの名前は『ダンジョンクエスト』と言うゲームで、ダンジョンをクリアしていくターン性のRPGだった。
プレイヤーは最初に4人の仲間でパーティーを作る。
4人のキャラクター選択がありその4人を、『勇者』『魔法使い』『戦士』『僧侶』『盗賊』『武闘家』『遊び人』『賢者』職業を設定して選べた。
そして4人のキャラクター設定したら、そのプレイヤーを操ってダンジョンに潜り、魔物を倒してレベルを上げていき、最深部を目指すってゲームだ。単純で簡単なゲームなので、それなりに楽しめた。
まさかそのゲームの世界に赤ん坊として、転生するとは思っていなかったけどな。
それに気づいたのは10歳時だ。
この世界では満10歳を迎えると、教会で『就職の儀』と言われる儀式を受ける。
その儀式の最中に「あっこれダンジョンクエストだわ」と気づいた。
なにせ頭の中にスマホゲームの初期設定画面が浮かび『勇者』『魔法使い』『戦士』『僧侶』『盗賊』『武闘家』『遊び人』『賢者』などのキャラクター設定が選べたからだ。
ただゲームとは違っていて、選べるのは一人だけ。つまりは自分自身しか選べなかった。
それとリアルなのが、他の職業に『商人』『農民』『狩人』『鍛冶屋』などいろいろとあった。
ここがゲームの世界にと気づいたので、俺はダンジョン探索者になりたいと思った。
そうなると迷わず『魔法使い』を選んだ。
後から聞くとこの世界では、『勇者』と『賢者』と『盗賊』はかなりレアな職業で、誰でもが表示されずに皆が選べるわけでもなかった。
だから俺が『勇者』とかのレア職業を選ばず誰でも選択できる『魔法使い』選んだと言うといろいろな人に馬鹿にされた。
だがしかし、俺から言わせば『勇者』は外れ職業だ。
ゲーム内では必ず最初に『勇者』は一人は作らないといけないから作るが、ダンジョン下階層では使えなくなるキャラクターだ。
低階層では使い勝手もよく、初めはゲームが進めていくが、中階層以降からは役に立たない。
確かに『勇者』は魔法と戦闘がバランスよく使えて戦えるが、攻撃魔法は覚えても中級まで、回復魔法は初級しか覚えないし魔力は少なめの設定だ。
力も『僧侶』ぐらいの力しか無いので、攻撃力が『戦士』や『武道家』には劣る。
ゲームと同じように後に転職が出来るのだとすると、最初に勇者を選ぶ価値は無い。
『ダンジョンクエスト』では初期の設定で魔力が多くて、素早く動ける『魔法使い』が一番有利になる。
元々ゲーム設定の初期値が、なぜか力と素早さが反比例していて、つまり力がある職業は動きが遅くなり、素早さが低い職業は力が増すのだ。
こうして俺は『魔法使い』を選択後に生まれ育った村を出て、ダンジョンのあるこの地に来た。
そして18年、死にかけながらもいろいろなパーティーと組んでレベルが上がった俺は、回復魔法も使えるようになれる『賢者』を目指していた。
『賢者』に転職するためには、50階にある『転職のオーブ』を手に入れなければならない。
だから『剛剣の牙』とパーティーを組んでダンジョンを潜っていたわけだ。
まさか皆が脳筋メンバーばかりになって、魔法を使う事を禁止されるようになるとは思ってもいなかったけどな。
確かにゲームをしている時は魔力消費を極力抑えて、物理戦闘ばかりをしていたけど、リアルで魔法を使わないという選択は無かった。
ここでの死はリアルな死だからだ。
ゲーム内では教会に行き金さえ払えば死者は生き返らせれるが、これはゲームではなくリアルな世界だ。
死者は魔法でも生き返らせることは出来ないし、教会でも死者が生き返る事はない。
ダンジョン下階層の方で手に入れれるアーティファクトを使えば、死者すら生き返らせることが出来ると言う噂があるが、俺は持っている奴を見たことが無い。
つまりは死ねば終わりだ。
ここの世界で死ねば日本に転生する保証すらないし、試すつもりもない。
だから俺は死なないように生き抜くため、自分の考えで戦っていく。
ただ俺がダンジョンに潜る理由は生活のためにだけではなく、ましてや『賢者』に転職をしたいがためにだけではない。
ダンジョンの最下層には魔王がいて、そいつを倒せばどんな願い事を聞いてくれるというアーティファクトが手に入ると言う噂があるからだ。
俺は日本に帰りたい。
日本の生活を取り戻したい。
あの生死を気にすることが無く生活できる環境と、食べる事に困ることのない幸せな生活を取り戻したい。
前世の友人が「異世界ファンタジーに転生したいわ」とよく言っていたが、今思うと本当に馬鹿だと思う。
スマホもテレビもない世界に転生なんか、苦行でしかないわ!
はあ……。
新たな仲間を探すか……。