1話 図書室
こいつバカか?ってぼくのことを多分みんな言うでしょう。そうです。バカです。
よければ最後まで見ていってください!
図書館にて、女の子が本を取ろうとしているが、高くにあって取れないところを男が取ってくれる。そして、恋に落ちる。
そんなシチュエーションをどこかで見たり聞いたりしたことが多分あると思う。
そんなことが現実で起きたところなんて見たことないはずだ。ちなみに、私はない。
「なーなー。みんなって好きな人いる?」
こんなただの恋バナの始まりの言葉のせいで、あんなことになるとは。
「マンガみたいな恋愛とかしてみたい!」
よくぞ聞いてくれたみたいな感じで、あいつは答えた。
アニオタとバカとロマンチストの3つを合わせた、つまり、バカだ。そいつの名前は、栗田ミナ。通称マロン。
「いいんじゃない?」
もう1人バカが乗っかってきた。落ち着いているように見えるがバカ。だけど、えげつない金持ちだ。こいつの名前は、平井コウ。家にリムジンがいっぱいあったから、リムジンって呼ばれてる。
ちなみに、私の名前は佐々木みのり。マロン案で、佐々から、笹でパンダって呼ばれている。
話を戻そう。
「そんなこと言ったってそんなもん、起きないに決まってるってば」
私は言う。
「そんなことないよ! 大丈夫大丈夫。ね、リムジン?」
「まぁ、頑張ってみようか。で、どんなシチュがいい?」
「図書館のやつがいい!」
だめだこいつら全く現実を見てない。勝手にやらしておこう。
「パンダもやろーよー」
「やだ」
ここはきっぱり言っておこう。
「後でいーなーってなっても知らないよ?」
「あーはいはい」
「今度、マカロン買ってあげる」
リムジンが言う。
「じゃあ、やるよ」
食べ物は世界の中心だよね。だから、仕方ないよね!
「よーし、じゃあ、図書室行こ行こ!」
図書室に来た。
「あーーー」
「ん? どした? 急に叫んで」
「この学校の図書室、小さすぎて、一番上まで手が届いちゃうんだけど」
「はいっ、お疲れ様ー」
帰ろ帰ろ。マカロンマカロン。
そう思って、図書室から出ると、いかつい男の団体客がやって来た。
「は?」
ぞろぞろと図書室に入っていく。密です。密です。
困惑して固まっていると、団体客が図書室から出てきた。
なんだったんだろ......
図書室に入ってみ......わぶっ
出した右足が床に着くと思っていたのが間違いだった。この感覚いつぶりだろう......
そう、昨日のことだ。階段があと一段あると思ったらなかった時の感覚だ。
「って、どゆことよ」
図書室の床の高さが40センチほど下がっていた。
「いや、ほんとどゆことよ」
「リムジンに頼んだら、やってもらえた」
「そこも飲み込み難いんだけどさ、それよりも何よりも、どうやったのよ」
「さっき呼んだスタッフの人たちが、紙やすりで頑張って削ってくれた」
きっと、すごい紙やすりなんだろうなー
すっごーい!
私は思考を放棄した。
「これで、上の方の本に手が届かなくなった! やったやった!」
マロンはとても嬉しそうだ。
都合よく高身長な男が、入ってきた......?
いや、倒れこんできた。私とおんなじ感じになったんだろうなぁ......もう雰囲気ぶち壊しだ。君でいいから、さっさとマロンを満足させてほしい。
「あー取れないー」
へっったくそな演技でマロンが飛び跳ねながら、興味の無さそうな本を取ろうとしている。マロン、人間失格はお前だよ。
「やぁ、取れないのかい?」
お、いい感じだ。
「はい!」
「ぼくに任せて」
そうそう。いい感じ。マカロンマカロン。
ドスン
唐突に男が膝から床についた。
「さぁ、ぼくが踏み台になるから!」
張り倒すぞ?? って倒れてるのか。
「ありがと...」
そして、少しときめいてるの何?
「んー。ちょっと届かない......えいっ」
げぼばぁ
聞きなれない音がした。
「取れた、取れたよ〜!」
「マロン、お前アホかぁぁぁぁ」
マロンの足元には残念なことになっている人が横たわっていた。
「あ、ごめんなさい...って、本別に欲しくないわ! ドーン!」
「バーン」
「いや、リムジン、そうじゃなくて、下敷きになってる人助けてやりなよ」
非情にも、投げられた本もクリーンヒットしていた。
「いや、もっと......もっとだ!」
「いや、お前Mかよ」
「よし、マロン、そいつボコボコにしていいよ」
もっとクリーンになって欲しいものだ。
「全然ロマンチックじゃないじゃん!」
「だから、そんなもんなんだって」
逆にマンガっぽいかもだけれど。
「よし、次の案をやろう!」
「もう、やだ」
ハムッ
口に甘く広がる匂いと味と食感......マカロンだ!
「よし、やろう!」
あ......またやってしまった......