仮公開文二ー1
次の日の朝。
起きて朝食を取りに行く事にする。
すると食堂は結構人で賑わっていた。どうしてか周りに聞くと、今回の戦争演習での反省点を踏まえた上で新しい能力を獲る上で他の人の意見も聞こうと雑談するのが主な目的な人が多いようだ。
話すなら談話室的な物に行った方がいい気がするが、それは良いや。朝食を食ったらライチェルさんとさっさと合流しないとな。
とりあえず【明暗視】、を取って闇系因子を取るのと元素系能力の耐性の向上を今回は目指す事にするつもりだが、耐性の基盤に成る物質的な限界はどうやって超えるのだろうか?
例えば炎と氷の因子系のショートカットの方法が対極の力を纏う上で一定量以上エネルギーを取り込む事、だから、自分の体を元素系等のエネルギーで常にコーティングするとか?
…多分やれ無くは無いだろうが、エネルギーが枯渇するような戦闘を行った場合敵からの攻撃への耐性が一気に落ちるなんて事態に成ると思う。やるにしても自然回復量の範囲内でそれがやれる様にし無きゃキツい筈だ。
何か良いのは無いのかねぇ?
…いや、今はさっさと食ってしまおう。
そして黙々と食うこと少し。
…さて、食い終わった。ライチェルさんの所に向かうとするか。
…勝ち負けが決まったらそれで全て終わりって事でも無きゃ後の事は考えて置くべきだ。実際、戦争演習は容赦なく弱点を実戦を通して指摘し合う場に成っている。
実際自分が居る世界を滅ぼすのが目的なその世界に居るラスボスなんて他の世界に行く方法を提示出来なきゃ世界を跡形も無く滅ぼす行為は盛大なだけの自殺と大差ないのだ。
自分が住んでる世界の人を全て滅ぼしてライフラインを全部潰すとか原始的な生活に逆戻りし無きゃ成らなく成るだろうし、じゃあ原始的な生活をしたいと成るなら、自分でそう言った場所に行って勝手にやっとけって話だし、後の事を考えるなら何かしら限定的な話に成るのは何ら不思議は無い。…もしそんなのをゲームシナリオでやったらスケールが小さいとか言われるかも知れないが、それは後先考えていて、ある程度は地に足が着いた考え方ではある気がする。
しかし、ライチェルさんは多世界講釈について触れようとしてたら止められてたけど、多世界講釈ってわざわざ隠す様な内容だろうか?考え方自体は随分前から存在するはずだが…?
限られた情報のみで未来予知の内容を覆したと断言するには未来予知で見た内容と酷似する条件下でその内容を覆す事が一番な筈だが…それなら極論その内容を寸劇でやってしまうだけでもいい気がする。未来予知はその寸劇を指していたのだ。として。
でもそれをやった場合は寸劇なんて未来予知すんじゃねぇよと、何だかもやもやしそうな気もする訳だけど。
そいつが俳優とか芸能人とかでそう言った演技をしている所を演技していると確認出来ない内容で見せられては堪った物では無いのだし…。でも回数も限られた物で寸劇をわざわざ未来予知するとか無駄遣いも良いところなのだし…。寸劇では無く本当はそうなる原因があったのにそれをスルーして対策を辞める形に成るかも知れないので、気休め程度にしか成らない訳だが。
実際未来予知が細かい説明無しに未来の映像を見るだけだとその内容が劇や他者の幻覚の可能性がある…が、それだけしか無かったならば、そうだと判断しようも有る…と言うかそうだとしか判断出来ない。
…細かい説明まで一緒にされる未来予知ならともかく、多少の音声と映像だけでは判断基準が足りない訳だ。
…あー。あれだ。犯行や前提に異能を有りにしてしまうと考察の必要な範疇が一気に広がってしまう。例え前提自体が普通は有り得ない事だったとしてもそれを前提とするなら類似の物も有ると認めなければ成らない。…が、普通は有り得ない隠すべき物が前提に有るのにそれを持つ奴等はどうやって接点を持った?と言う話に成るし、今回の場合、未来予知をそいつが出来ると信じさせる必要が有る訳だから、全て幻術で幻覚なら別件で未来予知に相応する事をその騙す相手に提示する必要が有るのだ。
…駄目だ。思考がループしてる。
纏めると、
未来予知らしき物が全て幻覚や幻術ならそれを未来予知だと信じさせる何かが必要。
未来予知と幻術が両方有るパターンの場合は、方式を合わせないと同じ能力を使ってる筈なのだから疑う材料に成る。
…つまり未来予知をやれる事を知られていなければ独自の方式で幻覚を見せるしか無く、偶然方式が被りでもし無きゃそれを信じさせるのは難しいのだ。
まあ幻術の場合どちらにせよ敵は居る訳だからどちらにせよ行動すべきだが。
それはともかく、殺意又は殺気耐性も欲しい所だが、アレがやってるのは要は恐怖に依る相手の機能停止。闇因子の能力を貫通した所を鑑みるに、能力を発揮させる根本に直接干渉していたと見るべきだろう。…つまりアレを耐える為に要求されるのは特殊能力等のドーピング抜きの素体としてのステータス。…つまり今回の場合は『感情の塔』シリーズの殺意の塔に行って能力抜きで莫大な殺意や殺気に慣れる他は無いっぽい。
神話は事実かも知れないし創作かも知れない。でもその知名度故によく何かを創る上での元ネタにされているから対処するには知っておく価値は有る。…例えば俺ツエー系の創作なんかで名乗ってる奴が居そうな『神々の王』、『天の王』、『国々の王』等の称号を持つアヌと言う神が居るらしい。…軽く調べる程度では要は宇宙を創ってて、断罪の権能が有ることしか解らなかったけども。…でも至上権の保有者って何だろうか?神話とは別の場所に小さく書かれていたが…。
…うーん。言葉通りなら一番上の権利の事だが、それがどうしたと言うのだろうか。
…そこでライチェルさんの居る所に着いた。
「何考え込んでんの?」
「…ああ、はい権利と正義つまり至上権が能力の説明で使われてたのですが、よく解らなくて…」
「至上権…把握。アヌ神ね。要はなにか二つ以上の物がぶつかり合う際に己の権利を最上として常に扱う権能。だから例えば耐性が有る物に対する攻撃は例えその耐性がごく僅かだろうがその耐性が効果を最上に発揮する。要約すると対抗する何かが少しでも有る物は全て完璧に対処する能力。倒すにはそいつが対抗手段を一切持って無い手段か、独自概念で潰すしか無いけど、所有称号的に大抵の事や概念は網羅してると思われ」
「要するに完璧な初見殺し以外では倒すのが不可能な能力って訳ですか」
「肯定。…とは言え、初見殺しすれば楽に勝てるかと言えばそれは違う。要はアヌの攻撃を喰らうと能力でガードしてようが防御力より攻撃力が優先されて一撃死も普通に有り得る」
「うわぁ…」
「それはさておき、耐性獲得始めるわよ。準備は良い?」
「ええ。準備は出来てます」
「なら最初は電気系から行きましょう。死因は克服しとかなきゃね」
そして施設へと入るのであった。
元素系の耐性獲得の手順は基本的に炎と氷の因子の時にやったのと変わらない為、変わり映えし無いので割愛します。
そして、元素系が必要最低限は粗方終わったので【明暗視】を取りに行く事にしようとした所で、いわゆるガス欠に成らない為に自然回復量を増やす事をやることになった。…のだが、【拡張】が自分には有る以上、それを行使する余裕さえ残しておけば自然回復機構を拡張して強化してしまえるらしいのでやる必要が無い事に成った。
さて、今度こそ【明暗視】を取りに行くか。
…そして習得の為の場所に行くと…。
「駄目だ。混んでやがる」
それは当然と言えば当然だった。
対策のために力を獲ようとする奴が大量に来るタイミングなのだし、予約もしてなかった為そうなっても仕方ない訳だが、…【必中】の例から見るに試練が該当能力の攻略で有ろうが無かろうが、獲ようとするチート能力を自力で攻略出来なきゃ話に成らない気がするのだけど…。
「どうする?」
「並びましょう」
「把握。私は【回帰】を取りに行く」
並びつつ更に話す。
「ああ、戦争演習の後始末用の奴ですか。なら試練は何か解ります?」
「肯定。恐らく、一定以上の【回帰】を所持するモンスターを倒せ。に成る」
「生命に対して使った場合不死に成る気がするのですが、倒す方法有るんですか?」
「場合に依る。けど、大抵の場合はその能力が成立する前提を崩せば良い」
「ふむ。前提と言うと、回帰を成立させている能力を受けている素体の方をどうにかする的な感じで?」
「それをする場合は速い話、能力の効果と術者のリンクを切れれば良い。…【隔離】や【切断】等を継続的に使うと可能に成る」
「でもそれ遠隔で力を振るえる奴には効かない気がしますが」
「その遠隔で力を振るうための力とのリンクを基本的には潰せば大丈夫。…逆に言えばそれの意味を理解せずにテキトウに使うだけでは意味が無いと言う事」
「…ふむ。どう能力を使うかを理解せずに能力だけコピーして使用しても無駄と言うわけですか」
「肯定。それは特に考えずとも何でもかんでもやれてしまう能力には無い利点と言える。要は思考停止的なミラーをされても相手側が能力を使いこなせない事に成る」
「…要は細かい手法さえ秘匿しとけば能力をコピーされても普通に優位に戦える訳ですか」
「要は能力の拡大解釈が出来る能力を拡大解釈部分を伏せて通常の能力として対外的には示しておけば良い。…まあ、例えば能力使用時の記憶まで奪われたらアレだけど、奪う前迄は普通の能力だとしか認識し無いだろうから、そもそも論として優先して奪われる対象に成るかは微妙な所」
「…対外的にはいわゆる核と成る能力を拡大解釈をしてない能力と認識させる…ですか。それが上手く行くかは相手の鑑定系の性能次第では有りますね」
「…それが上手く行けば相手が大抵の能力を揃えてる状況ならまず盗られないと見て良いと思う。手当たり次第に盗ってる段階なら総体としての能力数も少ないだろうから普通に対処可能だろうし」
「まあ盗られたらアレなのは変わりませんが」
「盗る系能力で奪った際に起きるだろう試練を避けようと思うなら、一時的になら方法は無くも無い、要は能力の所有権はそのままに能力の使用権を奪えば良い」
「つまり『相手の能力基盤から相手の能力を自分の意思で発動させる能力』ですか」
「肯定。但し所有権はそのままな以上発動起点が相手の中に有るわけだから、相手に離脱されたらその能力を使えなくなる」
「相手を離脱させる目的で使えばいい気がしますね。されなきゃされないで有利に戦えますし」
「但し、例えばそれをゲームで扱う場合は仕様次第でフレンドリーファイア扱いに成ってダメージに成らないと思われ」
「…フレンドリーファイア無効的な仕様が無ければやばいのは変わりませんって……そう言えば未来予知って演技を誤解する可能性が有るんですよね」
「未来予知の内容が未来の映像を少し見るってだけならね。…演技で死んだと誤解させようにもそれが来た後にもう一度未来予知でそいつを見たらそれで普通にバレるから、一時的にしか騙せないだろうけど」
「能力の派生で過去を見たって可能性は無いんですかね?」
「ならその致命的な場面の直ぐ後を見れば良い。演技の場合はそれで判断出来る」
「しばらくの間演技し続けるかも知れませんよ?」
「その演技が終わるタイミングを追加で見れば良いだけね。…と言うか、それ以外手が無いとも言える。仮に遥か未来の対象を見ても老化なりなんなりで本人だと判別のしようが無いからね」
「対象が不老の場合はどうでしょうか?」
「その場合は自分が過去視をやった可能性が浮かんで来るわね。だからそれを見たら絶対安全…とは成らないわ」
「ややこしい…」
「そもそもそれが演技じゃ無かったらこんなのは必要無いわよ。これは演技かどうかを見破るのに必要な手段と言うだけで」
「では…って順番来たか」
「把握。行くわよ」
…実際問題、何時何処でなにが有る…の何時あるかも何処で有るかも解らない内容の何か有ることだけが未来予知で解るとした所でどう防げと言うのだろうか?要は何の変哲も無い背景から場所を割り出すスキルが誰にでも有るわけ無いのに。
時と場所さえ解るならその時だけ対処すれば良いが、それが解らない以上四六時中一緒に居るか護衛を常に一緒に居させるしか無く、何時が解らないのだから期限を決められない以上金持ちでも無ければそれは現実的でも無いのに。
その場合はむしろ演技で有った方が有難くすら有る。
先の話の演技終了時の地点さえ未来予知してしまえばそれで話を終了出来るのだから。
…言い訳を言ってる訳じゃ無いぞ。金持ちじゃ無いと出来ない事をし無いと達成不可能な検案が有ると言うだけの話だ。
要はそもそも論として個体の強さは関係なく、本来其所に居た人員だけでは駄目な結果に成ってしまうからこそ変えようとしている訳だから、他の場所から追加の人員を持ってくるのが手っ取り早い回答に成ると思う。
…さて、【明暗視】の因子の入った【器】因子を渡されたので早速試練を開始しよう。