勇者による光堕ち魔王誕生譚!?
異世界もの初めて書くのでがば設定には目をつむっていただければ。
はい初投稿ですよろしくお願いします。
・・・視界に少しずつ光が入ってくる。何もわからない状態の俺と周りには大切だったはずの人たち。
「やったぞッ! ついに、ついに俺たちの子供ができたんだ!!」
「おめでとうございます! 元気な男の子ですよ!!」
「ああ、×××。この子の名前はもう考えてあるんだ。×××なんてどうだい?」
やめろ、やめてくれ。
「あら、素敵な名前ね。きっと、強く賢く育ってくれるわ」
俺にそんな幸せは似合わない。そんな光景、俺のものじゃない!
「おお、×××くんももうこんなに大きくなったのかい? 子供の成長は早いねえ」
「その年でもうそんなことまでわかるのか! さすが、×××だな!」
「剣だっていつの間にか俺を超えそうじゃないか!! お前は俺の誇りだよ×××」
いやだ。こんなのとっくの昔に捨てたんだ。どうして今になって、、、。
「この国が今魔王の手によって危機にさらされているのは知っているな。とあるまじない師によると、お前は予言が暗示している勇者なんだそうだ。この国を救うため戦ってくれないか?」
俺は勇者なんかじゃない! この世界に、勇者なんていないんだ!!
「わかってる。俺だって、お前を送り出したくはない。戦いなんていらない平和に俺たちだけで暮らしたい。でも、国の危機なんだ。お前の意思は尊重する。よく考えて決めてくれ」
あの時の俺は何もわかってなかった。時をやり直せるなら、あの時勇者になんてならずに平穏な生活を送りたい。
「オマエ、×××っていうのか。変な名前だな。オイラは××。体力には自信あるぜ! よろしくな!」
「私は××。回復の魔法が得意なの。よろしくね!」
「アタイは××。勇者ってのの力はたいしたもんだな! 攻撃魔法ならアタイの右に出る者はいない。魔王には一発食らわせないと気が済まないんでな! 一緒に行くぜ!!」
俺なんかと一緒に来ちゃいけない。仲間なんていらない。予言なんて関係ない。全部無意味だ!
「×××! オイラがここを食い止める! お前しか魔王は倒せないんだ! 行けッ!!!」
「この数はアタイの魔法の出番だね。シャキッとしな×××。みんなで帰って一杯やろうって約束。忘れてないよな!? あんたがやらないで誰がやるんだい!!」
「私だって、戦いに自信はなくても貴方の道は作ってあげられる! ねえ、×××。こんなところでなんだけど、私、あなたを、、、」
みんな、どうして。やめてくれ。俺から離れないで、、、。俺を、一人にしないでくれ、、、
「フハハハ! さすがは勇者。よくぞここまでたどり着いた。いいところにセーブポイントでもあったかな? ハーハハハハ!!」
「しかし、勇者よ。吾輩も魔王の端くれ。酷く狡猾な戦いを得意とする。そんな私がお前のためにこんなものを用意してやったぞ? 勇者である以上仲間は切れまい? ハーハハハハ!」
こいつは間違ってない。間違っていたのは、俺たちの旅だったんだ。俺たちはここにきては駄目だったんだ!
「まさ、、か。仲、間の、、、。首、、ご、、と切る、、とは。貴様、、なかなかやる、、、ではない、、か」
やめろ、何も言うな! 俺は、、、俺はこうするしかなかったんだ!!
「フフ、、フハハハ! しかし、吾輩を倒したところで第二第三の魔王が再びこの地に闇をもたらすだろう!! ハーハッハッハッハ!!」
あの最悪の災厄が去ってから、もうどれぐらいたつだろう。俺が全人類に拒絶されたあの日から。
* * *
「おい、いつまで寝ている? ニンゲンというのは本当に怠惰で動かない生きものだな」
景色が暗転。重い瞼を持ち上げる。彼は嫌なものを忘れるように頭を振り、脳みそを少しずつ覚醒させていく。隣には黒い光の塊と長年愛用した剣。そして滅び去って砂漠と化した故郷が見える。
「人間が生きるのに休養は大事なんだ。お前だって、ヒト型でいるのにエネルギーを使うだろ? 俺たちは形態変化できないから休息をとるしかないのさ」
彼は眠気の抜けきらない頭で答える。彼の言葉に反応するかのように黒い光の塊は明滅しながらあたりを漂っている。
「何を言うか。ワタシはどんな形態でも常に維持し続けられる。 それに、ワタシのことはヤミと呼べといつも言っているだろう」
彼は悪い悪いと気怠そうに手を振る。また、ヤミはその態度が気に入らず激しく飛び回る。それが彼らの日常だった。
「して、ニンゲン。この後はどうする? これ以上行く当てがないならいい加減私を殺しに行かないか?」
「ヤミ、物騒なこと言うな。俺が殺すのは魔王だ。お前じゃない。わかってるくせに意地悪だな」
「そうか? まあどちらにせよこれ以上行く当てがないことには変わらんだろう。いい加減覚悟を決める時じゃないか」
黙る彼にもわかっていた。復讐を誓ったあの日から。ヤミと出会ったあの時から。運命は決まっているのだと。
「俺はもはや勇者ではない。魔王を倒す義理もない。でも、俺は俺に誓ったから。、、、ヤミは、いいんだな。自分がいなくなることになっても」
「いいも何も、ワタシはこんな形でこの世界に存命していること自体望んでいないことだ。お前のようなニンゲンと触れ合っていることもな」
そういって笑う彼女を見て彼は決意を固める。もう何も思い残すことはないとこの故郷の地を離れるのだった。
* * *
「みんなー!! 勇者様だ! 勇者様が帰ったぞー!!」
仰々しくわめきたてる国民に迎えられ、失意の中彼はただ茫然と歩いていた。これは、彼が魔王と対峙してから一月後の出来事だった。
「陛下! 勇者が、帰還いたしました! 現在、城内の医務室にてメディカルチェックを受けているところでございます!」
報告を受けた国王、マダラは苦虫をかみつぶしたかのような表情だ。なぜこのタイミングで、と舌打ちを一つ。仏頂面のまま兵士にこたえる。
「パーティーのメンバーは? まさか、勇者だけか?」
尋ねられた兵士は暗い顔でうつむく。それは兵士自身にも受け止めきれない辛い事実だった。
「残念ながら、そのようです。魔法使い、戦士、僧侶の誰の姿も確認できませんでした。勇者様も、茫然自失としているご様子です」
マダラの表情が一変、新しいおもちゃを与えられてはしゃぐ子供のようににんまり笑う。
「そうかそうか。奴は一人とな。賢人会を呼べ、今すぐにな」
マダラの頭には完ぺきなプランが浮かんでいた。人間としてあってはならない、魔王を超える力を手にした存在。一国の兵力そのものに匹敵する規格外。それを封じるプランが。
しばらくして、6名の老人が会議室に集まる。マダラが最後に入室し、話を切り出す。
「賢人会の諸君。この度は突然の招集にかかわらず、よく集まってくれた。今回の議題は知っての通り生還してしまった勇者の処理についてだ」
室内が静まり返る。しかし、マダラが再び口を開く前に異議を提示するものがいた。
「陛下。勇者は圧倒的な力を持つが故、危険なのは重々承知いたしております。しかし、だからこそ我々の手駒とし利用すべきではないですかな」
再び場を静寂が支配する。今度は、緊張によるものだ。場にいる全員がマダラに逆らってはならないことを知っているが故の静けさだ。張り詰めた琴線のような空気を動かすのはマダラだ。
「なるほど、貴様はたしか以前も勇者の処分に反対しておったな。それは大いに構わん。が、処分は決まったことだ。これ以上の反対は身を亡ぼすと知れよいな」
誰もが、異議を提示できないままマダラは会議を進める。
「わかってもらえたようで何よりだ。さて、いかにして勇者を処分するかだが、私から提案がある。それは、」
一拍おいてから、マダラは用意していたプランのありのままを話した。
「「「「「「!!?」」」」」」
誰もが予想していなかった最悪のプランを目の当たりにした全員が戦慄する。誰もが慄いて言葉を発することができなかった。
「意義は、ないな。よろしい。今回はここまでだ。以後、賢人会には指示通り動いてもらう。期待しているぞ」
そういって、マダラは立ち去って行った。それから3日。全国民は勇者が仲間の首を跳ね飛ばす残虐非道なシーンを見せつけられることになる。
* * *
過去の感傷に浸っていた彼を現実につき戻すかのように立ちふさがる巨大魔獣。人呼んでベヒモス。それは出現が確認され次第、近隣諸国が全兵力を挙げてようやく討伐可能な凶悪な存在だ。
「おい、ニンゲン」
「わかってる。行くぞ、霊刀・ヤミ!」
しかし、その程度彼の敵ではなかった。その樹齢1000年はあろうかという丸太ほどの巨大な首を一刀のもとに切り伏せる。崩れ去る巨体が大地を揺らし、そして沈黙。進化の頂点に君臨し宿敵など存在しなかったその魔獣は敗北を知る間もなく消え去った。
「お前、なかなか私の扱いがうまくなってきたじゃないか。今の斬り方はよかったぞ」
彼の手の中にある漆黒の太刀が声をかける。その太刀は徐々に姿を変え一人の人間をかたどっていく。
「ヤミがヒト型なんて久しぶりじゃないか。どんな心境の変化だ?」
「なんだ、私がこの姿になってはいけないのか? まあ、実際私はこの姿が好きではなのだがな。本来私の姿はこれなのだ。私の旅ももう大詰めなのに心がいつまでも昔のままではな」
人の形に変わったヤミは眼前にそびえる魔王の居城をにらみつける。稲妻の走る曇天に頭を隠した巨塔が圧倒的存在感で二人を迎え入れる。
「流石に広いな。こんなところに一人で住んでも寂しそうだ」
「ようこそ我が家へ。友人を招待するのは初めてだし茶菓子もない。さらに言えば私がここを訪れるのも初めてだが、ゆっくりしていってくれ」
こんな寂れて暗い場所でゆっくりなんてごめんだと首を振り彼は視線を上に向ける。どこまでも続く階段に嫌気がさしながら一歩ずつ上がっていく途中遭遇するあらする敵を打倒しながら。
「そろそろ半分くらいか? もうだいぶ上ってきたつもりだけど」
「もう関係ないみたいだぞ? 私はすぐそこで待ってるみたいだ。お茶の一杯でもあったらよかったが」
何時間も止まることなく進み続けた二人の前に開けた空間が現れる。そこにいてはならない者たちと一緒に。
「やっと、会えたね。久しぶり」
「ッ!! お前は、お前らはああ!!」
彼の背なかを稲妻のような衝撃が駆け巡る。会えないはずの、仲間たちにまた出会えた衝撃は彼にとってとてつもないものだった。
「オイラのこと、覚えてたか? ニシシッ!」
「アタイもいるよ! たく、久々に会えたってのにメソメソしてんじゃないよ!」
感激に言葉も出ない彼は、この状況の中でふと考える。なぜ彼らはここにいられるのか、と。彼らがここにいてはならないのは、自分自身のてでそんな存在に仕立て上げた張本人が一番よくわかっている。
「ニンゲン、一応言っておくがこれは本物の生命体で、幻覚ではないしゾンビでもない」
わかっている。彼らと一番長く時間を共にしたからこそ、本物であることもわかってしまっていた。
「知りたい? 私たちが、なぜここにいるのか。それも2代目魔王と一緒に」
「フン、貴殿が勇者殿か。貴殿には3代目魔王が大変ひどい仕打ちをしたと存じておる。その節は本当に済まないことをした。身内の責任は身内で方をつけるべきだが貴殿の活躍によって、奴は裁かれたという。どれだけ感謝してもし足りないところだ」
彼は過去最大の葛藤に見舞われていた。状況から、仲間たちが魔王側についたというのはほぼ間違いない。しかし、自分とヤミに魔王を倒すと誓った以上放り出すわけにもいかない。
「単刀直入に言おう。我々と手を組まないか? 貴殿は今まで貴殿に対しニンゲンが行ってきた仕打ちをいちばん知っているはずだ。そんな彼らに守られる資格なんてない。そうではないか?」
「私たちも聞いたわ。今までよく頑張ったね。もう一人じゃないのよ。私たちと行きましょう?」
それでも彼の決意は固かった。どれだけ大切な人がいても、変えられないものがある。ここを曲げてしまえば自分は自分でなくなる。彼はそれを知っていた。
「答えはNOだ。すまない、お前ら。また俺に斬られてくれ。行くぞッ!! 真・霊装 ヤミ!」
「その答えを待っていた。ちっとも心配なんてしてなかったからな!」
ヤミが彼の叫びに呼応し、その姿を変える。困惑した様子の仲間たちと魔王を置き去りに彼は立ち上がる。
「待てッ! なぜだ!? 貴殿が欲しいものは何でもそろえる。仲間もいる! 断る理由なんてないはずだ!! ん? お前は、、、ワタシか?」
「「ご名答! さあ、審判の時だぜ!!」」
痛烈な踏み込みから一瞬、懐に詰めた間合いからの掌底の一撃。異形なるものの強靭なアギトを粉砕しその衝撃は天を裂く。
「俺は、、、俺たちは復讐の魔王だ!!」
* * *
「あれは、、、人?」
それが、僕と彼女の出会いだった。僕が街の人間に追われ、山でただ死を待つだけだった時。見つけてくれた、支えてくれた彼女。
「た、助けてくれて、ありがとう!! あなたってとっても強いのね!」
集落に現れた猛獣に襲われていた彼女を守ったとき、僕は一生彼女の騎士になろうって心に決めた。それから、幸せな暮らしはしばらく続いた。
「あなたって、勇者だったのね。非道にも仲間の首を切り落とし、敵の死を弄んだって。でも、私そんなの信じないから! 村の誰がなんて言おうと私は私の旦那さんを信じてる!!」
集落にあの噂が伝わったとき、彼女は必死にかばってくれたっけ。お義父さんになんど殺されかけたか。結局みんな彼女に折れて、僕を信じてくれたんだったな。
「あなた、、、あの子を、、あの子だけは、助けて、、あげて、ッ!」
狩りに言っている最中の出来事だった。まるで僕がいなくなる瞬間がわかっていたかのように狙いすました魔獣たちの襲撃。守り手を失った集落は僅か数舜程度で陥落した。僕が戻ったとき、ほとんどの人は死んでいるもしくは瀕死で虫の息だった。彼女の最期の言葉もこの時だった。
彼女に僕らの子供を託された僕は魔獣の巣を探し回った。その先で見つけたのは悪魔に弄ばれる息子頭だった。生後1年と半年だった。悲しみに耽っていた僕の前に現れたのがヤミだった。
「ニンゲン。お前復讐したくはないか? こんな環境を生み出したすべての敵を、この世界を。ぶっ壊してやらないか?」
その時から、俺は過去を捨てた。
* * *
「ば、かな、、。この私が、、一撃!?」
「なぜって、聞いたよな。お前はこの世界すべてがお前の手中にあると思ってる。でもな、全くそんなことはないんだよ。お前は俺がどうしたら外に出るのかわかっていた。どうしたらここにたどり着いてくれるか知っていた。それだけじゃ何の意味もなかったんだ」
周りから光の粒子が散りだす。魔王城と仲間たちの体が少しずつ薄くなっていく。
「せっかく会えてもまたお別れだな。俺はまだやることがあるからここに残る。またどこかで会えたら面白い話でも聞かせてくれよ」
陽気に手を振る彼を般若の形相で睨みつけながら実体を失っていく仲間たち。光に変わりきるころ彼らの怨嗟のこもった嘆きをすべて投げ去ってヒト型になったヤミを見る。体は少しずつ光の粒に消えつつある。
「僕は結局ヤミのこと、知らないまんまだったよ。でも、ヤミと一緒にこの世界を旅できてよかった。お前がいてくれたから俺は一人じゃなかった。ありがとう」
「お互い様だ。ニンゲン、いや魔王様。私がいなくても、孤独死するなよ?」
「ああ。ところで、お前は魔王の魂の一部なんだよな。俺が魔王になればお前はこの世界にいられるよな。悪い、最後に俺のわがままに付き合ってくれ」
そういった彼が手にするのは魔王の心臓だ。何のためらいもなく一口。激臭とひどい味に耐えながら。新たなる力をかみしめる。
「はあッ!? 何やってる!! 吐き出せ! この馬鹿!!」
「うるせえええ! 俺が魔王だ!!! 文句あるやつは、俺が全部ぶっ壊してやる!! 、、、だから、ずっと俺と一緒にいてください!」
溢れんばかりのパワーをその身に受け壊れかけてボロボロになりながらの彼の愛は、、、
「ッッッ ///!!?」
「伝わったようで何より。 返事はいつでも、いい、、、から」
全身の力が抜けたかのように倒れこむ彼を支える彼女。
「バカ。」
涙が頬を伝うのを感じながら少し微笑む彼女は。彼が起きるのをただ、待っていた。
* * *
あれから数千年。俺たちは小さな村から始め街を作り、やがて一国を持つようになった。様々な魔獣を生み出し、交配させ知能を持った魔獣、魔族を生み出した。俺たちの国の魔族、隣国の人間。お互い友好的な関係を築き上げ、今では魔族の存在は一般的となった。
どれだけ月日が経ってもかつて俺が失った大切な人と仲間たちのことを思い出す。でも俺にはヤミが、最高の奥さんがいる。
「さあ、そろそろ行くか。ハニー?」
「なんだ唐突に。気持ち悪いぞ、、、あ、なた」
起きたことを忘れられないのはまだ俺が人間だからなのか。でも、悪いことばかりじゃないそうやっていえる人生を俺は生きてきた。
「俺が、魔王だ!!!」
趣味全開の作品となりましたが、いかがでしたか?
気に入ってくれた方とはきっと話が合うので一緒に飲みましょう。
この作品はふと思い立って設定を練るわけでもなくバッと書き上げたものなので、短編なのにあれ、ここ足りなくね?と思う箇所がいくつかあったかもしれませんが、私の頭の中にしかございません。探さないでください。
私のテンションと反響と相談しながらスピンオフが出るかも?
以上、ありがとうございました!
by赤坂卵豆腐