18話 出航
「ヒトダマ?なんだそれ……」
「怨念が具現化したものって感じですかね、正直なところよくわかりませんけれど確かにあれは人魂に似ています」
「うーん、わからないや。取り敢えずやばそうなオーラを感じるし斬った方がいいよね」
レイ・ディザスターの体の中から出てきた「ヒトダマ」のようなもの。
対峙しているだけで体が重くなりそうだ。瘴気みたいなものとでも言うのだろうか?
『ククク……どうも、ご機嫌いかがかな』
「喋ったぞ!」
なんだあれ、一言一言聞き取るだけでもかなりの疲労だ。このまま行くと誰か倒れるんじゃ……。
「安心しろ!私に任せろ!」
『お前が俺を倒すのか?無駄だ!聖剣の力を持ってしても俺は滅びん!』
「やってみなきゃ……わからない!くらえ!極大聖斬!!」
真面目な場面だけど……ラクトさんの技は一体どんな当て字してるんだ…。
眩いばかりの光の粒子が聖剣へと集まり力となる。勇者ラクトは光を纏いしエクスカリバーで全力の斬撃派を放つ。
『ふん!生温いな』
しかし斬撃はヒトダマをすり抜けた。躱しすらしない、まるで何ともなくラクトさんの攻撃は効いてないようだ。
『お遊びは終わりか?なら私は次の宿主を選定することにしよう……む?そこの小娘、なかなかの器だな』
ヒトダマは柊の方を見る、実際に相手の視線が見えるわけではないけれどそんな気がした。
「なに?私が……なんなの?」
柊は困惑している様子だ。
『ふむ……よし!次のアルジはお前に決めた!』
「え…!?」
ヒトダマそうして柊の方に急接近して──
「来ないでーーーーーー!」
バゴッ!
ヒトダマは柊の拳により強烈な一撃を受けた。気持ちい音がする。
『う……まさかこんな小娘に、無…念」
ヒトダマガ消えた…!
呆気なさすぎないか、あんなボス的な雰囲気出して恥ずかしくないの。
「ええ、なんか殴ったら消えたよ!どうゆうことー」
「打属性が有効だったのかな」
「そういう風には見えなかったですが…まぁ終わり良ければすべて良し、でしょう!はははは!」
「終わりか?今ので……」
後ろから、音がした。
『ギ…ギギ』
「まさか!」
『システム整理中……オールクリア。異常ナシ、再起動完了。「ピース・レイ」復旧完了』
完全に…回復したようだ。
「終わってないみたいだね」
「また暴れられたら如何にもならない!」
「ヤベーな」
しかし何かが、様子がおかしい。違和感と言うのだろうか。
そしてその違和感の答えはすぐにわかった。
「GoodMorningミナサマ……私はピース・レイ。ピース、ト呼ンデクダサイ」
「……?」
ーーーーーーーーーー
「それで、お前はあのヒトダマって奴に操られてたって訳か」
ピースが言うには、ある日突然ヒトダマに襲われた。それで気付いた時には今起きたっていう。
つまり憑依されてた間の記憶は全てないということだ。
「ハイ、私ノ目的ハ平和ナ世界ヲ築クコト。師、Revert博士ハイイマシタ。『お前の力は世界を守るためにある。お前は戦争を終結させる最終兵器「平和の光線だ』ト」
だけど、その力が逆利用されていた……。
平和を願っていたのに実際は人々を脅かすディザスターに成り果ててたって訳なのか。とんだ皮肉だろう。
「全くその博士ってのは凄いものを作ったね……」
「そうだな、市民に被害が及ぶ所だった……どうするんだ?」
「ソ、ソレニツキマシテハ……」
「まぁいい、とりあえず其処からはこの領地の人と話し合うといい」
「そうだな、簡単に許してくれる訳はねーと思うけど、今のお前なら出来るんじゃないか?本当の平和の実現ってやつをさ」
「………ハイ。分カリマシタ」
機械なのにかなり落ち込んでる、心を持っている…のかな。
「とりあえず私はこの件を領事様に報告します!さらば!また会えると祈って!」
「うん!ラクトさんまたね!」
「頑張れよ勇者サマ!」
「お世話になりましたー!」
……これで、終わりか。
「アイネさんは別れの挨拶しなくていいんですか?」
「また会えるよ、きっとすぐに」
「そんなものですか…」
「うん」
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ピースの件については、領事の行動が早く三日程で色々と収束したらしい。
大和大陸行きの船も滞りなく主発できるみたいだ。
そして当の本人……本機?のレイは今……。
「GoodMorning.マスター」
何故か僕のライセンスカードの中に居座っている。どういう訳かは知らないが、僕が選ばれた。
カードの中にいる、と言っても意識を写せるようになってる感じで、本体は今旅をしているらしい。
「平和ヲ探ス旅ヲシタイノデス。ソシテ貴方達ニモ興味ガアル。貴方達ノ旅ヲ見ルコトデ何カガ変ワル予感ガシマシタ」
……ということらしい。この件もあってか世界中に頒布しているレイは大人しくなり、今後人間達と共存出来る数少ないアーリエになるのではないかと専門家の間では言われてるらしい。
「おーい!おにぃ!船もうすぐで出港だってー!」
柊だ、僕を呼びに来たらしい。
「うん!今行きます!」
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「んーで、まぁなんだ」
「そうだな、なんというか……」
船内・客室。大和大陸に渡る人が多いということもあり、船員さんから相部屋になるとは言われたが…。
「またこんな直ぐに会うことになるとは私は思わなかったな」
まさか相部屋の人がラクトさんなんて思いもしない。因みに柊とアイネさんは別室でここの部屋にいるのはネルさんとラクトさんと僕だ。
『また会えるよ、きっとすぐに』とアイネさんが言った言葉を思い返す。最初から計算づくだったかはわからないが、今ここにある状況がその結果だ。
まさかあの言葉が本当になるとは……。誰も思わない。
「そうだ、アーサーはどこに行くんだ?気になるぜ」
「ん?私はだな。大陸の中にある大和国……ある家に用事があってだな」
「お、じゃあ途中までは一緒に行かね?」
「ああいいぞ。私も一人旅は退屈だからな、ところでそっちはどこに?
「うーん、言い出しっぺのアイネさんにきかねぇと分からねーな」
大和大陸か。聞いた話だと江戸時代くらいの日本みたいな感じだと推測できた。そして大和大国、近くにディザスターがいるって情報も。……面倒ごとに巻き込まれなければいいんだけど
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「まじかよぉ〜…警察のくせに証拠がなけりゃ動けないって、こっちは愛する子供達が居なくなってるんだぞ…」
中村家の母、桐は項垂れる。
ヒジョーに困っていたのだ。
何故かって?
海外出張から帰って来てみたと思えば、家の中はがらんとう。手がかりも秋のア字も無かったし柊のヒの字も無かった。
彼女が頑張って仕事をしているのは愛する子供達の為だ、それが居なくなってるとなったらもうどうしていいか、どうしたらいいかとにかく不安で仕方がなかった。
家に帰る。
ふとテーブルを見る。
「…ん?あれ、なんだこれ。手紙だな……この前私が送った。二枚入ってたはずなのに…一枚無い…?一枚無い!」
彼女は大急ぎで荷物を広げる!そして鬼の形相で探し回る!
そこにはあるはずのものが無かった……。
「おいおいおいおいまじかまじかまじか!あんな落書きで向こうの世界に行ってたとかじゃ笑えないぞ!」
まさかそんな筈は、そんなはずは!
……「行くか」と彼女は言い呪文を唱える!
「スキル!瞬間移動──
待ってろ!今すぐ助けに行くからなあああああああぁぁぁ!
第一章完結!次からは第二章となります!10万文字超えてやっとチュートリアル終了って感じです。
ここまで読んでくれた方ありがとうございます!
これからにご期待()くださいませ。