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中村(仮)  作者: 柚根蛍
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16話 我が名は

 シェルター内の奥の室内、そこではレイ・ディザスターを追い返すための作戦会議が行われるところである。


「さて、冒険者様。お集まりいただき、ありがとうございます」

「まぁこんな状況、放って置けないしね」

「俺らの仲間にも危険が及ばねーって訳でもねーしな」

「ははは!私に任せれば百人力だ!」


 会議の司会役…この地の領主は冒険者たちを見て、焦りを感じた。

 この部屋、冒険者たちが三人。それ以外には誰もいなかった、いくら相手よりレベルが高いからと三人程度でなんとかなるものではない、勝利の望みは予想以上に薄かった。

 そして他に冒険者が何人いようともディザスターを追い払える見込みは、絶望的に少ない。そういう相手なのだ、ただのアーリエとは次元が違いすぎる。


「念の為、レベルを聞いておきましょうか」


 正直このような状況では関係ないと言いたいところだが、もし何千Lvもある冒険者がこの三人の中にいるとするならば、なんとか勝てる見込みはあった。あくまで理想論だったのだが。


「3253だよ」

「1782だな」

「650だ」


 その返答は驚くものであった。


「さ、さささ…三千!?超ベテランの冒険者様ではありませんか」

「そうだよ、事実だからね」


 圧倒的強者がいるというだけで、なんとも心強いのだ。

 しかし…


「650とは…。アナウンスで呼んだのはLv1300以上の冒険者なのだが」


 その返答に対しても動じる様子はない。


「ふふふ…私を誰と心得るか!我が名はラクト・リアン・セス・クローク・アーサー!アーサーの勇者と言った方がいいかな?」

「あ、あああ……あなたがあの勇者!…特に実績は聞きませんが、確かにそれはすごい!いいでしょう、許可します!」

「わかっていただけたようで何よりですよ……我が剣、エクスカリバーの前に敵など無いに等しいのだから!」


 これはもしかすると、勝算があるのではないか…!


「よし!では今から作戦会議を始めましょう!まず──


 領主の言葉を掻き消すように、爆音が響いた。

 そしてテレパシーが何処からともなく脳内に送られてくる。


『貴様ラニ宣戦布告ダ。タダチニ主要戦力ヲ掻キ集メ、挑ンデコイ。私ノ名ハ「ピース・レイ」Revert博士ノ創リシ最高傑作。逃ゲル事ハ死を意味スルト思エ』


 どうやらここにいる事はお見通しのようだ。


「どうやら……親玉はもうすぐそこに居るみたいだよ」

「参ったなこりゃ、行くっきゃねーな!」

「正義がある限り、不屈!ここにいる民は守ってみせる!」


 そうして、三人はシェルターの外へと向かったのであった。


「行っちゃったよ…まじか、どうしよう」


ーーーーーーーーー


 シェルターの外、三人はバザールを出るとまず周りを見渡す。何かが壊れた跡はない、先ほどの爆発音は脅しでまだ向こうは攻撃を仕掛けていないようだ。


「アレを見ろ!」


 ラクトが指差す方向には、バザールの入り口の門。その先にレイはいた。


『来タヨウダナ、三人デ最高戦力ナノカ?……データスキャン、ステータス情報ノ解析開始……カンリョウ。脅威度ハ合計5000デ判定Aランク。ノープロブレム』

「どうやら余裕かましてるみたいだね」

「ああ、データで計ったなんて信用ならねぇな」


 二人のセリフに続きラクトは勇ましく天に剣を突き立てる。鞘から抜かれたエクスカリバーは光を放つ。


「ピース・レイよ!我が名はラクト・リアン・セス・クローク・アーサー!!本当の脅威と言うものを思い知るが良い!」


 ラクトは剣を構える。その刀身は力を込めるほどに輝き、硬度、鋭さ、長さが増す。剣に魔力を完全に注ぎこめるだけ注ぎ込んで強化をする。


「くらえ!絶対正義の剣アブソリュート・エクスカリバー!」


 ラクトは力強く握りしめた聖剣エクスカリバーを地面に叩きつけると、その衝撃波は一つ一つ衝撃刃となり、レイに無数の斬撃となって降り注いだ。


『Danger!!Danger!!勇者ラクトノ脅威度上昇。判定AAランクト認定、直チニ救急システム発動』


「やったか!?」

「いや……お前の斬撃は確かに凄かったが、それだけじゃまだまだみたいだぜ?」

「あれは…厄介だね」


 ダメージを負い、ラクトを危険だと判断したピース・レイは緊急防衛システムを作動させる。

 それに従い、どこから現れたのか、ピース・レイの周囲にはドローンが飛び交い始める。


『アタックドローン解凍完了、ガードドローン解凍完了、ヒールドローン解凍完了』


 攻撃型、防御型、回復型のドローン三体、それぞれ三メートルばかりの大きさであり、そこから覗く目は何故か生き物の存在を漂わせる。


「やべーな、あれは。完璧な布陣ってわけか」

「面白いよ、それでこそ私が輝く!」


 対峙する二人、と四匹。

 両者の間に立つ者が居たら、その気迫に気絶してしまうだろう。


「かかってこい!貴様の相手が私の役目だ!」

「ドローンは俺に任せとけ!」


『アタックドローン、攻撃……殲滅』

『ガードドローン、防御……鉄壁』


 二匹のドローンが展開する。

 それをネルが杖で殴りつける。単調な攻撃だが、レベル差もありダメージは相当なものだったようだ。


『攻撃……撃沈」

「防御……崩落」


 そしてドローンは気絶した。もう一匹、回復ドローンはどうするか。

 ドローンの方を見る。


『!!戦闘苦手……大敵、逃走』


 逃げたか、まぁその方が助かるしいいか。


『グ……ドローンデモヤラレマシタカ!ロックオン!ロックオン!」


「させるか!私の剣は全てを断ち切る!迷いなど、元よりない!行くぞディザスター!」

 

 勇者ラクトの眼には曇りや無駄な感情などは一切ない。勝利を信じ貫く心と、その剣がある。それだけで彼は強いのだ。

 

『センサー異常、ヘルプ。……補足、標準ハ…』


 レイの側面に浮かぶレーザー砲は、ラクトを狙っている。


「一体どういう事だ…!?」


 ラクトは焦る、それは己に向けられた砲口ではない。


『地下ノ内二人。異常性魔力確認……ロックオン完了、砲撃準備ヲ開始シマス…」


 シェルターに向けられた砲口に、ラクトとネルは冷や汗を流した。

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