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中村(仮)  作者: 柚根蛍
11/38

10話 新しい仲間?

「あー、きみたち。きたんだねぇ」

「あ、今日はノーデムさんですっけ」

「うん、それときみたちが来たら伝えとこうと思っていたことがあるんだよねぇ」


 ギルドで受付をしているこの人、この前会ったデーモンの方で、名前はノーデム。ノーデムさん含む受付嬢の三人はそれぞれ日替わりで受付をしていて、それ以外の日は雑務、書類の管理などをしているらしい。

 それにしても伝えたいことって…何かあったっけ。


「ええと、何ですか?」

「パーティ募集の件なんだけどねぇ、二人。きみらに会ってみたいって人がいるんだよねぇ、どうかな?」

「いいと思うよ!」

「え、あの募集で来るんだ…。えーっと、はい。僕も構いませんが」

「それじゃあ先方と合う時刻はどれくらいにする?できれば早くて明日、早い時間帯の方がいいよねぇ」

「明日…の、お昼くらいでいいですか?柊」

「うーん、わかった!」

「昼…正午くらいでいいかなぁ、先方にもそう伝えとくからねぇ。待ち合わせは上の階の客室でいいかな」

「はい それでよろしくお願いします」

「はいはい、それじゃあ終わったクエスト完了しちゃってねぇ。最近頑張ってるよねぇ」

「だよね!おにぃと頑張ってお金貯めてるんだー!」

「そう言ってくれると嬉しいですね、あ…これでLv16だ」

「あ、本当だ!」

「お、んーじゃあ新しいスキル解放できるねぇ」


 スキル…これで4個目だっけ。戦闘系でも技能系でも習得すればかなり役に立つから解放するに越したことはない、けど。


「私、またランク1のスキルが出そうだなぁ…」


 柊は三回習得して三敗。ステータススキルだ。いや、ステータススキルが悪いというわけではないがランク1となるとかなり心もとない、それでも関係ないほどに柊のステータスは伸びているのだが。

 とりあえずスキル解放をタップする…出てきたスキルはこんな感じだ。


魔法倍率マジック・インクリースlll

魔法が基礎値の200%+


 これはステータススキルだろうか…?説明の通りだとしたら今の魔法ステータスに対して倍率+2倍だから3倍のステータスになるという計算だ…これはかなり強力では?


「おお、ステータススキルの中でも強力な倍率系のスキルだねぇ。実質今までの三倍ってわけだよねぇ」

「これは嬉しいですね。それで…柊のスキルは?」

「私はこんなかんじだったよ!」


攻撃倍率アタック・インクリースll

攻撃が基礎値の100%+


「あれ、柊も似たようなスキルですね!」

「うん、ランクは違うけどお揃いだよ!」

「柊の攻撃は…2倍だけど僕より上昇率が大きいですよ」

「基礎値が高いから、お兄さんより効果が強力だったみたいだねぇ」

「うん!なんかすっごく強くなった感じ…」

「僕も、なんというか…感覚的なものっていうか。確証はないですが強くなった気がします」


 体の奥からこみ上げてくるこの感覚、とても不思議だけどなんか心地よくて…成長したのかなって思える。

 まあ、大半はスキルのおかげな訳なのだが。


「それじゃ、僕たちは用も済みましたのでまた明日来ることにします」

「はーい。明日はグラニアちゃんだからよろしくねぇ」

「デーモンのおねぇさんまたねー!」

「ノーデムって名前があるんだけどねぇ…まあいっか、元気でやってね」


ーーーーーーーーーー


「それで、どうしますかね。明日までにまだ時間もありますしどこかでも行きますか」

「んーと、じゃあ狩りに行きたいかなぁ」

「狩りって、もうすぐ夜なんですが…しかし一体何を?」

「んー、今日倒したレイの群れ。なんか大きい個体が居たから気になっちゃって」

「あぁ五倍くらい大きいのが確かに。あれが大量発生の原因だと?」

「いやぁなんか強そうだから倒したかったなって」

「…レベルサーチ能力を持った人から聞いた話だとLv500くらいでしたよ。流石に今の僕たちにかなう相手ではないと思いますが。この街にいるLv500越えの人も十数人いるかくらいでしたし。ほら、冒険者学校で会ったエル教官もギリギリ500だったとか」

「え!あの人そんなに強かったんだ…」

「らしいですね…まあ他にもっと強い人もいるかもしれませんが、僕の聞いた情報ではそんな感じですね」

「情報って…どこから?」

「ギルドに隣接してある酒場からですよ。よく聞くと何気ない情報がたくさん入ってきたり…でも正直言って信用しすぎるには危険ですよね」

「はあえーあそこかぁ」

「まぁとりあえずはやめといたほうがいいって話です。パーティを組めば別かもしれませんが」

「じゃあ、明日に期待だね!」

「そうですね、今日は普通に夕食を食べに行きましょうか。宿屋のご飯も悪くはないですがこの世界の料理、もっと食べてみたいですし」


 この世界に来てから嬉しいこと、それはご飯が美味しいことだ。もちろん元の世界も美味しい食べ物がたくさんあったがこちらも中々だ。どういう経緯であるのか元の世界であったような牛丼、オムライス、パフェなども普通に食されている。技術や街の風景で見ると中世のような感じだが、ちょっとした電子機器や前述した食べ物などは元の世界にも似通うところが意外に多いのだ。

 そしてこの世界にしか無い食べ物が多い。非常に旨味のある肉を持ったモンスターがこのあたりにいて、他国では様々な味の実がなる植物を扱っているところもあり、まるで本物の肉のような実をつける物まであるのだとか。


「ふんふーん、おにぃって軽くなったよねぇ」

「?何がですか」

「この世界に来た時は、『ありえない、非現実的だ!僕は帰るぞ!」みたいなこと言ってた癖にすっかり慣れちゃったもんねぇ」

「そ、そこまでは言ってない気が…?いやまぁ人間慣れる生き物ですし、もう一ヶ月ですしね。まぁ帰るっていう目的は忘れていませんがこの世界にも大分馴染めたと思いますよ」

「じゃあ、もしママのところに帰れたらどうしたいの?」

「うーん…この世界で一緒に暮らすのも悪くはないと思いますよ。まあ、そもそも元の世界に戻る方法もこっちの世界に来た原因も何もわかってないんですがね…」

「いつかは叶うよ!ううん!叶えよう!」

「柊…。うん、そうですね。ゆっくりでもいいから、叶えたいですね」

「あー、本格的にお腹減ったなぁ!あそこにラーメン屋さんがあるよ!」

「え!ラ、ラーメン…。こっちにもあったんだ…よし!行きましょう!」

「おー!今日は二杯食べれるかも」

「残さない範囲でお願いしますね…」

「はいはーい、承知でござる!」

「ござるって…まぁいいや。あ、しっかり醤油と塩とかあるんだ…えーと僕は––––––」


==========


「う…うぇ。まだ少し気持ち悪い感覚が…」

「はぁ、ほんと馬鹿…柊」

「辛辣だね…!?なんか今日はいつにも増してスパイス増し増しだよね!」

「うー…四杯頼むのは流石に無いですって」

「もう昨日のことだし…お金、まだあるよ!だいじょーぶ!」

「そういう危機感のなさが本当に大切な時に命取りになるんですよ。あとお金じゃなく食べ物を残したことに私は怒ってるんです」

「う、えーと。それはその…」

「最後のいっぱいに関しては全部残しましたよね?全部の味網羅するんだとか言って後先考えずに最初のオーダで四杯注文しましたよね?あれ最後の一杯私が食べる事になったんですよ?私もう自分の頼んだ一杯だけで限界だったっていうのにさらにもう一杯ですよ?あのあと宿屋に戻るまでの間何度吐きそうになったかわかってるんですか?そのあと見事洗面所で吐––––––」

「わ!わーーー!そういうのは良くないって!本当に反省してるから!ごめん!…ね?」

「はぁ…本当に全く。当分ラーメンは食べる気が起きませんね。…明後日くらいには戻ってるんでしょうけど」

「あ、あはは…私も」


 しかしこんなぐちぐち柊に不満をぶつけた所で多分繰り返すのは今までの傾向から目に見えてるし…僕も本気で怒ってるんじゃなくて柊の将来とか色々心配で注意しているつもりなのだけれど。

 とりあえず今日の目的は…


「まあ、向こうもそろそろ着いてることだろうし。早くギルドに向かいましょう」


 僕たちのパーティメンバーの募集を見て、そして話をしたいという人たちがいるんだった…。

 うーん、一体どういう人たちなんだろう、パーティメンバーはやはり重要だ。これから活動を共にすることになるんだろうし…多分。


「どんな人達かなー?」

「行けばわかりますよ、なので急ぎましょう」

「はいはーい、わかったー」


ーーーーーーーーーー


 というわけでギルドに来たわけだが…


「あ、お待ちしておりましたー♪」

「パーティの件で…」

「はい!話は聞いてますよー…二人、見つかったそうですね。いやぁあなたがたも成長しましたね♪」

「そうー?嬉しいなー!」

「一部の冒険者の間では期待のルーキー姉妹って噂されてるんですけど、知ってましたか?」

「姉妹…!?い、いいえ。知らなかったです」

「ふふ♪冗談ですって…あ、でも噂になってるのは本当です。…焦っちゃって可愛いですよね?」


 グラニアさんは何かとおちょくってくるからあまり好きじゃないんだよなぁ…本気で嫌って訳でもないけど。初対面の時のことを思い出すとどうしても警戒してしまう。


「そ、そうですか…それで客室ってどこですっけ」

「えぇと、3番だから…上の階へ行って左奥の部屋ですね。案内…しましょうか?」

「いいえ…け、結構です。ありがとうございました」


 そうして階段を登り、廊下へと出る。両端のそれぞれ部屋が3つ、合計6つある。

 左奥の扉って言われたはず…。そのドアノブに手をかけゆっくりと開く。


「この先に…いるんだ」


 わずかな緊張と共に、僕達はその部屋へと足を踏み入れたのであった。

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