第6話 初バイト
あの後俺はグリスさんに呼び出された。
あの女の子にビンタにされたところが痛いけど。
俺は2階から1階におり、グリスさんの元に向かった。そこには、さっき俺をビンタした女の子の他に男の人が1人、女の人が2人いた。
「今日から入ってきたユウマちゃんよ。みんな仲良くしてあげてね。それじゃあティムちゃんから順番に自己紹介よろしくね♪」
グリスさんがそう言うと、ティムさんと思われる高身長でいかにもモテそうな男の人が言った。
「うぃっす。俺の名前はティム。この店でキッチンを担当している。まぁお前の先輩だな。キッチンの作業でわからない事があれば俺にどんどん聞いてくれ」
ティムさんのあとに続くように俺をビンタした女の子が言った。
「私の名はライル・シルフィーナです。またあんな事したら次は容赦しませんよ?」
何の言葉も出てこなかった俺は、心の中でただすみませんと謝るしかなかった。
「私はサキ。よろしくね〜」
ピンク色の髪の毛を靡かせたサキさんは軽い感じで挨拶を済ませた。
「私はアキ、サキお姉ちゃんの妹よ。よろしくねユウマさん」
アキさんは姉のサキさんに対してしっかりしていそうな印象だ。
「早速だけど、ユウマちゃんにはティム君と一緒にキッチンを担当してもらうわ」
「い......いきなりですか!?」
「大丈夫だ。俺が教えてやるよ。ついてきな」
そこから俺は3時間ティムさんの指導のもとキッチンの仕事を次々にこなしていった。ティムさんの教え方がとても上手いおかげで俺は少しだが、料理も覚えた。
「ところでユウマ。お前ライルに何かしたのか?」
俺は痛いところをつかれた。
「その事については口止めされているのでちょっと......」
「そっかぁ、もし言える時が来たら言ってくれよな」
「は、はい」
多分一生言えないと思うけど......
「とりあえず今日は終わりだ。また明日だなユウマ。明日は今日よりも厳しくいくぜ!!!」
俺は仕事を終えるとそのまま自分の部屋のベットに倒れ込み、そのまま目を閉じた。
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あれから2週間ーーーーーーーー
俺はキッチンの仕事と、レイン様と一緒に練習していた文字も完璧に覚えた。今では接客の人手が足りない時は俺もサキさんやアキさん、ライルさんと一緒に手伝ったりもする。
そんなある日ーーーーーーーーーー
「今日はもうあがっていいわよ」
いつもより早くグリスさんがみんなに呼びかけた。
「ユウマちゃんが入って来てもう2週間ね。それじゃあこれを渡さなくちゃね」
そう言ってグリスさんはとある袋を俺に渡してきた。
「一体これはなんですか?」
「それはユウマちゃんの今月の給料よ」
「ま.....まじっすか........」
俺はそのお金を見ておもわず泣きそうになってしまった。
「ユウマちゃん!?どうしたの?」
このお金はグリスさん達にとっては何気ないお金かもしれないけど、今までバイトなんてしたこともなかった俺にとっては始めてもらった給料だったので、とても嬉しかった。
「ちょっと嬉しくて」
「おっ!?ユウマ給料入ったのか。ということは俺たちももらえますか?」
「えぇ、みんなの分の給料もあるわよ」俺に続いてティムさんたちもグリスさんから給料をもらった。
「よし、今日は朝まで飲もうぜユウマ!!!」
「はい!!!」
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俺はあれから、ラヴスウィーツのみんなと街の中心にあるギルドの飲み屋に向かった。
フォルトゥーナではお酒やたばこは16歳からOKらしい。そこで俺は、ティムさん達と一緒にお酒を注文した。
「お待たせしました!!!」
ギルドのお姉さんがビールが入ったジョッキを4つとジュースを1つテーブルに置いた。アキさんはまだお酒が飲めない歳らしい。
「それじゃあ、ユウマの初給料祝いってことで乾杯!!!」
「「「「乾杯!!!!!」」」」
俺はおそるおそるビールを飲んだ。
「あ、甘い!?」
「そんなに驚くことか?苦い酒もあるが、基本ビールが甘いのは普通だろ?」
「俺の生まれた国ではそこまでお酒は甘くないと思いますよ。まぁ俺はビールを飲んだのが今回が生まれて初めてだったのでよくわからないですけどね」
「マジか!?じゃあ今日はユウマの初ビール記念でもあるな!!」
「ま、まぁ確かにそうですね」
「さあ、じゃんじゃん飲むわよ〜!!!店員さんビールもう1本!!!」
サキさんは大声で店員さんを呼んだ。
「サキさん凄い変わりようですね......」
「あぁ、あいつは酒に弱いくせに、酒癖が悪いんだよなぁ.....」
普段のサキさんからは考えられなかった。
それから1時間後ーーーーーー
みんなあれからテンションが上がりまくり、ティムさんはギルドのお姉さんをナンパしてるし、サキさんは完全に泥酔してるし、アキさんはグリスさんの愚痴を聞かされているのだ。
「みんな大変だな.....」
俺はあることに気がついた。ライルさんがいないのだ。ギルド内を探すとライルさんはベランダに1人でいた。
「ライルさん、1人でどうしたんですか?」
「ちょっと風に当たりたくてね。けど、私はもう帰ります」
「えっ!?なんでですか?」
「今日はもう疲れたので...1つだけ忠告してますね。あまりお金は使い過ぎないように」
ライルさんはそう言ってギルドを後にした。
そこから俺はライルさんの忠告通り、お金をあまり使わないように節約しながらティムさん達と朝まで飲んだ。